CEA(癌胎児性抗原)は、主に腺癌に対する指標となり、大腸癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌などに用いられる。

CEA(癌胎児性抗原)|腫瘍マーカー(がん血液検査)

癌胎児性抗原(Carcinoembryonic antigen, CEA)は、腫瘍マーカーの一つで、CEA(癌胎児性抗原)はヒトの大腸癌から取り出された蛋白で、その免疫学的な性質が胎児の組織と共通性を示すことから癌胎児抗原あるいは癌胎児蛋白と呼ばれています。1965年にカナダのフィル・ゴールドとサミュエル・オーキン・フリードマン によって大腸癌の組織から抽出された。CEA(癌胎児性抗原)は、主に腺癌に対する指標となり、大腸癌、胃癌、肺癌、卵巣癌、子宮癌などに用いられる。ただし、喫煙によりCEA(癌胎児性抗原)の数値の上昇が見られる。癌胎児性抗原に関係した細胞接着因子を構成するヒトの遺伝子はCEACAM1, CEACAM3, CEACAM4, CEACAM5, CEACAM6, CEACAM7, CEACAM8, CEACAM16, CEACAM18, CEACAM19, CEACAM20, CEACAM21等がある。

CEA(癌胎児性抗原)は癌の臨床において最も有用な腫瘍マーカーであると言われています。その理由として、

  1. CEA(癌胎児性抗原)は、多くの悪性疾患で出現する幅広い性質を持った腫瘍マーカーである。
  2. CEA(癌胎児性抗原)は、悪性腫瘍の早期発見に役立つまでにはなっていないが、悪性か、良性かの判断には役立つ情報である。
  3. CEA(癌胎児性抗原)は癌の手術後の経過観察や、特に再発の早期発見に有効である。
  4. CEA(癌胎児性抗原)は化学療法や放射線療法の効果の判定に有用である。
  5. CEA(癌胎児性抗原)の抗体を用いて癌の存在する部位を探すことや、治療法の開発なども行われている。などがあげられます。

CEA(癌胎児性抗原)は種々の悪性腫瘍で血中に増加してきますが、陽性率の高いものをあげると、大腸癌で50~70%、膵、胆道、肺癌で40~60%、胃癌で30~40%の順になります。

CEA(癌胎児性抗原)の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
癌胎児性抗原 CEA 5以下 ng/mL

CEA(癌胎児性抗原)検査の目的

CEA(癌胎児性抗原)は、消化管の悪性腫瘍を中心に、もっとも汎用的に用いられる血中腫瘍マーカー。また慢性肝炎や糖尿病など良性疾患でも陽性を示すことがありますが、この場合のCEA(癌胎児性抗原)値はあまり高くはなりません。健常者では長期喫煙者の陽性率が高く、CEA(癌胎児性抗原)値は喫煙量に比例し、正常値上限の2倍位まで上がります。

CEA(癌胎児性抗原)で何を調べている

CEA(癌胎児性抗原)は、腸癌をはじめとする消化器癌、膵癌、肺癌などのさまざまな臓器由来の癌に幅広く用いられている。また、CEA(癌胎児性抗原)が出現するためにその診断補助および術後・治療後の経過観察の指標として有用性が認められている。CEA(癌胎児性抗原)の測定の有用性としては、①.他の検査法と組み合わすことにより,癌疾患のスクリーニングの補助的診断 ②.癌疾患の経過観察ならびに治療効果の判定. ③根治手術が行われた場合には,術後CEA値は明確に低下する. ④.臨床所見によって発見できる1~2ヶ月前にCEA値の上昇を見て再発を予測出来た例もある.
またCEA(癌胎児性抗原)とAFPを組み合わせることにより,AFPが高値の場合原発性肝癌、CEA(癌胎児性抗原)が高値の場合,転移性肝癌が推測される。また、大腸癌や胃癌における術前CEA(癌胎児性抗原)高値例では有意に再発率が高いとされ、予後の予測にも有用とされる。 なお、CEA(癌胎児性抗原)については、近年遺伝子クローニングの成功によってその一次構造が解明され、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属することが明らかになった。さらに、CEA(癌胎児性抗原)が細胞接着分子としての機能を有することや癌細胞の転移に促進的に働くことが報告されている。CEA(癌胎児性抗原)を胎児性蛋白の範疇に留めることは困難になっており、その癌特異性の由来について新たな観点が求められつつある。

CEA(癌胎児性抗原)でわかる病気

CEA(癌胎児性抗原)検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 大腸癌、胃癌、肺癌、転移性肝癌、胆道癌、食道癌、乳癌、子宮癌、慢性肝炎、肝硬変、閉塞性黄疸、胆石症、消化管潰瘍
基準値より低値
【備考】

CEA(癌胎児性抗原)は、主に消化器系の癌でひろく陽性反応を示す有用な腫瘍マーカーですが、このCEA(癌胎児性抗原)検査だけで正確な部位を特定することはできません。CEA(癌胎児性抗原)が異常値である場合には身体のどこかに癌がある可能性が高いため、血液検査以外にもCTなどの検査を実施します。CEAによる異常値反応は進行性のがんでは時間がたつほど異常値が大きくなるため、再検査を実施して数値がどう変動しているのかもチェックされます。また、抗がん剤や癌の切除手術などによって癌が小さくなった場合にはCEA(癌胎児性抗原)の値も小さくなるので、治療の経過観察としても活用されます。逆に、再上昇するような場合には、再検査を行う必要があります。

CEA(癌胎児性抗原)は、体調に変化がなくても、30%程度増減します。これは、血液中の物質には一定の濃度範囲にないと体に不都合が生じるためその量が積極的に調節されている成分(血糖やナトリウム,カリウム,カルシウムなど)と血液中に一過性に存在するいわば老廃物のような物質で,血液中の量が積極的に調節されていない成分とがあります。CEA(癌胎児性抗原)は後者であり,体調に変化がなくても比較的増減幅の大きな物質です。CEA(癌胎児性抗原)の場合は健康な人での変動範囲は±25%程度で,微量のためさらに多少の測定誤差が加わります。 このように癌細胞だけでなく、正常細胞でもつくられますので、健常な人の体内にもわずかに存在します。また、悪性腫瘍だけでなく、良性の疾患でも上昇することがあります。このように、癌以外の原因で腫瘍マーカーが陽性になることを「偽陽性」といいます。

【関連項目】 
TPA(組織ポリペプチド抗原)AFP(α-フェトプロテイン)CA 125BFP(塩基性フェトプロテイン))、CA 19-9