赤血球(RBC)血液検査は、貧血や多血症などを診断するために行われます。

赤血球(RBC)健康診断で行う血液検査

赤血球RBC)は健康診断で行われる血液検査の1つです。赤血球(RBC)には、酸素を運ぶヘモグロビン(血色素)が多く含まれています。この赤血球中に含まれるヘモグロビン量の不足、または、赤血球の数が減少した状態を貧血といいます。赤血球の数やヘモグロビン量が減少すると、血液が酸素を全身に送る機能が低下し、あらゆる臓器や組織が酸素不足となり、疲れやすい、だるい、息切れなどの貧血症状が出てきます。また、貧血とは逆に赤血球数が増えすぎると、血液の流れをわるくして血栓症などが起こりやすくなる赤血球増多症(多血症)となります。

赤血球(RBC)の役割

赤血球の役割は、酸素と二酸化炭素の運搬であります。赤血球は、通常の細胞が持つ核などの細胞内器官を捨て去っているため、細胞質は水とヘモグロビンで容積のほとんどを占め、それ以外は解糖系やペントースリン酸経路に関わる酵素、炭酸脱水酵素、グルコース、炭酸、Na+, Ca2+, K+, Cl− 等のイオンなどわずかであり、正常な赤血球の細胞質には顕微鏡観察で目に付く構造は無いのが特徴です。また、赤血球の形状は、両面中央が凹んだ円盤状の形であるが、それは同じ体積の球に比べ表面積が30-40%大きく、その大きな表面積のため赤血球は、酸素・二酸化炭素の交換が球状の場合よりも有利であると考えられている。赤血球は、毛細血管では折り曲げられたり変形したりして通過するが、球に比べて両面が凹んだ円盤状だと体積に比べ表面の赤血球細胞膜に余裕があるため、変形のひずみの力に対して細胞膜に掛かる力が少なくなると考えられている。

成熟した赤血球は、酸素分子の輸送に特化した細胞

成熟した赤血球は、通常の細胞が持つ核やミトコンドリア、リボゾーム、ゴルジ装置、小胞体などを捨て去り、酸素分子の輸送に特化した細胞であるので、細胞の運動能やタンパク・脂質の合成能を持たず、通常の細胞のようには多くのエネルギーを必要としないのも赤血球の特徴。しかし、赤血球でも ATP を用いての陽イオンの輸送や細胞膜やヘモグロビンなどの各タンパク質の維持のためにエネルギーを必要とします。赤血球が必要とするエネルギーは、グルコースを分解することで得られるが、グルコースの90%は嫌気性解糖系と呼ばれる多数の酵素による ATP合成経路である EMBDEN-MEYERHOF回路によって消費され ATP を産出する。

赤血球(RBC)の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
赤血球 RBC M 427~570
F 376~500
×10^4/μL
 

赤血球(RBC)検査の目的

赤血球(RBC)血液検査は、貧血や多血症などを診断するために行われます。貧血では、なんらかの原因によって、血中の赤血球数やヘモグロビン量が減少しています。このため、貧血の診断にはこ、赤血球を測定する血液検査が必須となります。貧血と診断された場合は、貧血の種類やその原因となっている病気について検査されることになります。

 

赤血球(RBC)検査は何を調べているのか

貧血検査では、赤血球数(RBC)、赤血球の中で鉄分を含むタンパクであるヘモグロビン濃度(Hb)、血液成分で赤血球が占める比率を示すヘマトクリット(Ht)の3つの値を調べます。赤血球を含む3つの値が正常値以下のときには貧血と診断されます。同時に、貧血の種類を分類するため平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の赤血球恒数と呼ばれる値を計算します。
男女とも1μl(=1mm3)中の赤血球数が300万個以下の場合は、明らかな貧血と診断されます。逆に貧血ほど多くはありませんが、赤血球の数が増えすぎて600~800万個になることがあります。これは多血症(赤血球増多症)と呼ばれ、血液が濃くなって流れにくくなり、血管が詰まりやすくなります。

 

赤血球(RBC)の検査結果からわかる病気

赤血球(RBC)血液検査が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 脱水、多血症、赤血球増加症など
基準値より低値 各種貧血(鉄欠乏性貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血 など)、白血病、悪性腫瘍、妊娠など
【備考】

(参考)赤血球(RBC)血液検査による疑われる疾患

サイズ MCV
(fL)
MCH
(pg)
MCHC
(%)
疑われる疾患
正球性 80~100 26~34 32~36 溶血性貧血 再生不良性貧血 白血病 感染症 悪性腫瘍 肝・腎臓疾患など
小球性 <80 ≦25 <30 低色素性貧血 鉄欠乏性貧血 鉄芽球性貧血 サラセミア症候群 無トランスフェリン血症など
大球性 >100 ≧35 ≧30 巨赤芽球性貧血 葉酸欠乏性貧血 非巨赤芽球性貧血 再生不良貧血 肝臓疾患など

赤血球やヘモグロビン量が減少する貧血は、原因によっていくつかの種類に分類されますが、前述の平均赤血球容積(MCV)と平均赤血球色素濃度(MCHC)の数値を比較することによって、それを診断することができます。

MCVが上昇しMCHCが正常

大球性正色素性貧血(悪性貧血といわれるものでビタミンB12や葉酸の不足が原因)。

MCVもMCHCも正常

正球性正色素性貧血(赤血球が脊髄で作られない再生不良性貧血、赤血球が破壊される溶血性貧血など)。

MCVもMCHCも低下

小球性低色素性貧血(鉄欠乏性貧血のことで、鉄の欠乏によって起こり、貧血の大部分を占める)。

【関連項目】 
赤血球(RBC)ヘモグロビン(Hb)ヘマトクリット(Ht)MCVMCHMCHC

日本人に多い貧血は、鉄欠乏性貧血

日本人に最も多いのは鉄欠乏性貧血で、少しからだを動かしただけで動悸がします。原因は、赤血球の材料である鉄分の不足です。過度のダイエットなどによる栄養不足や、腸からの鉄分の吸収が不十分な場合、生理の出血や子宮筋腫などの要因となります。また、胃がんや胃潰瘍、痔、尿路障害などが隠れていて、本人に気付かないうちに出血を起こしている可能性もあります。

 

赤血球(RBC)血液検査で異常がわかったら

赤血球の血液検査で異常がわかったら再検査で正確な赤血球の数値を出し、それでも赤血球数の異常があれば精密検査を受けて貧血の原因を明らかにすることが大切です。鉄欠乏性貧血なら、栄養バランスの取れた食事を心がけ、鉄分の多い食品と緑黄食野菜を日常的にとるようにしましょう。一方、著しい貧血の場合は、悪性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、白血病などの悪性の病気であることが多いため、白血球数、血小板数(この二つは赤血球数測定の際、いっしょに測定されています)、白血球分画、骨髄穿刺などの検査を行ないます。

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赤血球(RBC)の寿命は120日

 赤血球は、骨の中心部にある骨髄で造られています。骨髄には、赤色をしたゼリー状の骨髄液が満たされており、ここにある造血幹細胞が分裂することにより血球が造られます。赤血球は始め、中心部に核のある原始的な形で生まれますが、成熟する過程でヘモグロビンが生成され、核が凝縮されていきます。やがて核は外に出され、その段階で赤血球は、完全な形となり血管内に送り出されます。赤血球は、柔軟性に富んでおり、細い毛細血管を通過して全身の細胞に酸素を運搬する事ができるのですが、古くなってくると柔軟性が失われ毛細血管を通過する事ができなくなってしまいます。そのため古くなり柔軟性がなくなった赤血球は、脾臓で破壊処理されます。赤血球の寿命は約120日とされています。1日に0.8%の赤血球が処理されているので、赤血球の量を一定に保つためには、毎日赤血球が補給される必要があります。この赤血球を作る段階で鉄やビタミンB12などが不足すると、ヘモグロビンの生成がスムーズに行われなくなり貧血が起こってしまいます。

 

赤血球(RBC)の鉄はリサイクル

 脾臓で破壊された赤血球はゴミとして処理されますが、その際に赤血球に含まれるヘモグロビンはヘムとグロビンに分けられ、赤血球に含まれている鉄分は体内でリサイクルされます。そしてヘムから鉄分が取り除かれた残りの部分は、ビリルビンという黄色い物質に変えられ、肝臓に送られて胆汁となり十二指腸に排出されます。このように体内に入った鉄はなかなか排泄されず、腸管上皮の脱落、皮膚や汗、髪の毛、爪などからわずかずつしか失われません。成人男性では1日に0.5~1mg程度失われますが、女性は生理による出血があるため毎月20~30mg失われます。平均して1日1.5~2.5mgが排泄されていることになります。鉄の排泄量はごくわずかなので、健康な状態では男子で1日1mg、女性で2mgを補充すればよいということになります。また、鉄は肝臓をはじめ脾臓や骨髄にも貯蔵鉄として蓄えられています。したがって体内で鉄が不足するとまず貯蔵鉄が使用されるため、すぐに鉄が欠乏する事はありません。貧血症状が現れるということは、貯蔵鉄を使い果たしたという事になります。

 

その他の献血で行われる検査一覧

検査項目 補足説明
ALT(GPT) 肝臓に最も多く含まれる酵素です。
肝細胞が破壊されると血液中に流れ出すので、急性肝炎で最も強く上昇し、慢性肝炎や脂肪肝(肥満)などでも上昇します。激しい運動の後に一過性の上昇がみられることがあります。
AST(GOT) 心筋や肝臓に多く含まれ、骨格筋、肝臓、血球にも認められる酵素です。心筋梗塞や急性肝炎、アルコール性肝障害などで上昇します。その他運動の後に一過性の上昇がみられることがあります。
γ-GTP 肝、胆道、膵、腎などに多く含まれる酵素です。
上昇する疾患は、閉塞性黄疸、肝炎、アルコール性肝障害などです。病気がなくても、長期飲酒者では上昇することが多く、1ケ月位禁酒するとある程度正常化します。
総淡白(TP) 血清中には80種類以上の蛋白が含まれ、種々の機能を持ち、生命維持に大きな役割を果たします。その総量を総蛋白として測定しています。
アルブミン(ALB) 血清蛋白の50%以上を占めるアルブミンは、病気などで栄養が悪くなると減少するため、健康診断のスクリーニングとして大きな意味があります。
アルブミン対グロブリン比(A/G比) 血清蛋白はアルブミン(A)とグロブリン(G)に分けられ、その比率は健康な人では一定の範囲にありますが、病気によってはその比率が変化(主として減少)していきます。
コレステロール(CHOL) 血清脂質の一つで、一般に脂肪の多い食事を続けていると上昇します。また肝臓などで作られ、肝、胆道、腎、甲状腺の病気でその値が上下することがあります。
血清コレステロールが多くなると、動脈硬化を起こしやすいとされています。
赤血球数(RBC) 赤血球は、血液の主な細胞成分で、酵素を肺から各組織へ運ぶ働きを持っています。
ヘモグロビン量(Hb) 血液の赤い色は、赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)によるもので、赤血球の働きの中心となっています。
ヘマトクリット(Ht)(赤血球容積率) ヘマトクリット値は、一定の血液量に対する赤血球の割合(容積)をパーセントで表したものです。
平均赤血球容積(MCV) 赤血球1個の平均的容積、すなわち赤血球の大きさの指標となるもので、赤血球数とヘマトクリット値から算出したものです。
平均赤血球ヘモグロビン量(MCH) 赤血球1個に含まれるヘモグロビン量を平均的に表したもので、赤血球数とヘモグロビン量から算出したものです。
平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC) 赤血球の一定容積に対するヘモグロビン量の比をパーセントで表したもので、ヘモグロビン量とヘマトクリット値から算出したものです。
白血球数(WBC) 白血球は細菌などを貪食し、免疫情報を伝達しさらに免疫能を発現して生体防御にかかわっています。細菌感染症があると、一般に白血球数は増加しますが、ウイルス感染症の場合はかえって減少することもあります。
血小板数(PLT) 血小板は出血を止めるための重要な働きを持ち、この値が極端に減少する出血を起こしやすくなります。
グリコアルブミン

糖尿病の検査の一つです。過去約2週間の血糖値が低い状態が続いていると低下し、高い状態が続いていると上昇します。糖尿病では標準値より上昇します。標準値範囲内でも15.6%以上の場合は注意が必要です。

B・C型肝炎検査 受付時に結果通知を希望した方には、異常を認めた場合にのみ、献血後1ヶ月以内に親展(書簡の郵便)にて通知されるようになっています。
梅毒検査
HTLV-I抗体検査