患者の薬物血中濃度を測定し、薬効、副作用を詳細に把握し治療に役立てられます。

血中薬物検査の種類

薬物投与後の薬効は個人差があり、同量を投与し服用しても血中濃度は人によって大きく異なります。そのため、TDM(治療薬物モニタリング)が行われます。TDM(治療薬物モニタリング)とは、患者の薬物血中濃度を測定し、薬効、副作用を詳細に把握し有効血中濃度を維持することができるよう用法や用量を個別に調整する技術をいいます。

なぜ薬物血中濃度に個人差が生じるのか

服薬した薬物は、「吸収」→「分布」→「代謝」→「排泄」の経路を摂ります。個人差が生じる理由はこの間の各項目において生じます。

  1. 吸収
    その薬物が経口投与のケースでは、薬は第一段階として胃腸から吸収され血中に運ばれますが、その過程での吸収率に個人差が生じます。
  2. 分布
    血液中に運ばれた薬物は、全身に分布(薬物を利かせる対象臓器に薬を到達させる)されますが、体格やその薬物の蛋白との結合性の違い、その他、他剤との相互作用も血中濃度に影響を与えます。
  3. 代謝
    血中に入った薬物の多くは肝臓で代謝されます。しかし、肝臓の機能が何らかの影響により低下しているケースでは薬物が代謝されにくくなるため、薬物血中濃度は高めとなります。
  4. 排泄
    薬物は最終的に、主に腎臓から排泄されますが、腎機能が何らかの影響により低下しているケースでは、薬物を排泄する機能が低下しているため、薬物が体内に蓄積し薬物血中濃度は高くなります。

薬物血中濃度測定の有用性

薬物血中濃度により、治療効果と副作用が密接に関連する際、投与の指標となります。また、以下の状況下においてTDM(治療薬物モニタリング)が有用です。

  1. 有効血中濃度域が狭く、中毒等の副作用のリスクを伴う薬剤を使用する。
  2. 肝機能、腎機能が低下し、投与設定において難しい判断を求められる時。
  3. 副作用が出現した時。
  4. 患者の服用状況が疑わしいとき。
  5. 患者の様態が急変した時。
  6. 投与方法を変更した時。
  7. 他剤との併用が始まった、或いは併用薬の変更により薬物血中濃度の変動が予想される時
  8. 投与量が十分であるにも関わらず効果が認められないとき。
  9. 長期服用しているときの定期検査として

血中薬物検査項目一覧

薬物検査項目 有効血中濃度域
薬物検査名称 投与目的 数値 単位
メトトレキサート 24時間後 10以下
48時間後 1.0以下
72時間後 0.1以下
μmol/l
μmol/l
μmol/l
ジゴキシン   0.8-2.0 ng/ml
シクロスポリン   初期濃度 150-250
維持療法 80-120
ng/ml
ng/ml
タクロリムス   GVHD好発時期 10-20 ng/ml
バンコマイシン   25-40 μg/ml
アミカシン   20-25 μg/ml
トブラマイシン   5-10 μg/ml
アルベカシン   ピーク 21以下
トラフ 12以下
μg/ml
μg/ml
テオフィリン 10.0~20.0 μg/ml
バルプロ酸 抗てんかん剤 50.0~100.0 μg/ml
フェニトイン 抗てんかん剤 10.0~20.0 μg/ml
炭酸リチウム 精神神経系用剤 0.60~1.20 mEq/l