空腹時血糖とは、血液中の空腹時における血糖の濃度を示しています。

空腹時血糖値(FBS)

空腹時血糖とは、血液中の空腹時における血糖の濃度を示しています。血糖値は食事の時間や内容により大きく変動するため、検査前に食事の制限(一般的には10時間前より絶食)を実施し空腹時の血糖値を検査します。空腹時血糖値(FBS)は時点での血糖値検査のため、普段の血糖値の変動をみる事はできません。そのため、一般的にはヘモグロビンA1 cの検査を同時に或いは2次検査として行われます。ヘモグロビンA1 cは過去一ヶ月間における血糖値の平均を調べる事が出来ます。
これらの数値が基準値を大きく上回るときは、膵臓より分泌されるホルモンであるインスリンの量或いは作用が低下している可能性が考えられます。健康診断などで異常値が出た場合は症状がないからと見送らず必ず2次検査を受けるようにしましょう。

糖尿病について糖尿病の専門ページがあります。血糖値の高い方は参照してください。

空腹時血糖値(FBS)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
空腹時血糖値 FBS 70~109 mg/dl

空腹時血糖値(FBS)検査の目的

一般的に血糖を差す場合グルコースの事を差します。また、血糖値には空腹時血糖、随時血糖、そのほかにヘモグロビンA1 c等があり、この空腹時血糖は健康診断時や病院での随時血糖の後の2次検査で行われる事が多くあります。
この血糖の変動因子はインスリンやグルカゴン、コルチゾール、カテコールアミンなどがあり、この中で血糖を下げる因子はインスリンのみです。そのため、膵臓の機能低下によるインスリン分泌の低下、インスリンの作用低下等により血糖は上昇してしまいます。
空腹時血糖値で高血糖状態が見られた糖尿病の疑いがある場合は、糖負荷試験(75gグルコース糖負荷)を行います。

空腹時血糖値(FBS)の検査結果からわかる病気

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 膵疾患、心筋梗塞、外傷、巨人症、狭心症、甲状腺機能亢進症、骨折、手術、中枢神経系疾患、糖尿病、内分泌性疾患、妊娠、脳腫瘍クモ膜下出血、火傷、末端肥大症、情緒的ストレス、副腎髄質腫瘍、サイアザイド系降下症、クッシング症候群、代謝性疾患、悪性高血圧症
基準値より低値 甲状腺機能低下症、インスリノーマ、胃癌、肝疾患、高インスリン血症、小児特発性低血症、腎性糖尿、アジソン病、繊維腫及び肉腫、中枢神経疾患、食事性・機能的反応性低血糖、下垂体機能低下症、脳下垂体不全症、副腎皮質機能低下症
【備考】
検査方法:ヘキソキナーゼUV法(又は電極法)

【関連項目】 
空腹時血糖ヘモグロビンA1 cインスリンC-ペプチド

血糖調節メカニズム

インスリンの血糖降下作用は三つの経路

生命の維持に必要なブドウ糖は、ホルモンの分泌により適正範囲を維持している。これは血糖値を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンの作用によって調節されています。食事により摂取した糖などの栄養素は胃で分解され腸で吸収され血液中に入り血糖値が上昇します。血糖値が上昇するとグルコースはGLUT2トランスポーターまたはGLUT1トランスポーターを通って膵臓のランゲルハンス島β細胞に流入し、グルコキナーゼの作用によりグルコースがグルコース6リン酸になると、細胞内にカルシウムイオンの流入が起こりインスリンが放出される。インスリンの血糖降下作用は三つの経路が知られています。

  1. インスリンは肝臓でのグリコーゲン合成を促進し、糖新生とグリコーゲン分解の双方を抑制する。
  2. インスリンは骨格筋と脂肪組織でのグルコース取り込みを促進する(グルコーストランスポーターの動員による)
  3. インスリンは膵α細胞に入って直接グルカゴンの産生を抑制する。

血糖を上げるメカニズムは4つあります。

血糖値が高くなったとき血糖値を下げる(調節)するホルモンはインスリンしかない。暴飲暴食など乱れたライフスタイルや遺伝性の疾患により血糖値を下げるメカニズムがコントロールできなくなったら大変な事である。また、逆に血糖値が低い状態が続くと生命を維持するのも危ぶまれる状況に陥りそうならない為に低血糖ならない為の仕組みがあります。

  1. 血糖値が約80mg/dLを下回ると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が極端に低下する。
  2. 約65-70mg/dLに低下すると、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン、アドレナリンが大量に放出され始める。
  3. 約60-65mg/dLに低下すると、三番目の血糖値を上げるホルモン、成長ホルモンが放出される。
  4. 最後に60mg/dLをきるようになると、最後の血糖値を上げるホルモン、コルチゾールの分泌が亢進する。

血糖値の異常な低下は生命の維持危機を引き起こします。

ブドウ糖は脳などのエネルギー源でもあり、血糖値が50mg/dlを下回ると精神症状や意識消失を引き起こし、重篤な場合は死に至る事もあります。しかし、上記のような回避システムが血糖値50mg/dLにいたるのを防いでいるため、通常は意識に異常をきたすには至らない。そのかわりとして、アドレナリンが大量放出されることに伴い交感神経刺激症状があらわれ、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄の症状が出る。また、アドレナリン、ノルアドレナリンによる諸症状として、精神症状は、にらんでいるような顔つきになり、暴力をふるったり、奇声をあげたりすることがある。身体症状は心拍数や拍出量の増加、血糖と脂質の上昇、代謝の亢進、手足の冷え、呼吸が浅い、眼の奥が痛む、動悸、頻脈、狭心痛、手足の筋肉の痙攣、失神発作、月経前緊張症、手指の震えなどがある。低血糖症の症状のなかでも、細胞のエネルギー不足で起こる症状は、異常な疲労感、日中でも眠気をもよおす、集中力欠如、めまい、ふらつき、健忘症、光過敏症、甘いもの欲求などがあげられる。

逆に、管理がうまくいっていない糖尿病患者などにおいては、あまりに高血糖状態が続くため、100mg/dL前後のような普通は低血糖とはみなされないような濃度でも低血糖発作をおこしてしまう。これは脳のGLUT1トランスポーターが調整過剰になっているためである。

血糖値が高い場合に考えられる疾患

糖尿病

糖尿病(とうにょうびょう、Diabetes Mellitus: DM)は、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)が病的に高い状態をさす病名である。ひとことに血糖値が高いと言っても、無症状の状態から、著しいのどの渇き・大量の尿を排泄する状態、さらには意識障害、昏睡に至るまで様々であるが、これらをすべてまとめて、血糖値やヘモグロビンA1c値が一定の基準を超えている場合を糖尿病という。糖尿病は高血糖そのものによる症状を起こすこともあるほか、長期にわたると血中のブドウ糖が血管内皮のタンパク質と結合し、体中の微小血管が徐々に破壊されていき、目、腎臓を含む体中の様々な臓器に重大な傷害を及ぼす可能性があり、糖尿病治療の主な目的はそれら合併症を防ぐことにある。

  

その他の健康診断の検査一覧

血液検査項目 血液検査結果からわかること
肥満度 肥満度(BMI)とは、体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数です。
血圧 脳卒中や心筋梗塞などの原因となる高血圧や、低血圧などを判定。測定値は、日によって、また時間によって変動するので、何回か測ることが必要。 





T-Cho 数値が高いと動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を誘発してしまう。脂や脂肪分を多くとりがちな食生活の欧米化の影響で、高い人が増加しています。
HDL-C 血管内に付着する脂肪分を取り除き、動脈効果を防ぐことから「善玉コレステロール」と言われています。低いと心筋梗塞や脳梗塞などの病気を誘発してしまいます。 
LDL-C 比重の低いリポ蛋白コレステロール。いわゆる悪玉のコレステロール。
中性脂肪 体内の脂肪の主な成分でエネルギーとして利用され、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。肥満、食べ過ぎ、飲みすぎで上昇し、動脈硬化や脂肪肝の原因になります。 



赤血球数 血液中の赤血球数を調べ、低いと貧血が疑われます。生理出血の増加や、鉄分が不足している場合も低くなることがあります。
ヘモグロビン 赤血球の成分のひとつで、主に血液中の酸素を運搬する役割を果しています。
ヘマトクリット 血液中の赤血球の容積の割合(%)を表し、低い場合は貧血の疑いがあります。
白血球数 白血球は、外部から進入した病原体を攻撃する細胞で、高いと感染症や白血病、がんなどが疑われます。外傷がある場合や喫煙、ストレス、風邪などでも上昇します。


尿

尿たんぱく 尿中に排泄されるたんぱくを調べ、腎臓病などの判定に用います。激しい運動の後、過労状態のとき、発熱時などに高くなることもあります。
尿潜血 尿中に血液が出ていないか調べます。陽性の場合、腎臓病や尿路系の炎症が疑われます。
血液 クレアチニン 筋肉内の物質からつくられ、尿から排泄されるクレアチニンの量を測り、腎臓の排泄能力をチェックします。高い場合、腎機能障害や腎不全が疑われます。
痛風
検査
尿酸 尿酸は、細胞の核の成分であるプリン体が分解してできた老廃物です。代謝異常により濃度が高くなると、一部が結晶化し、それが関節にたまると痛風になります。 




ZTT 血清に試薬を加えると混濁する反応を利用して、血液の濁りぐあいを測定します。濁りが強いと数値は高くなり、慢性肝炎や肝硬変が疑われます。
血清酵素 GOT GOTとGPTはともに肝臓に多く含まれるアミノ酸を作る酵素で、肝細胞が破壊されると血液中に漏れ、数値は高くなります。肝炎や脂肪肝、肝臓がんなど、主に肝臓病を発見する手ががりとなります。 
GPT
γーGTP アルコールに敏感に反応し、アルコール性肝障害を調べる指標となっています。 
ALP 肝臓、骨、腸、腎臓など多くの臓器に含まれている酵素で、臓器に障害があると血液中に流れ出ます。主に胆道の病気を調べる指標となります。
総たんぱく 血清中のたんぱく質の総量。高い場合は、慢性肝炎や肝硬変など、低い場合は、栄養不良や重い肝臓病が疑われます。
総ビリルビン ヘモグロビンから作られる色素で、胆汁の成分になっています。黄疸になると体が黄色くなるのはビリルビン色素が増加するためです。

尿
尿糖 尿の中に糖が出ているかを調べ、糖尿病を見つける指標のひとつとされています。陽性の場合は、糖尿病や膵炎、甲状腺の機能障害などの疑いがあります。
空腹時血糖 空腹時の血液中のブドウ糖の数値(血糖値)を調べ、糖尿病をチェックします。糖尿病の疑いがある場合は、ブドウ糖付加試験を行います。 
HbA1c 血糖検査では、血液を採取したときの値しかわかりませんが、HbA1cは120日以上血液中にあるため、長時間にわたる血糖の状態を調べることができます。糖尿病の確定診断の指標に用いられたりします。
便潜血反応 大腸や肛門からの出血に反応し、陽性の場合、大腸のがんやポリープが疑われます。