なぜ薬物血中濃度に個人差が生じるのか
服薬した薬物は、「吸収」→「分布」→「代謝」→「排泄」の経路を摂ります。個人差が生じる理由はこの間の各項目において生じます。
- 吸収
- その薬物が経口投与のケースでは、薬は第一段階として胃腸から吸収され血中に運ばれますが、その過程での吸収率に個人差が生じます。
- 分布
- 血液中に運ばれた薬物は、全身に分布(薬物を利かせる対象臓器に薬を到達させる)されますが、体格やその薬物の蛋白との結合性の違い、その他、他剤との相互作用も血中濃度に影響を与えます。
- 代謝
- 血中に入った薬物の多くは肝臓で代謝されます。しかし、肝臓の機能が何らかの影響により低下しているケースでは薬物が代謝されにくくなるため、薬物血中濃度は高めとなります。
- 排泄
- 薬物は最終的に、主に腎臓から排泄されますが、腎機能が何らかの影響により低下しているケースでは、薬物を排泄する機能が低下しているため、薬物が体内に蓄積し薬物血中濃度は高くなります。
薬物血中濃度測定の有用性
薬物血中濃度により、治療効果と副作用が密接に関連する際、投与の指標となります。また、以下の状況下においてTDM(治療薬物モニタリング)が有用です。
- 有効血中濃度域が狭く、中毒等の副作用のリスクを伴う薬剤を使用する。
- 肝機能、腎機能が低下し、投与設定において難しい判断を求められる時。
- 副作用が出現した時。
- 患者の服用状況が疑わしいとき。
- 患者の様態が急変した時。
- 投与方法を変更した時。
- 他剤との併用が始まった、或いは併用薬の変更により薬物血中濃度の変動が予想される時
- 投与量が十分であるにも関わらず効果が認められないとき。
- 長期服用しているときの定期検査として
血中薬物検査項目一覧
薬物検査項目 | 有効血中濃度域 | |||
薬物検査名称 | 投与目的 | 数値 | 単位 | |
メトトレキサート | 24時間後 10以下 48時間後 1.0以下 72時間後 0.1以下 |
μmol/l μmol/l μmol/l |
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ジゴキシン | 0.8-2.0 | ng/ml | ||
シクロスポリン | 初期濃度 150-250 維持療法 80-120 |
ng/ml ng/ml |
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タクロリムス | GVHD好発時期 10-20 | ng/ml | ||
バンコマイシン | 25-40 | μg/ml | ||
アミカシン | 20-25 | μg/ml | ||
トブラマイシン | 5-10 | μg/ml | ||
アルベカシン | ピーク 21以下 トラフ 12以下 |
μg/ml μg/ml |
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テオフィリン | 10.0~20.0 | μg/ml | ||
バルプロ酸 | 抗てんかん剤 | 50.0~100.0 | μg/ml | |
フェニトイン | 抗てんかん剤 | 10.0~20.0 | μg/ml | |
炭酸リチウム | 精神神経系用剤 | 0.60~1.20 | mEq/l |