αフェトプロテイン(AFP)は、肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われます。

αフェトプロテイン(AFP)|腫瘍マーカー(がん血液検査)

αフェトプロテイン(AFP)は、胎児期に多い蛋白です。出生時のαフェトプロテイン(AFP)の血中濃度は10,000~100,000 ng/ml (1ngは1gの10億分の1)と最高であり、その後、しだいにαフェトプロテイン(AFP)値は減少して、生後一年で成人と同じ濃度 (10 ng/ml以下)となります。αフェトプロテイン(AFP)は胎児期には肝臓で作られ、種々の物質を結合して母体と胎児間の物質の移送に関係していると考えられていますが、αフェトプロテイン(AFP)の詳しいことはわかっていません。

αフェトプロテイン(AFP)の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
αフェトプロテイン AFP 10.0以下 ng/ml

αフェトプロテイン(AFP)検査の目的

αフェトプロテイン(AFP)は、肝細胞癌で上昇する、タンパク質で、肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われます。一般的に生化学検査であるAST(GOT)やALT(GPT)とともにαフェトプロテイン(AFP)の検査が行われて、肝臓がんのスクリーニングに役立ちます。また、αフェトプロテイン(AFP)は、肝臓がんの経過観察や治療効果の判定および予後判定に有用とされています。転移性の肝癌がんでもαフェトプロテイン(AFP)値は高値を示すことがありますが、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの良性肝疾患でも高くなることが知られています。その他、乳児性の肝炎、肝芽腫ではかなりの確率で陽性となることがあります。

αフェトプロテイン(AFP)で何を調べている

αフェトプロテイン(AFP)は、胎児肝およびヨークサック(卵黄嚢)で産生される胎生期特有の血清蛋白である。出生直後には血中で10,000ng/mL前後の高値を示すが、その後速やかに減少して健常小児・成人には10ng/mL以下の極めて低濃度にしか存在しない。αフェトプロテイン(AFP)は一次構造においてアルブミンとの間に39%の相同性を有し、種々の物質の生体内輸送や脂肪酸代謝への関与が推定されています。 AbelevおよびTatarinovが肝細胞癌において血中αフェトプロテイン(AFP)が増量することを見出して以来、その腫瘍マーカーとしての有用性は高く評価されています。血中αフェトプロテイン(AFP)濃度400ng/mLを超える例では肝細胞癌の可能性がきわめて高い。ちなみにαフェトプロテイン(AFP)値の上昇する良性疾患もその多くは肝疾患である。慢性肝炎で軽度 (~100ng/mL)、肝硬変で中等度(~400ng/mL)の上昇を呈するが、これらは肝細胞壊死後の肝再生によるものと推定されている。また妊娠後期には、胎児が産生したαフェトプロテイン(AFP)が母体中にも検出される。さらに、原発性肝細胞癌由来αフェトプロテイン(AFP)と、肝硬変やヨークサック腫瘍由来αフェトプロテイン(AFP)の各糖鎖構造の相違を、レクチン親和性の差から鑑別することが可能となっている(「AFPレクチン分画」の項を参照

αフェトプロテイン(AFP)でわかる病気

αフェトプロテイン(AFP)検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、αフェトプロテイン(AFP)値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 胃漬瘍、卵黄のう腫瘍、非転移性悪性腫瘍、妊娠、胆管・胃・肺・食道癌、転移性肝癌、睾丸・卵巣腫瘍、先天性胆道閉塞症、肝硬変、原発性肝癌、胎児性癌
基準値より低値 体内死亡胎児を有する妊婦、正常妊娠32週以後の妊婦、肝炎・肝硬変の肝障害回復期
【備考】

αフェトプロテイン(AFP)の健康診断結果では肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆道癌、大腸癌、ヨークサック腫瘍、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などを疑うことができます。癌以外でも慢性肝炎でαフェトプロテイン(AFP)値は100ng/mL、肝硬変で中度でもαフェトプロテイン(AFP)値は400ng/mLの上昇します。

【関連項目】 
CA 19-9AST(GOT)ALT(GPT)PIVKA-ⅡCEA(がん胎児性抗原)HBs抗原AFPレクチン分画

αフェトプロテイン(AFP)の注意事項

αフェトプロテインは出生時に高くなり、生後8~10ヶ月で成人値と同様にほとんど消失します。妊娠後期でもαフェトプロテイン(AFP)値が高値になる傾向があり、健康診断では基準値外になることが多いです。肝臓癌で上昇するαフェトプロテインですが、肝炎や肝硬変でも上昇する傾向があります。