脂質異常症は、高脂血症と呼ばれていた疾患で、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態をいいます。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症は、以前は、高脂血症と呼ばれていた疾患で、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態を指すものです。脂質異常症(高脂血症)には、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種類があり、低HDLコレステロール血症のように、コレステロール値低値による脂質異常があるため、2007年7月に以前使われていた「高脂血症」から「脂質異常症」へ改名されました。また、脂質異常症(高脂血症)は、WHOの基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めてます。
 
■脂質異常症(高脂血症)は、年齢と共にコレステロールなどが上昇する傾向があり、中年から高齢者の多くの方が脂質異常症(高脂血症)を指摘されています。実は、管理人もコレステロールが高めと脂質異常症(高脂血症)の予備軍と診断されております。
 
■脂質異常症(高脂血症)の原因は、遺伝等による家族性などもありますが、多くは食生活などのライフスタイルにあります。近年、食生活が欧米化し、摂取する食品も元来の日本食である野菜や魚介類を中心とした食生活から肉や油脂類を多く含まれる食生活に移ってきました。この事が食生活における脂質異常症(高脂血症)の一番の原因だと言われております。

脂質異常症(高脂血症)を改善する為にも私たちの食生活を見直しましょう。


  1. 脂質異常症(高脂血症)とは何か…脂質異常症は、血液中に脂質成分が過多或いは、バランスが崩れた状態です。

  2. 脂質異常症(高脂血症)になりやすい人…一部の患者さんを除き、原因は生活習慣に隠れています。

  3. 脂質異常症(高脂血症)にはどのようなリスクがあるのか…虚血性心疾患、脳梗塞といった虚血性疾患が引き起こされます。

  4. 脂質異常症(高脂血症)の血液検査と診断基準…脂質異常症の診断は、主に脂質代謝検査によって行われます。

  5. 脂質異常症(高脂血症)を生活習慣で改善…脂質異常症は、生活習慣の見直しで改善することができます。

  6. 脂質異常症(高脂血症)を治療するには…病院で行われる、治療を中心に説明しております。

  7. 脂質異常症関連リンク情報…脂質異常症(高脂血症)に関するサイトをリンク形式で紹介しています。

脂質異常症(高脂血症)とは何か

血液の中には、コレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質成分が流れています。コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料に、中性脂肪は、エネルギーの貯蔵庫などとなり、身体機能を保持するために大切な働きをもっています。
 脂質は、肝臓で作られたり、食事から摂りこまれ、血液中の脂質成分の量は保たれ調整されています。脂質異常症(高脂血症)は、このような調整機能が低下したり、食事からの摂取量が多量になっている(摂りすぎている)状態、或いは、HDLコレステロール(善玉コレステロール)については低下している状態が継続する疾患です。

脂質異常症(高脂血症)は放置しておくと、血管の動脈硬化を徐々に進行させていきます。この段階では
身体の症状は全くありません。しかし、最終的には虚血性疾患である、心筋梗塞、脳梗塞等の深刻な疾患を引き起こす要因となります。

尚、「脂質異常症」は、以前「高脂血症」と言われていましたが、脂質の一つであるHDLコレステロールについては高値であることが望ましく、逆に低値であると低HDLコレステロール血症と診断されます。そのため、2007年から、「高脂血症」から「脂質異常症」へ名称が変更されました。


脂質異常症(高脂血症)の症状

脂質異常症(高脂血症)の初期は、症状はありません!出てからでは遅いのです。

 初期には、まず症状はなくこの時期に判明する場合は血液検査によるものです。家族性高コレステロール血症ではアキレス腱肥厚、腱黄色腫(手の甲、肘、膝の腱にできる硬い盛り上がりです)、眼瞼黄色腫(まぶたにできる黄色い斑点状の盛り上がり)、角膜輪(かくまくりん)(黒目の周囲にできる白い輪)がみられることがあります。
 とくにアキレス腱肥厚は最も多くみられる症状で、アキレス腱の厚みが1cm以上あり、且つ血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症の可能性があります。家族性III型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫や手掌線状黄色腫(手筋が黄色く盛り上がる)を発症します。

脂質異常症(高脂血症)の種類

脂質異常症は、根本要因によって「家族性高脂血症」と「二次性(続発性)高脂血症」、「生活習慣に起因する脂質異常症」の3つに分類されます。また、診断により、異常値を示す脂質の種類によって「高コレステロール血症」「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」にも分類されます。

1、根本要因による分類

①家族性脂質異常症

遺伝によって発症する脂質異常症で、遺伝子が同定されているもの、されていないものがあります。原発性高脂血症のひとつである「家族性高コレステロール血症」は、遺伝が強く関係しており、生活習慣とは関係なく発症し、治療は困難です。

Ⅰ型家族性脂質異常症

末梢組織が、血液中を循環するリポタンパク質から脂肪酸を受け取る際に使われるリポタンパク質リパーゼ等の機能不全により、血液中の脂肪が末梢に行き渡らず、血液中に増えるために引き起こされます。

Ⅱ型家族性脂質異常症

LDLコレステロールを受容するLDL受容体が欠損或いは障害を受けることにより、LDLコレステロールが血中に増加します。

Ⅲ型家族性脂質異常症

キロミクロンレムナントや中間比重リポタンパク (IDL) の血中からのクリアランスが低下してこれらが蓄積するために発症します。特徴的な症状には手掌線条黄色腫があります。


②二次性(続発性)脂質異常症

他の病気や薬が原因となって引き起こされる脂質異常症です。原因となっている疾患の治療や、治療薬の変更や中止をすることで改善することができます。原因疾患として、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、神経性食思不振症、閉経後や妊娠中も血清脂質が上昇します。原因となる薬には、ステロイドホルモン剤や利尿薬、避妊薬などがあります。


③生活習慣に起因する脂質異常症

生活習慣の中でも、いちばん重要な要素が「食生活」です。脂っこいものや甘いものを多くとると、血液の中のコレステロールや中性脂肪が増加してしまいます。また、食生活の他に、運動不足、喫煙、飲酒、ストレス、などの要素があります。


2、診断基準による分類

脂質異常症(高脂血症)には、異常値を示す脂質の種類によって「高コレステロール血症」「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」にも分けられますが、一人の患者さんが複数のタイプをあわせ持っていることもあります。

①高コレステロール血症

 脂質異常症(高脂血症)の1つでもある高コレステロール血症は、血液中の総コレステロール値が高い(220mg/dL以上)状態の事をいいます。食習慣などのライフスタイルが原因により多くの方が罹っているといわれています。1997年の国民栄養調査では、日本人の男27%、女33%が高コレステロール血症であると言われています。
 最近ではLDLコレステロールの方が明らかに心血管リスクとの相関度が高いのため、この値の重要度は低くなっています。現在では、アメリカ、日本のガイドラインは、いずれも総コレステロール値に注目していません。コレステロール血症に関する詳しい情報は、「コレステロール」をクリックして参照してください。

②高LDLコレステロール血症

 脂質異常症(高脂血症)の中で LDLコレステロール の値が高いものを高LDLコレステロール血症といいます。高LDLコレステロール血症は、低比重リポ蛋白(LDL)が血液中に多く存在する(140mg/dL以上)状態をいいます。このLDLコレステロールが高いことが、虚血性疾患のリスクを非常に高めると言われています。
 世界最新のガイドラインである米国ATP-IIIによれば、コレステロールの検査値の中では、唯一心血管疾患の絶対的リスクファクターであると提言しています。血液検査結果を見る際に非常に注意しなければいけない項目だといえるでしょう。
LDLコレステロールについての詳しい情報は、「LDLコレステロール」をクリックして確認ください。

③低HDLコレステロール血症

 脂質異常症(高脂血症)の中で HDLコレステロール が低いものを低HDLコレステロール血症といいます。低HDLコレステロール血症は、血液中に含まれる脂質成分でもある高比重リポ蛋白(HDL)が少ない(40mg/dL未満)状態をいいます。低HDLコレステロール血症では、特に女性が心血管疾患のリスクが高く注意する必要がある血液検査項目です。1997年の国民栄養調査では、日本人の男16%、女5%が該当しており、このHDLコレステロールが少いことで疾患のリスク高まる事から「高脂血症」から「脂質異常症」へ改名される主な理由となりました。
HDLコレステロールについての詳しい情報は、「HDLコレステロール」をクリックして確認ください。

④高トリグリセリド血症 (高TG血症)

 脂質異常症(高脂血症)の中で トリグリセライド(中性脂肪) が高いものを高トリグリセライド血症といいます。高トリグリセライド血症は、血液中にトリグリセライドが多く存在する(150mg/dL以上)タイプのものです。1997年の国民栄養調査では、日本人の男45%、女33%が該当するという結果が出ています。内臓脂肪型肥満の人に多いのが高トリグリセライド血症の特徴です。
 一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されていましたが、現在ではやはり関連が再度見直されています。更に、レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)が、高トリグリセライド血における動脈硬化発症への関与が示唆されています。
トリグリセライドについての詳しい情報は、「トリグリセライド」をクリックして確認ください。

脂質異常症(高脂血症)になりやすい人

脂質異常症(高脂血症)の原因として多いのが、脂質異常症になりやすい体質と生活習慣によるものです。家族性(遺伝性、生活習慣の類似性)があるとなりやすいことは確かですが、やはりこのリスクファクターに生活習慣が加わることでリスクが確定的となり脂質異常症を発症することとなります。

 生活習慣の中でも、いちばん重要な要素が「食生活」です。脂っこいものや甘いものを多くとると、血液の中のコレステロールや中性脂肪が増加してしまいます。また、食生活の他に、運動不足、喫煙、飲酒、ストレス、などの要素があります。運動不足による肥満やタバコの吸いすぎ、お酒の飲み過ぎ、ストレスをため込む、などにより、脂質異常症になりやすくなります。 また、体質的なことでは、コレステロールが上がりやすい人と上がりにくい人がいます。コレステロールが上がりにくい人が、高コレステロールの食品を食べてもあまり変化しませんが、上がりやすい人では、少ない量でも上がってしまいます。ただし、体質的なリスクを持っている方でも、生活習慣を改善することで脂質異常症を予防することができます。

脂質異常症(高脂血症)になりやすい人リスト

 以下のリストに当てはまる方は、脂質異常症になりやすい方です。これらに当てはまる方は、ならないよう注意しましょう。

1、家族に脂質異常症や動脈硬化症の人がいる。
2、肥満傾向である。
3、高血圧または境界型血圧である。
4、日常的にあまり歩かない。
5、お酒をよく飲む。
6、糖尿病である。あるいは血糖値が高めだといわれた。
7、痛風がある。
8、肉や脂っこい食べ物が好き。
9、女性で、閉経している。
10、甘いものや乳脂肪製品(生クリームや洋菓子)、果物が好き。

2次性脂質異常症(高脂血症)について

2次性脂質異常症とは、ある疾患の影響により脂質異常症を発症するものをいいます。以下のような疾患をお持ちの方は注意が必要です。

甲状腺機能低下症による脂質異常症(高脂血症)

 甲状腺の病気で、甲状腺ホルモンが不足して起こります。首の全面がはれたり、だるさなどが見られます。ちなみに甲状腺とは、のどぼとけの下に、ちょうど蝶が羽を広げて気管を抱くような形で存在しています。

甲状腺の病気になっても高脂血症が、起こることがあります。 甲状腺とは、首の前部、喉仏の下にある器官で、甲状腺ホルモンを分泌しているところです。甲状腺ホルモンは、栄養素を円滑にエネルギーに、替える働きをしています。 甲状腺機能低下症というのは、甲状腺ホルモンの分泌が減るという病気です。

甲状腺ホルモン低下症の病気の症状は、血圧が下がる、体がむくむ、体重が増えて動作が緩慢になる、物忘れがひどくなる、心臓の働きが低下するなどの症状が現れます。それと同時に、血液中の総コレレストロール値が高くなります。 原因は、甲状腺ホルモンの減少のために、肝臓や組織のLDLの受容体が少なくなり、 コレステロールが、組織に取り込まれなくなるなどのせいで、血液中にコレステロールがとどまってしまうからです。この病気は、中年以降の女性に多い病気です。

甲状腺機能低下症は、コレステロール値が高くなりますが、症状がはっきりしないため見逃されていることが多いのです。  逆に甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの分泌が多すぎて、総コレステロール値が低下します。この病気は、手足の震えや動機、体温上昇、発汗、眼球突出、体重減少などの症状が現れます。


糖尿病による脂質異常症(高脂血症)

血液の中のブドウ糖が慢性的に高い状態になってしまう病気です。高脂血症と糖尿病には深い関係があり、糖尿病患者の約20~50%の方が高脂血症を発症しています。

糖尿病とは、体や脳の活動エネルギー源として使われるブドウ糖が血中に増えすぎ、尿と一緖に糖が出る病気です。通常、ブドウ糖はインスリンというホルモンによってエネルギーへ変換されますが、インスリンのはたらきが不足してブドウ糖が使われなくなると、高血糖を招いて糖尿病を引き起こします。40歳以上になると、5人に1人が糖尿病にかかっていると言われており、現代人の生活習慣病の1つとして数えられています。

糖尿病によってブドウ糖がエネルギーとして使われなくなると、血中に糖分があふれ、肝臓で中性脂肪とコレステロールの原料にされてしまいます。また、ブドウ糖がエネルギーに変換されなくなると、筋肉などの細胞が中性脂肪を分解してエネルギーとして利用しようとします。ところが、分解されてできた遊離脂肪酸は筋肉では使い切ることができず、肝臓に戻されて、やはり中性脂肪とコレステロールの原料となってしまうのです。こうして大量の中性脂肪とコレステロールが作られることにより、高脂血症が発症しやすくなります。

高脂血症にかかっている上に糖尿病を併発すると、動脈硬化が進行しやすくなります。糖尿病になると血管内が傷つきやすくなり、血管内に血液の固まりができやすくなる上、さらにコレステロールが高くなると、コレステロールの結晶がたまって、より血管を傷つけることになります。傷ついた血管部分は血液が固まってふさいでくれますが、血液の流れが阻害されるようになり、動脈硬化を引き起こしやすくなります。

高脂血症と糖尿病は単独でも動脈硬化を引きおこす原因となりますが、合併するとさらに動脈硬化を悪化させ、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こします。


膠原病による脂質異常症(高脂血症)

 膠原病は、外から侵入してくる病原菌などを排除する役割の免疫機構が誤って自分自身を攻撃してしまう病気です。 膠原病に含まれる主なものには、対称的な関節破壊により10年後には約半数が寝たきりになってしまう関節リウマチ(RA)、頬の周りに蝶が羽を広げたような紅斑に加え、発熱、全身倦怠感そして多彩な臓器が障害される全身性エリテマトーデス(SLE)、手先が冷え色が変わり皮膚も指でつまめなくなるほど硬くなり、肺、食道そして血管に線維化がおこる強皮症、「太ももが持ち上げにくくて階段が昇れない」、「手が疲れて髪がとかせない」など筋肉が冒される多発性筋炎、多発性筋炎の症状に加え目の周りに紫色の皮疹と手などに盛り上がりのある皮疹がでる皮膚筋炎、目と口が乾燥するシェーグレン症候群、手先が冷え色が白く変わる症状に加え手指がソーセージのように腫れ全身性エリテマトーデス、強皮症、そして多発性筋炎の症状がそれぞれ合併する混合性結合組織病(MCTD)、関節リウマチに血管の炎症を伴い多彩な症状を呈する悪性関節リウマチ、障害される血管の大きさにより多彩な症状を呈する血管炎症候群、平熱と高熱が繰り返され高熱になる直前から出現し解熱すると消えてしまうサーモンピンク色の皮疹を特徴とする成人発症スティル病、高齢者に発病する比較的短期間のうちに肩や腰の周囲に痛みが出現し、発熱、体重減少などを伴うリウマチ性多発筋痛症があります。


原発性胆汁性肝硬変症による脂質異常症(高脂血症)

胆汁は食べ物に含まれている脂肪を消化する大切な働きを有しています。この胆汁は肝臓で肝細胞によって作られて、肝臓内の細い管(肝内胆管)を経て、だんだんと大きな胆管に集合し、一旦胆嚢内に貯留された後に食物として摂取した脂肪分が刺激となり、十二指腸から腸内へ排出されます。原発性胆汁性肝硬変(げんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)になると、肝臓の中の小さな胆管が炎症により破壊されます。このため、胆汁が肝臓内に停滞するために胆汁中の成分であるビリルビンが血管内に逆流し、全身の組織に黄色いビリルビンが沈着し黄疸が生じます。肝臓では、炎症と停滞した胆汁により次第に肝細胞が破壊されて線維に置換され、徐々に肝硬変へと進行します。一部の患者さんでは、徐々に肝臓の働きが低下して、黄疸、腹水貯留、意識障害(肝性脳症)を生じて肝不全という状態まで進行します。

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原発性胆汁性肝硬変は英語ではPrimary Biliary Cirrhosisといい、頭文字をとってPBC(ピービーシー)と呼ばれています。症候性PBCと無症候性PBCに分頬され、皮膚のかゆみ、黄疸、食道胃静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自覚症状を有する場合は症候性PBCと呼び、これらの症状を欠く場合は無症候性PBCと呼びます。PBCは病名に肝硬変という名称が含まれていますが、多くの患者さんは肝硬変の状態になく、早期の進行していない時期にみつかります。しかし、病名としては?原発性胆汁性肝硬変と呼ばれます。

現在PBCの診断を受けておられる多くの方は自覚症状はなく、無症候性PBCです。一部(約2割)の方にまず全身の皮膚に痒みが現れ、数年後に黄疸が出現するようになります。さらに病気が進行し、黄疸が続く結果、胆汁性肝硬変という状態になると、他の原因(肝炎ウイルスやアルコール)による肝硬変と同様に、からだのむくみ(浮腫)、おなかの張り(腹水)やアンモニアが体内に貯まって生じる肝性脳症が生じるようになります。またこの病気は、食道の血管が拡張する食道胃静脈瘤が他の原因による肝障害よりも生じやすく、この静脈瘤の破裂による吐血や下血ではじめてこの病気であることが分かることもあります。また、高齢の患者さんが多くなったこともあり、肝がんの併発がみられることもあります。

胆汁がうっ滞し腸管に胆汁が流れづらくなるために、脂溶性のビタミンであるビタミンDが吸収されにくくなり、特に閉経期の女性では骨粗鬆症が進行しやすくなります。骨粗鬆症がひどくなると、脊椎やあちこちの骨がもろくなり、骨折を来すようになります。また、高脂血症を生じやすく、目の周りに脂肪が沈着する眼瞼黄色種ができることもあります。また、PBCには他の自己免疫疾患が合併することが知られています。日本ではこの病気の約15%の方に口腔乾燥症・乾燥性角結膜炎を特徴とするシェ-グレン症候群、約5%に関節リウマチ、慢性甲状腺炎が合併するとされており、これら合併した他の自己免疫疾患の症状が前面に出る場合もあります。


クッシング症候群による脂質異常症(高脂血症)

クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンのひとつで、血糖上昇作用、タンパク質の合成・分解促進作用、あるいは抗炎症・免疫抑制作用などのはたらきがあるコルチゾールの分泌が慢性的に過剰になる病気です。 過剰になる原因としては、副腎に腫瘍の一種である腺腫ができたり、脳下垂体の腺腫あるいは悪性腫瘍による副腎皮質刺激ホルモンの過剰産生により、副腎皮質刺激ホルモンが過剰分泌されるものがあります。

クッシング症候群の症状 としては、ムーンフェイス(満月様顔貌)といって、顔に脂肪が付いてまん丸になります。身体も肥満になっていきますが、手足は細いままで、胸や腹が太ります(中心性肥満)。筋肉が萎縮して筋力が低下し、骨ももろくなるため、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。また、皮下出血が起こりやすくなり、性欲がなくなります。高血圧や糖尿病、骨粗鬆症を合併することもあります。

クッシング症候群は、重症になりやすいので、治療は早ければ早いほどよい病気です。一般的には、鼻から内視鏡を挿入し、鼻の奥の骨を除去して腫瘍を摘出する手術を行ないます。腫瘍摘出後は、下垂体機能が一時的に低下し、コルチゾールが不足状態になるので、糖質コルチコイドなどで補います。副腎の腫瘍が原因の場合も、腫瘍の摘出手術を行ない、その後一時的に低下する副腎機能を補うために糖質コルチコイドを服用します。そのほか、放射線治療や副腎皮質ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの抑制剤を使った治療を行なうこともあります。


ネフローゼ症候群による脂質異常症(高脂血症)

ネフローゼ症候群は、高度のたんぱく尿と血液中のたんぱく質濃度の低下(低たんぱく血症)がおこる腎臓の病気で、さまざまな程度のむくみや血液中の脂質の増加(高脂血症)がみられます。 原因は、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症(「巣状糸球体硬化症」)、膜性腎症(「膜性腎症」)、膜性増殖性糸球体腎炎(「膜性増殖性糸球体腎炎」)など、一次性(原発性)の糸球体の病変が代表的なものですが、糖尿病性腎症(「糖尿病性腎症」)や全身性エリテマトーデスにともなうループス腎炎など、二次性(続発性(ぞくはつせい))の糸球体の病変も原因になります。

ネフローゼ症候群は、原発性の糸球体そのものの病変が原因である一次性ネフローゼ症候群と、なにか別の病気があって糸球体の病変がひきおこされる続発性の二次性ネフローゼ症候群に分けられます。 子どもでも、おとなでも、一次性ネフローゼ症候群が多く、一次性の割合は、子どもで90%以上、おとなでは70~80%といわれています。 発病した年齢によって、一次性ネフローゼ症候群のタイプが異なり、子どもでは微小変化型ネフローゼが圧倒的多数を占めていますが、年齢があがるとともに膜性腎症の割合が増加し、中高年層では半数以上を占めます。二次性ネフローゼ症候群のタイプも年齢によって異なり、子どもでは紫斑病性腎炎(しはんびょうせいじんえん)、おとなでは糖尿病性腎症やループス腎炎が多くなります。

大部分の患者さんに、血液中のコレステロールが増える高コレステロール血症がみられます。血液中の中性脂肪(ちゅうせいしぼう)も増える傾向があります。 ネフローゼ症候群に高脂血症がおこる理由は、血液中のアルブミンの濃度が下がると、肝臓がそれを補うためにアルブミンの合成を活発に行ない、それにともなって肝臓が、低比重リポたんぱく(LDL)と超低比重リポたんぱく(VLDL)の合成も活発化するからです(リポたんぱくは、血液で脂質を運ぶときの姿で、たんぱく質で「包んで」ある脂肪と考えてよい)。 また、動脈硬化を抑えるはたらきがある高比重リポたんぱく(HDL)が尿にもれ出るため、血液中のHDLの濃度が減少します。

脂質異常症(高脂血症)にはどのようなリスクがあるのか

脂質異常症は、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が、多過ぎる病気です。血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質がとけこんでいます。 脂質異常症の症状は、基本的に何もありません。しかし、状態は静かに進行し知らず知らずのうちに狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの血管系の疾患を進行させてしまうのです。そのような疾患を引き起こしてしまっては、後の祭りです。脂質異常症と分かったら、しっかりと治療を行い、症状を引き起こさないことが重要と言えるのです。


脂質異常症は動脈硬化の原因

日本人の死因第一位は「がん」です。そして第2位と第3位は血管系の疾患である虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)です。この第2位と第3位はどちらも、脂質異常症が引き起こした動脈硬化によるものです。この第2位、第3位を合わせるとなんと全死因割合の実に3割を占めるのです。また、死因と申し上げましたが、運よく命をつないだとしても、心臓や脳に重い後遺症やリスクを抱えることになります。健康的な生活を送っていくうえで、血管の健康を考えることはとても重要なことなのです。 また、脂質異常症は動脈硬化を引き起こすと申し上げましたが、動脈硬化及び脂質異常症がさらに、血圧を高め高血圧を悪化させ、高血圧により腎臓の血管を傷め腎臓病の引き金となります。動脈硬化はさまざまな危険因子が重なり合って起こります。ですので、それらの危険因子を除いていけば、様々な疾患の罹患率を大きく下げることができます。

脂質異常症そして動脈硬化が引き起こす疾患

 脂質異常症そして動脈硬化は「静かな暗殺者」と呼ばれるほど、致死性の高い疾患を引き起こす原因となります。それは、脂質異常症や動脈硬化が進行し症状が出るまで、沈黙を守るのです。しかし、あるときそれは牙をむきあなたの命を危険にさらすことになるのです。
その、命を落とす原因となるのが以下のような疾患となります。

 2次疾患リスク要因      脂質異常症の2次疾患
心臓に大きな負担がかかる 心肥大、心不全、高血圧
臓器組織が正しく機能しなくなる 心筋梗塞、狭心症
脳梗塞
下肢閉塞性動脈硬化症
臓器組織が壊死する
血管が破れやすくなる くも膜下出血等の脳疾患

脂質異常症(高脂血症)が病気のリスクが高めます

 心筋梗塞や脳卒中など虚血性疾患の原因は、脂質異常症(高脂血症)と言われています。
この脂質異常症(高脂血症)になる背景としては、
 ①肥満(特に内臓脂肪型肥満)
 ②高血圧、脂質異常症(高脂血症)
 ③耐糖能異常(糖尿病とその境界型)
 心筋梗塞、脳卒中等の虚血性疾患の3大要因と言われています。

 脂質異常症(高脂血症)にならない為にも上の条件が3つ以上そろわない様に注意しましょう。もう既に3つ以上揃った方も大丈夫!ちゃんとお医者様の診察や薬で改善する事ができますが、一番大切な事は、普段の食生活やライフスタイルの見直しです。暴飲暴食、アルコールを多く摂取する人は特に注意してください。ある研究によりますと上記に上げた条件が3つ以上ある方の虚血性心疾患や脳卒中になる可能性が、いずれも正常な人の約36倍以上になるといわれています。なので放置しないで、しっかり治療をしましょう。

脂質異常症(高脂血症)の血液検査と診断基準

脂質異常症は、家族性高コレステロール血症以外、初期には自覚症状がまったくありません。症状がなければそれでいいかといいますと、そうではなく、症状が出てからでは遅いのです。では、症状のない病気を早期に発見するにはどうするか。それは定期的な健康診断を受けることしか方法はありません。1年に1回の健康診断で構いませんので必ず受けるようにしましょう。脂質異常症の検査は、通常の健康診断の血液検査で行われていますので、簡単です。

脂質異常症(高脂血症)の診断基準

 脂質異常症の診断は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)・HDLコレステロール(善玉コレステロール)・中性脂肪の値で判断します。高脂血症という言葉を以前は用いていましたが、必ずしもすべての検査項目が高いのではなく、HDLコレステロールのように低値でリスクファクターが高まるものもあります。そのため、必ずしも高脂ではないため、脂肪異常症という言葉を使うようになりました。

脂質異常症の診断基準値

疾患名 診断項目 基準値
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dl(以上)
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40mg/dl(未満)
高トリグリセリド血症 中性脂肪
(トリグリセリド)
150mg/dl(以上)

脂質異常症(高脂血症)のリスク別脂質管理目標値

治療方針の原則 カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dL)
  LDLコレステロール以外の主要危険因子  LDL-C HDL-C  トリグリセリド
一次予防

まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する

(低リスク群)
40以上 150未満

(中リスク群)
1?2

(高リスク群)
3以上 140未満
二次予防

生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往 100未満
 

脂質異常症(高脂血症)のリスク管理目標値とは

 この脂質異常症(高脂血症)のリスク管理目標値は、脂質異常と診断された患者に対しての管理基準として、動脈硬化性疾患のリスク別管理目標を設定ものです。
大きな枠としては、冠動脈疾患を発症していないか(一次予防)、発症している(2次予防)であるかで分けられています。二次予防においては、LDL-Cの管理目標も低く設定され( L D L -C 値100mg/dL未満)、生活習慣の改善と同時に早急な薬物療法が必要と判断されます。一方、将来の冠動脈疾患の発症を予防することが管理目的となる一次予防では、LDL-C値以外の危険因子をいくつ有するかによりリスク分類を低リスク、中リスク、高リスクの三群に分類しています。

※ LDLーC以外の主要冠危険因子
 加齢(男性:45歳以上、女性:55歳以上)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症等)の家族歴、低HDLーC血症(40mg/dL未満)
※ 糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症があれば、カテゴリー3になります。

家族性高コレステロール血症の診断基準

 家族性高コレステロール血症とは、遺伝子の異常が原因で起こる家族性高脂血症のひとつです。家族性高脂血症は、LDL受容体の遺伝子の異常を親から受け継いでいることが原因で発症する高脂血症(脂質異常症)で、そのほとんどが「家族性高コレステロール血症」です。

家族性高コレステロール血症の分類

1、片方の親から受け継いだ場合:ヘテロ型
2、両親から受け継いだ場合:ホモ型
といいます。

家族性高コレステロール血症の診断基準

1、コレステロール値が高い
2、黄色腫(おうしょくしゅ)が見られる
3、LDL受容体に異常がある

以上の3つを全て満たしていることが条件になります。

一般的にはコレステロール値が高く、黄色腫が見られるだけでも、家族性高コレステロール血症である可能性がかなり高いといわれています。

黄色腫(おうしょくしゅ)とは、アキレス腱が太く厚くなったり、まぶた、指・ひじ・ひざの関節、手のひら、などにコレステロールの固まりができるものです。よくみられるのは鼻に近いところの「まぶた」に発生する「眼瞼黄色腫(がんけん おうしょくしゅ)」です。

LDL受容体とは、細胞表面にLDLを取り込む働きをするものです。LDLとは、「低比重リポタンパク質」とも呼ばれ、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きのあるリポ蛋白(リポたんぱく)のことです。

家族性高コレステロール血症の人の総コレステロール値

・ヘテロ型・・・「約250~500mg/dl」
・ホモ型 ・・・「約500~1000gm/dl」

※一般的な正常値は総コレステロール血症・・・220mg/dl

ヘテロ型では60歳ぐらいまでに、ホモ型ではそのほとんどが若いころから、動脈硬化が原因で発症する病気(狭心症、心筋梗塞、他)になります。特にホモ型の人はヘテロ型の人よりも重症で、5歳から30歳までに狭心症や心筋梗塞を起こすことも多いようです。

脂質異常症(高脂血症)を生活習慣で改善

脂質異常症(高脂血症)を治療していくうえで、重要な事は食生活の改善と生活習慣の改善です。ここでは、食生活を含め、生活習慣の改善を中心に書いています。また、運動についても書いていますので参考にしてみてください。

国内の脂質異常症(血中のLDLコレステロール値が140mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満、トリグリセライド(中性脂肪)値が150mg/dL以上)の有病者の割合は、成人で20%以上にも及ぶといわれております。脂質異常症治療の基本は、生活習慣の改善と薬物治療がありますが、冠動脈疾患を合併しない場合、食事療法と運動療法に重点を置いた生活習慣改善を最初に行い、次のステップとして、薬物療法との併用療法を行うとされています。日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患診療ガイドラインによると、脂質異常症のための生活習慣の改善項目は、1)減量:適正体重の維持(BMI18.5-24.9kg/m2の範囲)、2)減塩:食塩摂取の制限(7g/日以下)、3)アルコール摂取の制限、4)コレステロールや飽和脂肪酸の摂取制限、5)運動療法(運動・身体活動量の増加)、6)禁煙とされています。


脂質異常症(高脂血症)の生活習慣のポイント

1日に食べた物を書き出してみましょう 

脂質異常症の治療において重要なことは、どんな生活習慣が今回の脂質異常症という疾患を招いたのかということを、生活習慣の観点から問題を洗い出すことです。今までの生活習慣の問題を把握することで、改善すべき点を明確にし治療に向けたモチベーションを維持することにもつながります。 把握するためにはまず書くことから始めます。まずは、平日と休日の1日の食事内容(水を省いた口に入れたものすべて)を書き出します。

主治医と相談しながら、3ヶ月ごとの目標を立てましょう

 かかりつけの主治医と相談して、当面3ヶ月間の改善目標を決めることが大切です。
ここで、目標を掲げるときに重要なことは、無理な目標はたてないこと。 例えば、ダイエットをするときに100kgの体重を50キロに1か月でしよう。これはどう考えても無理な目標ですし、明らかに健康上問題です。

 どんな目標についても同じことが言えますが、容易に達成できる目標ではなく、少し頑張れば達成できる目標にすることがモチベーションを維持するうえでも、健康を守る上でも大切なことです。
例えば
1、3食きちんと栄養バランスを整えて食べる
2、脂質の吸収を抑える食物繊維を摂る
3、1日30分の有酸素運動を行う

 確実に実行できることを目標として掲げ実行するようにしましょう。また、病院によっては栄養指導も行っているところもありますので、ぜひ活用するようにしましょう。

頑張った結果を脂質異常症の検査で確認

 治療に向けて頑張ったら、結果は必要ですね。3ヶ月後に再び病院にいき血液検査をしてもらいましょう。変化が出てきたら成功。変化がなかったり上昇している場合は、何かしらの問題がある場合がありますので、主治医と相談し目標内容と実行内容の吟味をしましょう。

女性は生活習慣の改善効果が大きい

もちろん、総コレステロール値が280mg/dLなど非常に高い場合は、最初から薬による治療が検討されることもあります。ただ、閉経前の女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の作用でLDL(悪玉)コレステロールが高くならないように調整されるので、間食の多い方や運動不足の女性では生活改善の効果が期待できます。閉経前はまず生活改善を、エストロゲンの分泌が減少する閉経前後からは生活改善と薬の併用も選択肢の一つです。検査値しか手がかりがないため、つい効果が期待できる薬に頼ってしまう脂質異常症ですが、少し体重を減らしただけで数値が改善するケースもあります。まずは、今晩の食事から生活改善を始めてみませんか。


脂質異常症を食事で改善(基本)

高脂血症のタイプ、つまりコレステロールと中性脂肪のどちらかあるいは両方高いのかにより、また合併症の有無などにより、食事療法のポイントは若干異なってきます。ただ基本は同じですので、以下にそのポイントを示します。食事療法では、平均総コレステロール値の1割、中性脂肪では2割程度の低下が期待できます(高中性脂肪血症では、特に食事療法に大きな効果が期待できます)。一般には、総コレステロールで5%、中性脂肪で10%低下すれば、食事療法の効果ありと判断されます。1~2ヶ月食事療法を継続して、それ程効果が見られない場合は、薬物療法の適応と考えても良いでしょう。

適正なエネルギーをとりましょう

エネルギーをとりすぎると、肝臓でのコレステロールの合成が促進されます。余分なエネルギーは肝臓でトリグリセライド(中性脂肪)に合成され、血液中のトリグリセライドも高くなります。逆に消費エネルギーの方が多いと、トリグリセライド分解されエネルギー源として使われます。肥満のある場合は、標準体重(※)に近づけましょう。
※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22(日本肥満学会の式)

良質なたんぱく質をとる

魚・肉・大豆製品・卵など良質なたんぱく質を含む食品は、毎食1品はとるようにしましょう。LDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やすためには、脂肪の多い肉や卵を減らし、魚や大豆製品を選ぶようこころがけましょう。

脂肪の質と量に注意しましょう

脂質からのエネルギー量は全体の20?25%とし、動物性脂肪は控えるようにしましょう。
①牛乳などの乳製品や卵は指示量に合わせてとりましょう。
②肉は脂肪の少ない部位を選びましょう。
③市販食品や加工食品は、動物性脂肪を使っているものが多いので注意が必要です。

コレステロールを多く含む食品を控えましょう

 食品からとるコレステロール量は1日300mg以下にしましょう。コレステロールは卵類、レバーやモツなどの内臓類に多く含まれていますのでとりすぎに注意しましょう。魚でも内臓と魚卵はコレステロールが多いため、しらす干しのような小魚や、丸ごと食べるメザシやわかさぎ、タラコ、数の子、イクラなどの魚卵あるいは白子、塩辛などは食べる量と頻度に注意が必要です。

アルコール飲料を控えましょう

アルコールは1日25g以下が適量とされています。
(目安量)
?ビール…中瓶1本(500ml)
?日本酒…1合(180ml)
?焼酎…0.5合(90ml)
?ウィスキー…ダブル1杯(60ml)
?ワイン…グラス2杯(200ml)

食物繊維は十分にとりましょう

 食物繊維は、血管壁へのコレステロールの沈着を防ぎます。野菜、海草、きのこ類などを毎食欠かさず十分にとりましょう。また、野菜に含まれるβ?カロテン、ビタミンCはLDLコレステロールの酸化変性を防ぎます。野菜の1日の摂取量の目安は350g以上です。

甘いもののとりすぎに注意しましょう

 甘いもののとりすぎはトリグリセライド(中性脂肪)を増加させます。砂糖の多い菓子類、飲料は控え、料理に使用する砂糖も少なめにしましょう。
 また、果物にも糖分が含まれ甘いものの1つとして思い浮かびますが、ビタミンや食物せんいが豊富であるという点では優れた食品です。1日の適量を摂るように心がけましょう。
(目安量)みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本

食塩は控えましょう

 食塩のとりすぎは、血圧を上げる要因となります。高血圧症を合併すると血管を傷つけ動脈硬化が進みます。

脂質異常症を食事で改善(タイプ別)

 食事で改善(基本)のような食事療法で検査結果が目標値に達しない場合には、「LDLコレステロールが高いタイプ」、「トリグリセライド(中性脂肪)が高いタイプ」、「どちらも高いタイプ」にあわせた第2段階の食事療法へ進みます。

LDLコレステロールが高いタイプ

①脂肪の質と量に注意しましょう

脂質からのエネルギー量は全体の20%以下としましょう。 

多価不飽和脂肪酸(P):一価不飽和脂肪酸(M):飽和脂肪酸(S)の比率は、3:4:3 が望ましいとされています。
多価不飽和脂肪酸(P)が多い食品:植物油や魚油(イワシ、さんまなど)
一価不飽和脂肪酸(M)が多い食品:オリーブ油
どちらも血液中のLDLコレステロールを下げる働きがありますが、エネルギーが高いので、決められた量の範囲でとりましょう。
 
飽和脂肪酸(S)はバターやラードなどの動物性脂肪、肉の脂身に多く含まれます。
LDLコレステロールを増やしますので、摂りすぎに注意しましょう。

②コレステロールを多く含む食品を控えましょう

 食品からとるコレステロール量はさらに制限し、1日200mg以下にしましょう。
卵は1日上限を1個とし、魚卵、小魚、レバー、うなぎ等の摂りすぎに注意しましょう。


トリグリセライド(中性脂肪)が高いタイプ

アルコールは原則禁止です。

炭水化物のとり方に注意しましょう

ごはん、パン、めん類などの主食は食事の基本として毎食取り入れます。いも類や果物も食物繊維やビタミンを豊富に含見ますので、毎日の食生活には欠かせない食品です。しかし、これら炭水化物を主体とした食品のとりすぎはトリグリセライドを増やしますので、適量をこころがけましょう。

例えば
?ごはんのおかわりは控えめにしましょう。
?いも類はじゃが芋1日小1個程度にしましょう。
?果物は1日80kcal程度(みかんなら中2個、りんごなら中1/2個、バナナなら中1本程度)にしましょう。
など

*また、砂糖は料理に使用する調味料のみにし、和菓子や洋菓子、清涼飲料水など甘いものは可能な限り控えましょう。


LDLコレステロール・トリグリセライド(中性脂肪)が共に高いタイプ

LDLコレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)が共に高い場合は、1及び2のポイントすべてに気をつけるようにしましょう。

脂質異常症(高脂血症)の食事のポイントは食べてはいけないものは原則ありません。摂りすぎに注意し適量を守ることで快適な食生活を送ることができます。


脂質異常症の治療に運動療法を取り入れましょう

 脂質異常症などの脂質の以上が認められる疾患において運動はとても効果的な治療法の一つです。しかし、健康状態や持病によっては運動療法を最大限に取り入れることができないケースもありますので、その場合は主治医の指導に従いましょう。 

運動の種類:ウォーキング(速歩)、ジョギング、水泳、自転車、社交ダンスなどの有酸素運動。

運動時間・頻度:運動はできれば毎日ですが、週に3~4日でも効果は出てきます。1日30-60分間程度。運動は続けることが重要です。最初は無理をせず少しずつ実施していきましょう。あくまでも、ここにある運動量などは、目標とちらえることが大切です。

運動強度:有酸素運動とは、肩で息をするほどの運動ではなく、息がはずむ程度が最適です。息が切れるほどの感覚を覚えるときは運動強度が強すぎることを意味しますので、見直しをしましょう。

 血中脂質の改善は、すぐの効果は望めませんので、あくまでも3カ月スパンで見るようにしましょう。

有酸素運動が血中脂質レベルを改善させるプロセス

 筋のリポプロテインリパーゼ活性が増大することにより、トリアシルグリセロール(血中カイロミクロン、VLDL、LDL)の分解を促進させ、HDLを増やすことが関与していると考えられています。

HDLの役割

 「善玉コレステロール」として知られ、末梢組織や細胞から余剰なコレステロールを回収し、肝臓に運搬する役割を有しています。
 HDLコレステロールを増加させることができる運動・身体活動の最低条件として、1週間に合計120分間の運動を行うか、1週間に合計900kcalのエネルギーを消費する身体活動を行うことが望ましいとされています。

運動をする前にメディカルチェックを! 

 メディカルチェックを受け、狭心症や心筋梗塞などの心血管合併症の有無を確認し、運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力、年齢、体重、健康状態などを踏まえて運動量を設定する必要があります。脂質異常症の改善には運動療法だけでなく、食塩摂取量やアルコール摂取量の制限、禁煙などとの併用療法がより効果的です。


脂質異常症(高脂血症)を治療するには

心臓の冠動脈の病気などの明らかな動脈硬化の病気がない場合には、脂質異常症の治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本です。 生活習慣の改善は、血中脂質を下げるだけでなく、動脈硬化が進むのを防ぐのが目的です。だから、動脈硬化を促進するほかの要素、高血圧、耐糖能異常、肥満なども改善できるよう生活を改善します。そのおもな内容は、

1.禁煙
2.食生活の是正
3.適正体重の維持
4.運動の増加です。

なかでも特に重要なのが食事(食事療法)で、これは適正体重の維持とも深く関わってきます。食事療法は、表のように2つの段階をおって進められます。第1段階は適正な食事にすること、第2段階は、病気のタイプに応じてよりくわしく、制限が厳しくなります。第1段階を行っても血液中の脂質が目標値に達しない場合に、第2段階へと移ります。

脂質異常症(高脂血症)の食事療法


 特に重要なのは食事療法で、これは適正体重の維持と深く関わっています。
 食事療法は、以下ように2つの段階をに分けて進められます。第1段階は適正な食事にすること、第2段階は、病気のタイプに応じて、食事制限をしていきます。脂質異常症から動脈硬化を引き起こし様々な病気を引き起こすことのないう、第一段階の食事でコントロールすることが快適な生活を送る上で重要なこととなります。

脂質異常症(高脂血症)の食事療法の基本

第1段階(摂取エネルギー、栄養素配分、コレステロール摂取量の適正化)
①摂取エネルギーの適正化
適正エネルギー摂取量=標準体重*×25~30(kcal)
*標準体重=[身長(m)]× [身長(m)]×22
②栄養素配分の適正化
・ 炭水化物:60%(エネルギー比)
・ たんぱく質:15~20%(エネルギー比)
 獣鳥肉より魚肉・大豆たんぱくを多く
・ 脂肪:20~25%(エネルギー比)
 獣鳥性脂肪を少なく、植物性・魚肉性脂肪を多く
・ コレステロール:1日300mg以下
・ 食物繊維:25g以上
・ アルコール:25g以下
 他に合併症がある場合はそちらを優先します。
・ その他:ビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)やポリフェノールの含量が多い野菜・果物などの食品を多くとる
 ただし、果物は単糖類の含量も多いので摂取量は1日80~100kcal以内に

*エネルギー比とは、総エネルギーに占める割合を示しています。
例)総エネルギー:1800kcal
  蛋白質エネルギー比:15%
計算:(1800kcal×15)/100=270kcalとなります。
たんぱく質は1g当たり4kcalですので、約68gとなります。

*1g当たりのエネルギー
たんぱく質、炭水化物:4kcal
脂質           :9kcal          となります。
第2段階(病型別食事療法と適正な脂肪酸摂取)
①高LDL-C血症(高コレステロール血症)が持続する場合
・脂質制限の強化
 脂肪由来エネルギーを総摂取エネルギーの20%以下
・コレステロール摂取量の制限
 コレステロール摂取量200mg以下 
・脂肪酸の摂取比率の見直し
 飽和脂肪酸/一価不飽和脂肪酸/多価不飽和脂肪酸の摂取比率:3/4/3程度
②高トリグリセリド血症が持続する場合
・アルコール制限
 禁酒
・炭水化物の制限
 炭水化物由来エネルギーを総摂取エネルギーの50%以下
・単糖類の制限
 単糖類をできる限り制限、1日80~100kcal以内とし、果物を除き調味料のみでの使用とします。
 *単糖類とは、果糖、ブドウ糖、ガラクトースなどをいいます。
③高コレステロール血症と高トリグリセリド血症がともに持続する場合
・①と②を併用した食事療法を行います。
④高カイロミクロン血症の場合
・脂肪の制限:15%以下

脂質異常症(高脂血症)の生活習慣(運動習慣など)


脂質異常症(高脂血症)の改善は認知療法から


1日に食べた物を書き出してみましょう

 脂質異常症の治療において重要なことは、どんな生活習慣が今回の脂質異常症という疾患を招いたのかということを、生活習慣の観点から問題を洗い出すことです。今までの生活習慣の問題を把握することで、改善すべき点を明確にし治療に向けたモチベーションを維持することにもつながります。

 把握するためにはまず書くことから始めます。まずは、平日と休日の1日の食事内容(水を省いた口に入れたものすべて)を書き出します。

 「書く」という行為は「認知行動療法」に通じるため、治療のモチベーションを高めるには最適です。

主治医と相談しながら、3ヶ月ごとの目標を立てましょう

 かかりつけの主治医と相談して、当面3ヶ月間の改善目標を決めることが大切です。
ここで、目標を掲げるときに重要なことは、無理な目標はたてないこと。 例えば、ダイエットをするときに100kgの体重を50キロに1か月でしよう。これはどう考えても無理な目標ですし、明らかに健康上問題です。 どんな目標についても同じことが言えますが、容易に達成できる目標ではなく、少し頑張れば達成できる目標にすることがモチベーションを維持するうえでも、健康を守る上でも大切なことです。

例えば
1、3食きちんと栄養バランスを整えて食べる
2、脂質の吸収を抑える食物繊維を摂る
3、1日30分の有酸素運動を行う  など。 
 確実に実行できることを目標として掲げ実行するようにしましょう。また、病院によっては栄養指導も行っているところもありますので、ぜひ活用するようにしましょう。

頑張った結果を脂質異常症(高脂血症)の検査で確認

 治療に向けて頑張ったら、結果は必要ですね。3ヶ月後に再び病院にいき血液検査をしてもらいましょう。変化が出てきたら成功。変化がなかったり上昇している場合は、何かしらの問題がある場合がありますので、主治医と相談し目標内容と実行内容の吟味をしましょう。

女性は脂質異常症(高脂血症)の改善効果が大きい

もちろん、総コレステロール値が280mg/dLなど非常に高い場合は、最初から薬による治療が検討されることもあります。ただ、閉経前の女性は、エストロゲン(女性ホルモン)の作用でLDL(悪玉)コレステロールが高くならないように調整されるので、間食の多い方や運動不足の女性では生活改善の効果が期待できます。閉経前はまず生活改善を、エストロゲンの分泌が減少する閉経前後からは生活改善と薬の併用も選択肢の一つです。検査値しか手がかりがないため、つい効果が期待できる薬に頼ってしまう脂質異常症ですが、少し体重を減らしただけで数値が改善するケースもあります。まずは、今晩の食事から生活改善を始めてみませんか。

脂質異常症(高脂血症)の運動の内容と効果

 脂質異常症などの脂質の以上が認められる疾患において運動はとても効果的な治療法の一つです。しかし、健康状態や持病によっては運動療法を最大限に取り入れることができないケースもありますので、その場合は主治医の指導に従いましょう。 

運動の種類:ウォーキング(速歩)、ジョギング、水泳、自転車、社交ダンスなどの有酸素運動。

運動時間・頻度:運動はできれば毎日ですが、週に3~4日でも効果は出てきます。1日30-60分間程度。運動は続けることが重要です。最初は無理をせず少しずつ実施していきましょう。あくまでも、ここにある運動量などは、目標とちらえることが大切です。

運動強度:有酸素運動とは、肩で息をするほどの運動ではなく、息がはずむ程度が最適です。息が切れるほどの感覚を覚えるときは運動強度が強すぎることを意味しますので、見直しをしましょう。

 血中脂質の改善は、すぐの効果は望めませんので、あくまでも3カ月スパンで見るようにしましょう。

有酸素運動が血中脂質レベルを改善させるプロセス

 筋のリポプロテインリパーゼ活性が増大することにより、トリアシルグリセロール(血中カイロミクロン、VLDL、LDL)の分解を促進させ、HDLを増やすことが関与していると考えられています。

HDLの役割
 「善玉コレステロール」として知られ、末梢組織や細胞から余剰なコレステロールを回収し、肝臓に運搬する役割を有しています。
 HDLコレステロールを増加させることができる運動・身体活動の最低条件として、1週間に合計120分間の運動を行うか、1週間に合計900kcalのエネルギーを消費する身体活動を行うことが望ましいとされています。

運動をする前にメディカルチェックを! 

 メディカルチェックを受け、狭心症や心筋梗塞などの心血管合併症の有無を確認し、運動療法の可否を確認した後に、個人の基礎体力、年齢、体重、健康状態などを踏まえて運動量を設定する必要があります。脂質異常症の改善には運動療法だけでなく、食塩摂取量やアルコール摂取量の制限、禁煙などとの併用療法がより効果的です。

脂質異常症(高脂血症)の薬物療法について

 生活習慣が改善が上手にできない人、生活習慣を改善しても改善効果が得られない方、以上の方は生活改善療法を初めて3~6か月経過したあたりで、動脈硬化、そして心筋梗塞や脳梗塞のリスク回避を目的として、薬物療法の対象となります。
 ただし、家族性高コレステロール血症の場合は、原因が明らかであるためリスク回避のために最初から薬物療法をはじめます。また、薬を飲んでいるから暴飲暴食をしてよいということではありませんので、引き続き食事療法をはじめ、生活習慣の管理を引き続き行うようにしましょう。

脂質異常症の具体的薬について
薬\対象脂質 LDLコレステロール HDLコレステロール トリグリセリド 主な働き
HMG-CoA還元
酵素阻害薬
? ? 肝臓でLDL-コレステロールが合成されるのを抑える
プロブコール ? コレステロールが酸化し、血管に付着するのを防ぐ
陰イオン
交換樹脂
? 腸の中でコレステロールと胆汁酸の吸収を抑える
ニコチン酸
誘導体
? ? ? 脂肪酸が集まって中性脂肪になるのを防ぐ
フィブラート系薬 ? ? ? 中性脂肪の合成を抑制する
イコサペント酸
エチル
? 血小板の働きを抑制して固まるのを防ぐ