フェリチン(FER)は、悪性腫瘍などで産生亢進がみられることがありますが、腫瘍マーカーとしての特異度は低い。

フェリチン(FER)|腫瘍マーカー

フェリチンは水溶性の鉄貯蔵蛋白で、組織中の鉄濃度により変化するため、鉄欠乏性貧血などの鉄代謝異常の指標とされます。また、肝臓、脾臓、骨髄、心臓、肺などが障害されると血中フェリチン濃度が上昇するため、炎症反応や悪性腫瘍などの腫瘍マーカーとしても使用されます。

フェリチン(FER)の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
ferritin FER M 18.6~261
F 4.0~64.2
ng/mL

フェリチン(FER)検査の目的

フェリチンは、鉄の貯蔵および血清鉄濃度の維持を行う蛋白。鉄の貯蔵状態を反映し、各種血液疾患の病態把握に有用。

フェリチン(FER)で何を調べている

フェリチンは球形のアポフェリチンの中に鉄を貯蔵する分子量約44万の可溶性蛋白である。 フェリチンの役割は鉄を細胞内に貯蔵し、トランスフェリンとの間で鉄のやり取りを行なって、血清鉄の値を適切に維持することである。一般にフェリチン1ng/mLは鉄8~10mgに相当するといわれる。現在では、臓器特異的な20種類以上のイソフェリチンが知られており、大別すると肝や脾由来の塩基性フェリチンと、胎盤などに由来する酸性フェリチンに分類される。血中フェリチン濃度低下の原因でもっとも一般的なのは鉄欠乏である。正常成人の鉄貯蔵量はおおよそ1,000mgであるが、貯蔵鉄の減少と共にフェリチンも減少する。逆に鉄過剰状態でフェリチンは増加し、フェリチン鉄が凝集して不溶性のヘモジデリンを形成する。フェリチンは慢性炎症性疾患などにみられる網内系への鉄貯留や、肝炎などの細胞破壊による血中への逸脱などにより上昇する。悪性腫瘍などでフェリチン産生亢進がみられることがあるが、腫瘍マーカーとしての感度、特異度は低い。女性は月経により鉄を失うため貯蔵鉄が少なく、フェリチン値は男性より有意に低い。しかし、加齢により上昇する傾向があり、閉経後は男性の値に近づく。なお、輸血や鉄剤投与はフェリチン値を上昇させるので留意する必要がある。

フェリチン(FER)でわかる病気

フェリチン(FER)腫瘍マーカー血液検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値   ヘモクロマトーシス、ヘモジデローシス、炎症性疾患、悪性腫瘍、肝炎、心筋梗塞、糖尿病 など
基準値より低値 鉄欠乏性貧血、消化器腫瘍、消化器潰瘍、真性多血症、ビタミンC欠乏症、妊娠 など
【備考】

女性は月経により鉄を失うため貯蔵鉄が少なく、フェリチン値は男性より有意に低い。

【関連項目】
網状赤血球数(レチクロ)、血清鉄(Fe)、総鉄結合能(TIBC)[比色法]、不飽和鉄結合能(UIBC)[比色法]、トランスフェリン(Tf)、白血球数(WBC)赤血球数(RBC)ヘモグロビン(Hb)ヘマトクリット(Ht)血小板数(PLT)