乳酸脱水素酵素(LDH)は、肝臓や心臓等の臓器に異常がないかを調べる検査です。

乳酸脱水素酵素(LDH)

乳酸脱水素酵素(LDH)は、体内で糖分がエネルギーに転換される嫌気的解糖系の最終段階に働く酵素の一種です。LDHは、ほとんどの細胞に含まれていますが、特にLDHが多く含まれている臓器は、肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などです。血液中のLDH値が高いかを調べる事で、肝臓などの臓器の異常が無いかを調べます。もし、肝臓などの臓器に異常が起き細胞が死滅などすると血液中にLDHが流れ出して、LDH値が高い状態を示すようになります。特に急性肝炎や肝臓がん、あるいは心筋梗塞のときに著しくLDHが増加します。また、慢性肝炎や肝硬変などの肝臓病、腎不全、悪性貧血などの血液病、筋ジストロフィーなどの骨格菌の病気、間質製肺炎、さまざまな臓器のがんなど、多くの病気で血液中に増加するので、これらの病気を発見するスクリーニング検査として用いられています。

乳酸脱水素酵素(LDH)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
乳酸脱水素酵素 LDH 120~240 IU/L

乳酸脱水素酵素(LDH)検査の目的

乳酸脱水素酵素(LDH)は、ほとんどの組織や臓器に分布する酵素。貧血、炎症、腫瘍など汎用的なスクリーニング検査として用いられます。 乳酸脱水素酵素(LDH)は可溶性分画に属する酵素でほとんどの組織や臓器に広く分布します。 LDHが含まれている臓器が損傷を受けると、その組織からLDHが逸脱し血清中濃度が上昇する。通常はスクリーニングとして総活性を測定し、高値をみた場合にアイソザイムを測定し損傷臓器を推定します。また同時にAST(GOT)を測定しLDH/ AST比をとります。LDH/AST比が高値の場合(10~25)の場合は悪性腫瘍や溶血性疾患が疑われる。LDH/AST比の上昇が中等度の場合は感染症か肝臓以外の実質性の臓器障害が考えられ、また悪性腫瘍が存在する可能性もあります。このため各種画像診断のほか、推定される臓器に関する腫瘍マーカーの検査を行ないます。LDH/AST比が低い場合は肝疾患の疑いがあります。

乳酸脱水素酵素(LDH)の検査結果からわかる病気

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 ①血清LDHの上昇する疾患
ウイルス性肝炎、白血病、肺梗塞、進行性筋ジストロフィー症、心筋梗塞、再生不良性貧血、肝硬変、悪性リンパ腫、うっ血性心不全、LDH結合性免疫グロブリン、溶血性貧血、悪性腫瘍(広範ながん転移)、急性肝炎

②髄液LDHの増加する疾患
脳血管障害、髄膜炎、腫瘍の中枢神経転移

③胸,腹水のLDHの増加する疾患
腺腫の胸・腹膜転移

④尿のLDHの増加する疾患
急性腎盂炎、血尿症、腫瘍(腎臓・膀胱・前立腺・泌尿生殖器)、蛋白尿症、尿細管菌感染、尿細管腎症、ネフローゼ
基準値より低値 LDHサブユニット欠損症、抗腫瘍剤や免疫抑制剤の投
【備考】
運動の影響を受けて上昇するため、採血前には激しい運動は避ける。また赤血球中にはLDH(1、2型)が多量に含まれているため、溶血により高値を示しやすくなります。 

【関連項目】 
総ビリルビン直接型ビリルビン総たんぱくアルブミンコリンエステラーゼチモール混濁試験硫酸亜鉛混濁試験AST(GOT)
ALT(GPT)γ-GTPアルカリフォスファターゼロイシンアミノペプチターゼ乳酸脱水素酵素インドシアニン・グリーンアンモニア総コレステロールB型肝炎ウイルス表面蛋白抗原C型肝炎ウイルス核酸定性C型肝炎ウイルス核酸定量

乳酸脱水素酵素LDHと悪性腫瘍(がん)

LDH(乳酸脱水素酵素)検査で異常が判明した時、体内に悪性腫瘍(がん)が発生しているかもしれないと疑う必要があります。悪性腫瘍(がん)が原因でLDL検査結果が上昇する事がわかっております。LDL検査は、腫瘍マーカーとして使用しております。しかし、LDH検査は、すべての悪性腫瘍(がん)に反応するわけではありません。特定の悪性腫瘍に対して特異的な反応しますので注意が必要です。健康診断でLDHだけ高いときには、全身のその他のくわしい検査を受けることをお勧めします。 

乳酸脱水素酵素(LDH)検査基準値と結果の判定

LDHの基準値は、測定法(ほかにUV法、PL反応法など)によって異なるので注意が必要です。男女の差によるLDH値の変化はありませんが、妊娠後半期にLDHが急上昇し、出産前は基準値の2倍近くになります。血清中のLDHが低値なら問題ありませんが、上昇するのは損傷した臓器の細胞からLDHが漏れ出ていることを意味しています。LDHの基準値の4~5倍も高値を示す場合は急性肝炎や心筋梗塞、肝臓がんが疑われ、高値でも軽度の場合は全身の色々な病気が考えられます。LDH検査だけで病気を特定することはできませんので、次に述べるアイソザイム検査を行なって詳しく調べていきます。

乳酸脱水素酵素(LDH)検査で異常な数値がでたら

LDHは、心筋梗塞、心不全、悪性貧血、白血病、急性肝炎、肝臓がん、胃がん、すい臓がん、大腸がんなどで増加します。異常値が出たら、どの臓器の病気かを知るためにアイソザイム検査が行なわれます。アイソザイムとは、同じはたらきをするが分子構造は異なる酵素群のことで、LDHの場合は、さらに分析するとLDH1~LDH5の5つに分けられます。肝臓の病気の場合、現在進行中の肝細胞障害の度合いを示しています。急性肝炎の初期にはLDH5が著しく増加します。肝臓がん(とくに転移性がん)でも増えます。しかし、慢性肝炎、肝硬変では数値はあまり上がりません。心筋梗塞や溶血性貧血ではLDH1が非常に高くなります。筋ジストロフィーではLDH2が、大腸がんではLDH3が、肺梗塞と慢性骨髄性白血病ではLDH2とLDH3が、それぞれ増加します。肝臓の病気とわかれば、GOT・GPT、ALP、コリンエステラーゼ(ChE)、腹腔鏡検査、肝生検などの検査や、臨床症状を合わせて総合的に判断され、治療が行なわれます。