血圧の正常値と高血圧について
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」が新しくなりました。 高血圧にも段階がある新しいガイドラインでは、高血圧をⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分けています。従来は、軽症・中等症・重症としていましたが、軽症というと誤解を与えやすいので、治療を必要とするレベルであることを明確にしたものです。 正常高値というのは、「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」という意味で、高血圧予備軍の段階です。また、(孤立性)収縮期高血圧とは、収縮期血圧だけが特に高いもので、動脈硬化の進んだ高齢者に多くみられます。血圧は低めがいい自分の血圧が正常値の範囲だと、つい安心しがちです。しかし、実際には、正常高値や正常値のレベルでも、脳卒中や心筋梗塞などを起こす例は少なくありません。 病気の発症率との関係をみても、例えば脳卒中の発症率がもっとも低いのは、ガイドラインでいうと至適血圧(収縮期血圧<120かつ拡張期血圧<80)のレベルです。そのため最近は、「血圧はできるだけ低めにコントロールするほうがいい」とされています。
自分の血圧がどのレベルかを知っておきましょう。成人における血圧値の分類(mmHg)分類収縮期血圧(最高血圧) 拡張期血圧(最低血圧)至適血圧 <120 かつ <80正常血圧 <130 かつ <85正常高値血圧 130~139 または 85~89I度高血圧 140~159 または 90~99II度高血圧 160~179 または 100~109III度高血圧 ≧180 または ≧110(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90。
収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)
心臓が収縮した時の血圧が拡張期血圧でこれを最高血圧、心臓が拡張した時の血圧が収縮期血圧で最低血圧と説明しましたがイメージがわない方も多いかもしれません。収縮期とは心臓が収縮した時のことをいいます。心臓がギューと小さくなって心房にある血液を送り出している瞬間に血圧計の水銀柱を120mm持ち上げる圧力がかかっているという事です。拡張期血圧とは心臓から血液の拍出がない拡張期の圧力の事をいいます。収縮期に出た血液を心臓近位の大動脈が膨らんでプールしこれを拡張期に収縮して送り出す際に水銀柱を80mm吹きあげる圧がかかっていることをいいます。年齢と共に血管が硬くなり柔軟さを失ってしまい血液をためられなくなってくるので、拡張期の血圧はだんだん下がる傾向があります。また、年齢がすすむと高血圧になる傾向が高く最高血圧と最低血圧の差が大きくなる方が多いです。拡張期血圧が下がると血液循環が悪くなり脳などの重要な器官への血液が十分に届けられない事もあります。正常範囲を超えて慢性的に血圧が高い状態を高血圧症、低い状態を低血圧症と呼ばれ生活習慣病のひとつです。高血圧症は心臓や血管に強い負担がかかり、また低血圧症状は、疲れが取れにくい、慢性的に体がだるい重い、耳鳴りがする・動悸や息切れがする、脳貧血で意識を失いやすいなどの症状が出やすいです。また、低血圧だからといって早起きは苦手と言われていますが、まだ医学的な根拠はなく必ずしも早起きが苦手だとは言えないらしいです。
正しい血圧の測定方法と血圧が変動する要因
血圧が正常であるかを知るには正しい測定方法を知る必要があります。ここでは血圧の測定方法について説明しています。血圧は非常にデリケートなもので、一回ごとに心臓から送り出される血圧は異なります。また、測定する姿勢や環境でも血圧の値は変化をします。正しい血圧を把握するために正しい血圧測定の手順で行いましょう。
正しい血圧測定を行うためのポイント
- 測定はいすに座って行います。
- リラックスしましょう。大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせて測定します。
- できれば同じ時間に測定しましょう。(時間帯によって血圧は変化をします。)
- 測定をするときは心臓の高さで計ります。タオルなどで高さ調節するといいでしょう。
- 上腕動脈で計りますので上腕動脈を探します。
- 腕に巻くカフには長方形のゴムの袋あり上腕動脈が中心にくるようにします。
- カフをひじから指1本分上に巻く
血圧測定結果はしっかり記録
- 紙でもパソコン(エクセル)でも何でもいいです。記録しやすいものを使います。
- できれば毎日、同じ時間に測定した結果をかきましょう。
- できれば毎日、同じ時間に測定した結果をかきましょう。
(朝の起床後1時間以内と夜の就寝前の測定をおすすめします) - 特に大きなイベント(運動会とか薬を飲んだ)なども書いておくといいでしょう。
(血圧上昇との関係もわかりやすくなります) - 記録は最大血圧(収縮期血圧)と、最小血圧(拡張期血圧)を記録しましょう。
(折れ線グラフでつないでゆくと、変化をわかりやすく見ることができます)
血圧が変動する要因
体位(姿勢で大きく血圧は変化)、 肥満(やせたひとよりも高い)、 性別( 女性は男性よりも 5 - 10mmHg 低い傾向)、 時刻(一般に夜間睡眠中が最低で午後は午前よりやや高く、く夜間は低くい)、 摂食(食後は上昇し1時間ほどで元に戻る)、運動(運動後は一般に上昇)、 入浴(適温であればわずかに低下する。熱い風呂は上昇)、アルコール摂取(適度の飲酒は低下させ、過度の飲酒は上昇させる) 、 喫煙( 喫煙は上昇)、薬剤(一部の薬剤や物質にはカフェインなどのように血圧を一時的に上昇)、気温(温暖時は低下し、寒冷時は上昇)、心理的要素(緊張や感情の動揺、ストレスは血圧を上昇)、恐怖感情(著しい恐怖などの感情を覚えると、ノルエピネフリンが分泌され上昇)、性行為(性行為を行うと内分泌系の作用により血圧は一時的に上昇し、その後は降下)、電解質(食塩中のナトリウムは血圧を上昇)
高血圧症と病気のリスク
高血圧症は、自覚症状が少なく気づかず血圧が高い状態のまま放置される事で様々な病気のリスクが高くなると言われています。まさに『沈黙の殺人者』と言われている理由はここからだと思います。年齢と共に血圧は高くなる傾向があります。また、仕事や生活環境でのストレスにタバコや食生活の生活習慣など要素も重なり徐々に高くなります。健康診断などで血圧が高いといわれても血圧以外は問題がないからといって放置をしますと脳卒中や心筋梗塞・心不全・腎不全など生死に関わる心臓・腎臓・血管に障害が出るリスクが一気に高くなります。既に医師から高血圧と診断されている方も健康診断で血圧が高めと指摘されている方も普段から血圧には注意をしてください。血圧は自宅でも簡単に測定ができますので、自宅で毎日測定される事をおすすめします。
高血圧のまま放置で動脈硬化に
私たちヒトの体の中には隅々まで血管が張り巡らされており抹消の細胞まで酸素と栄養分を届けております。血管はホースでありその中を血液が酸素や栄養分が流れています。もし、あたなの血圧が高かったら血管というホースには通常以上の圧力がかかり血管を損傷させる事もあります。これは、血管の中に流れている血球成分でもある赤血球や白血球、血小板や血漿と呼ばれる液体成分にもタンパク、糖、脂肪などが含まれていてこれらの成分が摩擦等で血管内部を傷つける事があります。血圧が低いよりも高いほうが当然血管へのダメージも大きくなり、損傷した血管にコレステロールが進入したり、傷ついた部分が硬くなり血管壁が厚くなり動脈硬化が進みます。また、高LDLコレステロール血症や、トリグリセライド(中性脂肪)が高くHDLコレステロールが低い状態があれば、比較的太い動脈でもコレステロールが血管壁内にしみ込んで蓄積したアテローム性動脈硬化が進みやすくなります。
その他の健康診断の検査一覧
血液検査項目 | 血液検査結果からわかること | ||
肥満度 | 肥満度(BMI)とは、体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数です。 | ||
血圧 | 脳卒中や心筋梗塞などの原因となる高血圧、低血圧などを判定。測定値は、日によって、また時間によって変動するので、何回か測ることが必要。 | ||
血 清 脂 質 検 査 |
T-Cho | 総コレステロールが高いと動脈硬化の原因となり、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を誘発する。脂質(油・脂)を多くとりがちな食生活の欧米化の影響で、高い人が増加しています | |
HDL-C | 血管内に付着する脂肪分を取り除き、動脈効果を防ぐことから「善玉コレステロール」と言われています。低いと心筋梗塞や心筋梗塞などの病気を誘発してしまいます。 | ||
LDL-C | 比重の低いリポ蛋白コレステロール。いわゆる悪玉のコレステロール。 | ||
中性脂肪 | 体内の脂肪の主な成分でエネルギーとして利用され、余った分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。肥満、食べ過ぎ、飲みすぎで上昇し、動脈硬化や脂肪肝の原因になります。 | ||
貧 血 な ど |
赤血球数 | 血液中の赤血球数を調べ、低いと貧血が疑われます。生理出血の増加や、鉄分が不足している場合も低くなることがあります。 | |
ヘモグロビン | 赤血球の成分のひとつで、主に血液中の酸素を運搬する役割を果しています。 | ||
ヘマトクリット | 血液中の赤血球の容積の割合(%)を表し、低い場合は貧血の疑いがあります。 | ||
白血球数 | 白血球は、外部から進入した病原体を攻撃する細胞で、高いと感染症や白血病、がんなどが疑われます。外傷がある場合や喫煙、ストレス、風邪などでも上昇します。 | ||
腎 機 能 |
尿 検 査 |
尿たんぱく | 尿中に排泄されるたんぱくを調べ、腎臓病などの判定に用います。激しい運動の後、過労状態のとき、発熱時などに高くなることもあります。 |
尿潜血 | 尿中に血液が出ていないか調べます。陽性の場合、腎臓病や尿路系の炎症が疑われます。 | ||
血液 | クレアチニン | 筋肉内の物質からつくられ、尿から排泄されるクレアチニンの量を測り、腎臓の排泄能力をチェックします。高い場合、腎機能障害や腎不全が疑われます。 |
|
痛風 検査 |
尿酸 | 尿酸は、細胞の核の成分であるプリン体が分解してできた老廃物です。代謝異常により濃度が高くなると、一部が結晶化し、それが関節にたまると痛風になります。 | |
肝 機 能 検 査 |
ZTT | 血清に試薬を加えると混濁する反応を利用して、血液の濁りぐあいを測定します。濁りが強いと数値は高くなり、慢性肝炎や肝硬変が疑われます。 | |
血清酵素 | GOT | GOTとGPTはともに肝臓に多く含まれるアミノ酸を作る酵素で、肝細胞が破壊されると血液中に漏れ、数値は高くなります。肝炎や脂肪肝、肝臓がんなど、主に肝臓病を発見する手ががりとなります。 | |
GPT | |||
γーGTP | アルコールに敏感に反応し、アルコール性肝障害を調べる指標となっています。 | ||
ALP | 肝臓、骨、小腸・大腸、腎臓など多くの臓器に含まれている酵素で、臓器に障害があると血液中に流れ出ます。主に胆道の病気を調べる指標となります。 | ||
総たんぱく | 清中のたんぱく質の総量。高い場合は、慢性肝炎や肝硬変など、低い場合は、栄養不良や重い肝臓病が疑われます。 | ||
総ビリルビン | ヘモグロビンから作られる色素で、胆汁の成分になっています。黄疸になると体が黄色くなるのはビリルビン色素が増加するためです。 | ||
糖 尿 病 |
尿糖 | 尿の中に糖が出ているかを調べ、糖尿病を見つける指標のひとつとされています。陽性の場合は、糖尿病や膵炎、甲状腺の機能障害などの疑いがあります。 | |
空腹時血糖 | 空腹時の血液中のブドウ糖の数値(血糖値)を調べ、糖尿病をチェックします。糖尿病の疑いがある場合は、ブドウ糖付加試験を行います。 | ||
HbA1c | 血糖検査では、血液を採取したときの値しかわかりませんが、HbA1cは120日以上血液中にあるため、長時間にわたる血糖の状態を調べることができます。糖尿病の確定診断の指標に用いられたりします。 | ||
便潜血反応 | 大腸や肛門からの出血に反応し、陽性の場合、大腸のがんやポリープが疑われます。 |