ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)は、肺小細胞癌において高い陽性率と特異性を示す腫瘍マーカーである。

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)|腫瘍マーカー

ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、受胎の直後から胎児の栄養膜合胞体層(胎盤の一部)で作られる。その役割は卵巣にある黄体の分解を防いで、ヒトの妊娠に重要であるプロゲステロンの産生を保たせる。hCGの別の働きに、例えば母児免疫寛容へ影響していると考えられている。早期の妊娠検査はhCGの検出や測定によるものである。hCGは237のアミノ酸からなる36.7kDaの糖タンパク質であり、また、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と同一のαサブユニットと独自のβサブユニットからなるヘテロダイマーである。

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)の基準値

血液検査項目 基準値(参考値)
血液検査名称 略称 数値 単位
 pro-gastrin releasing peptide
Pro GRP 80.0以下 pg/ml

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)検査の目的

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)は、肺小細胞癌において高い陽性率と特異性を示す腫瘍マーカーである。

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)で何を調べている

 ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)は、肺小細胞癌において高い陽性率と特異性を示す腫瘍マーカーである。元来「Pro GRP」は脳・腸管ペプチドの一種であるGRP(ガストリン放出ペプチド)の前駆体を意味するが、ここで云うPro GRPとはGRP産生過程でその前駆体ペプチドの切断により等モルに血中に放出されるC-末端側フラグメントを示している。発生学上、神経内分泌細胞に起源をもつ肺小細胞癌組織よりGRPが産生されることは以前から知られているが、血中で速やかに分解されるGRPの測定は一般に困難であった。これに対して生物活性のない前駆体ペプチド断片は極めて安定であり、肺小細胞癌患者の血中での濃度比は70倍以上にも達するという。すなわち、Pro GRPは腫瘍組織におけるGRP産生のより正確な指標となる。従来肺小細胞癌のマーカーとして用いられてきた神経特異エノラーゼ(NSE)との比較では、
1. 健常者と患者との血中濃度差が大きい
 (互いの平均値に対してPro GRPで約100倍、NSEでは10倍未満とされる)
2. 比較的早期の症例でも陽性例が多い
といった特徴が挙げられる。
 なお、他の神経内分泌腫瘍として甲状腺髄様癌や膵内分泌腫瘍における有用性も示唆されている。神経芽細胞腫および褐色細胞腫ではGRP産生量が低く、測定意義は小さい。

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)でわかる病気

ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP) 腫瘍マーカー血液検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 肺小細胞癌、その他の肺癌
基準値より低値
【備考】

比較的早期の症例でも陽性例があります。

【関連項目】
神経特異エノラーゼ(NSE)SCC抗原シフラ(サイトケラチン19フラグメント)