コリンエステラーゼ(ChE)血液検査の正常値
生化学血液検査項目 | 基準値(参考値) | |||
生化学血液検査名称 | 略称 | 数値 | 単位 | |
コリンエステラーゼ | ChE | 男 242~495 女 200~459 |
U/L |
コリンエステラーゼ検査の目的
コリンエステラーゼ(ChE)は、脂肪肝をはじめとした肝疾患において他の検査に比べいち早く異常値を示します。また、ネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病、原発性肝がん等の場合においても異常値を示すためこれらの疾患においても有用です。コリンエステラーゼ(ChE)は、アルブミン同様、肝臓だけで産生されるため、両者の検査値はほぼ平行に変動します。また、他の検査値に比べ、いち早く異常値を示すため、肝臓の障害の度合い、慢性肝炎や肝硬変などの慢性の肝疾患における経過を見ていくうえでとても重要な検査の一つです。
コリンエステラーゼ検査結果からわかる病気
コリンエステラーゼ | 考えられる原因と疾患の名称 |
基準値より高値 | 甲状腺機能亢進症、ネフローゼ症候群、肥満、糖尿病、高血圧、気管支喘息、肝細胞がん、本態性家族性高ChE血症、脂肪肝 |
基準値より低値 | 慢性肝炎、重症消耗性疾患(悪性腫瘍、貧血、結核、白血病、粘液水腫)、遺伝性異型ChE血症、抗ChE剤投与、劇症肝炎、肝硬変、肝癌、有機リン中毒 |
【備考】 睡眠薬、抗血栓薬、緑内障治療薬等の薬を使用している場合は、通常より低値を示す傾向があるため、検査を受ける際にはあらかじめ医師に伝える事が必要です。 【関連項目】 総ビリルビン、直接型ビリルビン、総たんぱく、アルブミン、コリンエステラーゼ、チモール混濁試験、硫酸亜鉛混濁試験、AST(GOT) ALT(GPT)、γ-GTP、アルカリフォスファターゼ、ロイシンアミノペプチターゼ、乳酸脱水素酵素、インドシアニン・グリーン、アンモニア、総コレステロール、B型肝炎ウイルス表面蛋白抗原、C型肝炎ウイルス核酸定性、C型肝炎ウイルス核酸定量 |
肝硬変
コリンエステラーゼ(ChE)は、肝細胞で合成されて血液中に分泌される酵素で、肝硬変を調べる検査のひとつです。 肝硬変は、肝臓全体の変化の終末期で、肝細胞が破壊されつくして肝臓が硬くなり(線維化)、肝細胞が働かなくなってコリンエステラーゼ(ChE)がつくられなくなり、血液中の値は低くなってしまいます。 コリンエステラーゼ(ChE)およびアルブミン、コレステロール、血液凝固因子など、肝細胞でつくられている物質を調べて、これらが低値になっていれば肝臓の障害が疑われます。その際には、肝硬変に関する種々の血液検査や腹部超音波、腹部CTなどの精密検査が必要です。肝硬変では、コリンエステラーゼ(ChE)が正常に回復する望みはありません。
コリンエステラーゼ症候群
コリンエステラーゼは脂質代謝と関連しているため、栄養のとり過ぎや肥満で高値になります。 ネフローゼ症候群では、血液中のアルブミンが低下し、尿蛋白が陽性になり、脂質代謝の異常のためにコリンエステラーゼ(ChE)は上昇します。 また、甲状腺ホルモンは、コリンエステラーゼ(ChE)の合成を亢進させる働きがあるため、血液中のこのホルモンが高値になる甲状腺機能亢進症ではコリンエステラーゼ(ChE)も上昇します。
有機リン剤中毒
コリンエステラーゼ(ChE)は有機リン剤中毒では異常に低下します。サリンは、コリンエステラーゼ(ChE)に作用して活性を阻害します。 また、先天的にコリンエステラーゼ(ChE)活性が低値、あるいは欠損している人がいます。このような人は、手術時に使用する筋弛緩薬であるサクシニルコリンが分解されず、無呼吸状態が持続しますので注意が必要です。
コリンエステラーゼ検査の臨床的意義
ヒト体内には、複数種のコリンエステラーゼ(ChE)が存在します。簡易的に分別すると、アセチルコリンを特異的に分解する特異的AChEおよび非特異的コリンエステラーゼ(ChE)があります。AChEは神経刺激伝達に関与すると考えられ、髄液中に多いのが特徴です。,非特異的コリンエステラーゼ(ChE)は血清、肝、膵などに含まれ、コリンエステルのほか種々のエステルを加水分解します。しかし、その生理的意義は今だ分かっていません。臨床検査における、血清ChEは非特異的コリンエステラーゼ(ChE)のことを差します。血清中のコリンエステラーゼ(ChE)は大部分が肝細胞で合成され、血中に放出させるため肝実質細胞の機能と平行するため、主に肝機能の検査として用いられます。
異常がないのにコリンエステラーゼ(ChE)が非常に低い人がいます。これはコリンエステラーゼ(ChE)の遺伝子の一部が変異して活性のほとんどないコリンエステラーゼ(ChE)が作られているためです。この人たちは普段の生活には何ら支障はありませんが、歯科で抜歯のときなどに使用する麻酔剤を分解できず呼吸困難になる場合もあり、このことを本人が知っていることが大切です。また、遺伝的にコリンエステラーゼ活性の高い人もいます。一部の麻酔が効きにくいことなどありますが日常生活を送る上では問題ありません。