血清鉄(Fe)は、貧血の基本的な検査の一つです。鉄は赤血球のヘモグロビンを構成する元素で、欠乏すると小球性貧血をきたす。

血清鉄(Fe)

血清鉄とは、血液中にある鉄分です。この鉄分が少ない状態の事を貧血といいます。詳しく説明しますと人の体の中には約4グラムの鉄が蓄積されています。この大部分が赤血球や肝臓、脾臓、骨髄、筋肉などに分布されていまして血清中の約0.1%程度しかありません。体内の鉄は主に赤血球にあるタンパク質と結合してトランスフェリンという形で酸素を運搬する役割をしています。血清鉄の検査では、男性が64~187ug/dl、女性が40~162ug/dlが基準値となっています。

(参照)鉄について|ミネラル大辞典
    

血清鉄(Fe)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
アルブミン Alb M 54~200
F 48~154
μg/dL

血清鉄(Fe)検査の目的

血清鉄検査の検査は、貧血の病態把握を行うための基本的な検査。鉄は赤血球のヘモグロビンを構成する元素で、欠乏すると小球性貧血をきたす。

血清鉄検査で何を調べているのか?

生体内の鉄の総量はおよそ3,000~5,000mgであり、その1/3弱が鉄貯蔵蛋白であるフェリチン等と結合して主に肝などの臓器中に貯蔵されている。残りの2/3がヘモグロビン鉄として存在、血清鉄は0.1%程度である。 鉄は血色素(ヘモグロビン)を形成する重要な元素であり、通常3価(Fe3+)の化合物として食物より摂取され、胃液中の塩酸により3価の鉄イオンとして遊離され血中に運ばれる。したがって無胃酸者や低胃酸者は吸収障害により鉄欠乏性貧血になりやすい。 男性は1日におよそ1mgの鉄を失うが、月経のある女性は月経のために月に約20~30mgの鉄を失う。このため鉄貯蔵量が減少しやすく、一般的に女性には貧血が多いといわれる。またスポーツマンでは発汗中に鉄分が失われる上、過度の体動で溶血が起こるため鉄欠乏状態に陥りやすい。 通常鉄代謝状態の把握には血清鉄やトランスフェリン、フェリチン、あるいは総鉄結合能(TIBC)などを同時に測定し病態を把握する。一般にFe、TIBCと不飽和鉄結合能(UIBC)の間には、TIBC=Fe+UIBCの式が成り立つ。鉄欠乏性貧血では血清鉄が低下するが、肝でのトランスフェリン合成は亢進しUIBC、TIBCともに高値となる。鉄飽和度は低く、フェリチンは低値をとる。また真性多血症では鉄が動員されるため、貯蔵鉄が減少し血清鉄は低値になる。血清鉄高値の場合として、再生不良性貧血では骨髄内赤芽球の減少により鉄の利用低下をおこすため、鉄過剰となりフェリチンは増加する。TIBCやトランスフェリンは正常かあるいはやや低下する。鉄芽球性貧血もほぼ同様である。鉄過剰症であるヘモクロマトーシスでは鉄貯蔵量の増加により血清鉄やフェリチン、鉄飽和度が著明な増加を示す。なお血清鉄は朝高く、夕方に低下する日内変動がある。加齢変化もみられ高齢者では低くなる傾向がある。

血清鉄(Fe)の検査結果からわかる病気

血清鉄検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 ヘモクロマトーシス、急性肝炎(初期)、肝硬変、悪性貧血、鉄芽球性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、白血病
基準値より低値 腎性貧血の一部、慢性出血性貧血、糖尿病、鉄欠乏性貧血、PNHの一部、出血性貧血、甲状腺機能亢進症、感染症(急性・慢性)、悪性腫瘍、パンチ症候群、ネフローゼ症候群、膠原病、真性多血症溶血性貧血、白血病
【備考】

測定値が幅広く分布する疾患(溶血性貧血、白血病、慢性肝疾患)などではその解釈には注意が必要です。

【関連項目】 
総鉄結合能(TIBC)[比色法]、不飽和鉄結合能(UIBC)フェリチン、 トランスフェリン(Tf)、白血球数(WBC)赤血球数(RBC)ヘモグロビン濃度(Hb)ヘマトクリット値(Ht)