総蛋白を測定する事で栄養状態を知ることができるほか、多発性骨髄腫などの診断にも用いられます。

総蛋白(TP)

総蛋白は、血液中にあるタンパク質の量を測定します。血液中のタンパク質は、食事などで接種したタンパク質が消化・吸収されアミノ酸の形で血液に吸収され肝臓で合成されます。血液中のタンパク質は、アルブミンとグロブリンに分かれ、グロブリンはさらにα1グロブリン・α2グロブリン・βグロブリン・γグロブリンの4種類に分ける事ができます。総蛋白を測定する事で栄養状態を知ることができるほか、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、慢性肝炎、肝硬変、慢性炎症、膠原(こうげん)病、悪性腫瘍(しゅよう)などの診断にも用いられます。

総蛋白(TP)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
総蛋白 TP 6.5~8.2 g/dl
 

総蛋白(TP)検査の目的

血漿蛋白は血漿中の約8%を占め、アミノ酸などの多種類の蛋白成分から成り立っており、その全てあわせたタンパク質量を総蛋白(TP)といいます。総蛋白はアルブミン60%とγグロブリン20%が大部分を占めており、γグロブリンは、TPの増減に影響を与えています。総蛋白の増加要因のほとんどは、多クローン性および単クローン性のγ-グロブリンの増加を反映しています。一方、総蛋白の減少要因は、アルブミンの低下によるものが多く、アルブミンの多くは肝細胞で合成されるため、栄養不良や肝障害による合成の低下を示します。また、腎疾患・胃腸疾患・滲出性疾患・体腔液の排除などによる体外への喪失なども反映しています。慢性消耗性疾患、甲状腺機能亢進症などの蛋白異化亢進が原因の場合、蛋白合成低下、漏出あるいは血液濃縮などの際に起こる多くの病態の把握に用いられ、スクリニング検査および診断の用いられます。

 

総蛋白(TP)の検査結果からわかる病気

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 肝硬変、慢性肝炎、慢性炎症、脱水症、M蛋白血症、多発性骨髄腫、膠原病、マクログロブリン血症、悪性腫瘍
基準値より低値 吸収不良症候群、栄養不良状態、ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症、重症肝障害

 【備考】
総蛋白(TP)の増加・減少は、アルブミンとγグロブリンの増減の影響を受けます。アルブミンの場合、脱水症以外において増加することはほとんどなく、そのためアルブミンの減少が総蛋白に影響を与え、γグロブリンの場合は感染症などによる増加が総蛋白の値に影響を与えます。総蛋白が増加している場合は、脱水によるアルブミンの増加を除けばγグロブリンの増加が疑われ、総蛋白の減少はアルブミンの減少が疑われます。

【関連項目】
総ビリルビン直接型ビリルビンアルブミンコリンエステラーゼチモール混濁試験硫酸亜鉛混濁試験AST(GOT)
ALT(GPT)γ-GTPアルカリフォスファターゼロイシンアミノペプチターゼ乳酸脱水素酵素インドシアニン・グリーンアンモニア総コレステロールB型肝炎ウイルス表面蛋白抗原C型肝炎ウイルス核酸定性C型肝炎ウイルス核酸定量
 
 

病気・疾患による総蛋白(TP)値の変動

血液検査で測定されるビリルビンには総ビリルビン、直接ビリルビン、間接ビリルビン3つの項目がありますが、肝細胞での処理が終わったグルクロン酸結合型ビリルビンを直接ビリルビン、肝細胞に取り込まれる前のビリルビンを間接ビリルビン、これらの合計を総ビリルビンと言います血液中のビリルビンが増加すると眼や皮膚が黄色くなりますが、これを黄疸といいます。また、ビリルビンは尿中にも排泄されますので、黄疸出現時には、これにやや先行して尿の色が褐色調に変化します。ビリルビンが高値となる(すなわち黄疸が出現する)病態は、表のように分類されますが、以下に簡単に解説します。

総蛋白(TP)値の上昇|脱水症

脱水症の場合、血液が濃縮されるために総蛋白がみかけ上高い値となります。

総蛋白(TP)値の上昇|肝疾患

慢性肝炎などのように、免疫グロブリンが増加する病態の場合は、総蛋白は高値を示します。但し、肝障害(特に重症肝障害)が起こるとアルブミンは肝臓で合成されることから、アルブミンの肝臓での合成能力が低下するために総蛋白は低い値を示します。

総蛋白(TP)値の低下|ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症

ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症のように、アルブミンが体外に喪失してしまうような病態があると総蛋白が低い値を示します。

総蛋白(TP)値の上昇|感染症

細菌などによる感染を起こすと、体内では防御反応として抗体が産生されます。抗体は蛋白で、γグロブリンに属するため総蛋白が高い値となります。

総蛋白(TP)値の低下|過度のダイエット、低栄養状態

ダイエット、低栄養状態のように、食事制限や食事の摂取量の不足によってアルブミンの原料となる蛋白が不足して作られなくなるために総蛋白は低い値となります。

生理的要因による総蛋白(TP)値の変動

年齢による変動

新生児の場合、成人よりも1.5g/dl程度低値を示し、加齢とともに増加して思春期には成人と同じ値となります。高齢者の場合は、やや低い値を示す傾向があります。

その他の影響による変動

採血時の体位によって変動することがあり、臥位よりも立位で高い値を示す傾向があります。また、早朝よりも夕方で高い値を示す傾向があります。その他に、運動により高い値となる傾向があります。妊娠中は低い値を示す傾向があります。

  

その他の健康診断の検査一覧

血液検査項目 血液検査結果からわかること
肥満度 肥満度(BMI)とは、体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数です。
血圧 脳卒中や心筋梗塞などの原因となる高血圧や、低血圧などを判定。測定値は、日によって、また時間によって変動するので、何回か測ることが必要。 





T-Cho 数値が高いと動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を誘発してしまう。脂や脂肪分を多くとりがちな食生活の欧米化の影響で、高い人が増加しています。
HDL-C 血管内に付着する脂肪分を取り除き、動脈効果を防ぐことから「善玉コレステロール」と言われています。低いと心筋梗塞や脳梗塞などの病気を誘発してしまいます。 
LDL-C 比重の低いリポ蛋白コレステロール。いわゆる悪玉のコレステロール。
中性脂肪 体内の脂肪の主な成分でエネルギーとして利用され、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。肥満、食べ過ぎ、飲みすぎで上昇し、動脈硬化や脂肪肝の原因になります。 



赤血球数 血液中の赤血球数を調べ、低いと貧血が疑われます。生理出血の増加や、鉄分が不足している場合も低くなることがあります。
ヘモグロビン 赤血球の成分のひとつで、主に血液中の酸素を運搬する役割を果しています。
ヘマトクリット 血液中の赤血球の容積の割合(%)を表し、低い場合は貧血の疑いがあります。
白血球数 白血球は、外部から進入した病原体を攻撃する細胞で、高いと感染症や白血病、がんなどが疑われます。外傷がある場合や喫煙、ストレス、風邪などでも上昇します。


尿

尿たんぱく 尿中に排泄されるたんぱくを調べ、腎臓病などの判定に用います。激しい運動の後、過労状態のとき、発熱時などに高くなることもあります。
尿潜血 尿中に血液が出ていないか調べます。陽性の場合、腎臓病や尿路系の炎症が疑われます。
血液 クレアチニン 筋肉内の物質からつくられ、尿から排泄されるクレアチニンの量を測り、腎臓の排泄能力をチェックします。高い場合、腎機能障害や腎不全が疑われます。
痛風
検査
尿酸 尿酸は、細胞の核の成分であるプリン体が分解してできた老廃物です。代謝異常により濃度が高くなると、一部が結晶化し、それが関節にたまると痛風になります。 




ZTT 血清に試薬を加えると混濁する反応を利用して、血液の濁りぐあいを測定します。濁りが強いと数値は高くなり、慢性肝炎や肝硬変が疑われます。
血清酵素 GOT GOTとGPTはともに肝臓に多く含まれるアミノ酸を作る酵素で、肝細胞が破壊されると血液中に漏れ、数値は高くなります。肝炎や脂肪肝、肝臓がんなど、主に肝臓病を発見する手ががりとなります。 
GPT
γーGTP アルコールに敏感に反応し、アルコール性肝障害を調べる指標となっています。 
ALP 肝臓、骨、腸、腎臓など多くの臓器に含まれている酵素で、臓器に障害があると血液中に流れ出ます。主に胆道の病気を調べる指標となります。
総たんぱく 血清中のたんぱく質の総量。高い場合は、慢性肝炎や肝硬変など、低い場合は、栄養不良や重い肝臓病が疑われます。
総ビリルビン ヘモグロビンから作られる色素で、胆汁の成分になっています。黄疸になると体が黄色くなるのはビリルビン色素が増加するためです。

尿
尿糖 尿の中に糖が出ているかを調べ、糖尿病を見つける指標のひとつとされています。陽性の場合は、糖尿病や膵炎、甲状腺の機能障害などの疑いがあります。
空腹時血糖 空腹時の血液中のブドウ糖の数値(血糖値)を調べ、糖尿病をチェックします。糖尿病の疑いがある場合は、ブドウ糖付加試験を行います。 
HbA1c 血糖検査では、血液を採取したときの値しかわかりませんが、HbA1cは120日以上血液中にあるため、長時間にわたる血糖の状態を調べることができます。糖尿病の確定診断の指標に用いられたりします。
便潜血反応 大腸や肛門からの出血に反応し、陽性の場合、大腸のがんやポリープが疑われます。