αフェトプロテイン(AFP)は、肝臓がんの腫瘍マーカーとして使われます。

AFPレクチン分画|腫瘍マーカー(がん血液検査)

α-フェトプロテインAFP)は癌胎児性蛋白の代表的な腫瘍マーカーで、主に胎児の肝細胞と成人の肝細胞癌によってつくられます。肝細胞癌の早期診断のスクリーニングとして用いられ、肝細胞癌の経過観察や治療効果の判定および予後判定に有用です。AFPは1分子あたり1個の糖鎖を有していますが、癌化に伴う糖鎖の変化をレクチン(LCA)との結合性を利用して検出するのがAFP-L3分画比(AFP-L3%)検査です。AFPはLCA非結合性分画(L1)、弱結合性分画(L2)および結合性分画(L3)の3つに分かれ、慢性肝炎や肝硬変では主にL1、肝細胞癌ではL3が増加します。総AFPに対するAFP-L3の割合を示したものがAFP-L3%で、AFPの生物学的悪性度を示します。一度、肝細胞癌と診断されて何らかの治療を行った際、AFP-L3%が陰性化しない場合には腫瘍の残存している可能性が極めて高く、陰性化しても再び陽性化する場合は再発の危険性が高くなります。また、肝細胞癌でAFP-L3%が陽性の場合、予後不良といわれています。AFPは慢性肝炎や肝硬変などの良性疾患でも上昇することから、AFPのみでは良性肝疾患と肝細胞癌の鑑別は困難なことが多く、AFPの経時的変化で上昇を確認するか、AFP-L3%を相補的に測定する必要があります。ただし、AFP-L3%はAFPに比べて肝細胞癌に特異的ですが、絶対的なものではなく、劇症肝炎や肝硬変の再燃、重症化によっても上昇するため、留意しなければなりません。ところで、肝細胞癌以外では胃癌の特殊な組織型でAFP産生胃癌があり、肝転移が高率に認められ、L3が高値となります(従来法のレクチン親和電気泳動法ではL1とL3の間にL2として検出されます)。また、妊娠の場合、胎児由来のAFPのために妊娠8ヵ月をピークに高値となりますが、大部分がL1に含まれます。原発性肝細胞癌の腫瘍マーカーにはAFP、PIVKA-IIおよびAFP-L3%があります。早期癌の場合、それぞれの陽性率は22%、34%、17%と感度が低いため、少なくとも2種類以上の腫瘍マーカー測定と定期的な超音波検査が推奨されています。

AFPレクチン分画の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
AFPレクチン分画 AFP-L3 分画 10.0以下

AFPレクチン分画検査の目的

AFPレクチン分画検査は、肝細胞癌由来AFPを分別測定することで、肝細胞癌と肝硬変等とを鑑別する検査。肝細胞癌の早期診断と予後管理に有用。α-フェトプロテイン(AFP)は、レンズマメ・レクチン(LCA)との親和性によりLCA非結合性分画(L1)、弱結合性分画(L2)および強結合性分画(L3)の3分画に分かれます。慢性肝炎や肝硬変では主としてL1分画が、肝細胞癌ではL3分画が増加します。AFPレクチン分画比(L3%)は、この性質を利用して、肝細胞癌を特異的に検出する検査法です。

AFPレクチン分画で何を調べている

 α-フェトプロテイン(AFP)は肝細胞癌の優れたマーカーとして広く用いられているが、慢性肝炎や肝硬変のような非肝癌患者でもその血中濃度が上昇するため、軽度~中等度高値(~400ng/mL)症例では一般に鑑別困難とされている。そこで、AFP分子上の糖鎖の癌性変化をレクチンとの親和性を利用して検出し、肝細胞癌由来AFPを分別測定する手法が開発された。 AFPは分子量約7万の糖蛋白で、1分子当たり1個のアスパラギン結合型糖鎖を有する。レンズマメレクチン(Lens culinaris agglutinin; LCA)を用いた親和電気泳動において分離されるバンドを陽極側よりL1(LCA非結合性)、L2(LCA弱結合性)およびL3(LCA結合性)分画とするとき、非肝癌患者AFPの大部分がL1分画に出現するのに対して、肝細胞癌患者ではL3分画の占める比率が増加する。こうしたLCA親和性の相違は糖鎖根部に結合するフコースの有無に関係していると考えられており、肝細胞癌の際はフコース結合型AFPが増加するという。AFP-L3分画比率の測定は肝細胞癌と肝良性疾患との鑑別診断、肝細胞癌の早期診断、および治療後の予後管理に有用である。

AFPレクチン分画でわかる病気

AFPレクチン分画検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、αフェトプロテイン(AFP)値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 ヨークサック腫瘍、肝細胞癌、卵黄嚢種(乳幼児)
基準値より低値 体内死亡胎児を有する妊婦、正常妊娠32週以後の妊婦、肝炎・肝硬変の肝障害回復期
【備考】

αフェトプロテイン(AFP)の健康診断結果では肝臓癌、胃癌、膵臓癌、胆道癌、大腸癌、ヨークサック腫瘍、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などを疑うことができます。癌以外でも慢性肝炎でαフェトプロテイン(AFP)値は100ng/mL、肝硬変で中度でもαフェトプロテイン(AFP)値は400ng/mLの上昇します。

【関連項目】 
CA 19-9AST(GOT)ALT(GPT)PIVKA-ⅡCEA(がん胎児性抗原)HBs抗原AFP(α-フェトプロテイン)