好中球の働きと基準値

好中球(neutrophil、neutrophile)

好中球は、白血球の一種の血球成分です。健康な人の白血球の約50~70%が好中球であり、白血球の中で一番多い血液細胞になります。好中球は、1日に1000億個程度作られ大きさが12~15μmで寿命は約10時間~数日と非常に短いです。好中球の主な仕事は外部から侵入してきたウイルスや細菌から体を守る免疫です。侵入してきた細菌やウイルスに対して殺菌効果がある顆粒を作り出し分泌する事ができる顆粒球の1つになります。同じように顆粒を作り出す事ができる白血球には、好酸球好塩基球があります。好中球はアメーバみたいな運動で血管内を移動し、生体内に侵入してきたウイルスや細菌類が起こしている炎症部に集合し、ウイルス、細菌・真菌等の異物を貪食し殺菌作用があります。また、貪食されたウイルスや細菌類は、好中球の器官でもあるリソソーム(ライソゾーム)と融合することで、リソソーム内の酸素依存機序により殺菌され加水分解酵素により分解されます。好中球は、成熟の段階によって核の形状が異なり、桿状核球(杆状核球)と分葉核球に分類できます。好中球が処理し切れなかった細菌などの異物は同じ白血球の一種であるマクロファージなどが貪食し、抗原提示を行い体液性免疫を高めていきます。怪我などをした後に傷口から発生する膿は、細菌との戦いで死んだ好中球の死骸です。


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好中球の性質と特徴

好中球の形状

好中球の形状は、高精度の顕微鏡等で見る事ができます。無職透明で球状であるが核を持ち偽足を出しアメーバー運動し血液内を移動します。外部から侵入してきたウイルスや細菌に対して殺菌効果がある顆粒をを出す顆粒球であります。好中球は熟成すると分葉(細胞の核が分かれる)し、分葉した核と核は核糸で繋がっています。熟成すると細胞核を多く持つ事が多核白血球といわれることもある。大きさは、直径12~15μm程度であり、白血球の中ではリンパ球より大きく、単球マクロファージより小さいです。

骨髄の中の造血幹細胞で好中球は生成

好中球は、他の血液細胞同様に骨髄の中に存在する造血幹細胞で作られております。造血幹細胞は赤血球白血球血小板に分化をしますが、好中球に分化する場合は造血幹細胞、骨髄系幹細胞(骨髄系前駆細胞)、顆粒球・単球系前駆細胞、、顆粒球前駆細胞、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球の順に分化をし成熟していきます。さらに桿状核球を経て分葉核球へと分化をし最後の2つをもって好中球と呼びます。

好中球は遊走して細菌類を貧食する免疫システム

好中球は、外部から侵入してきたウイルスや細菌を体から守るための免疫システムです。もし、あなたの身体がウイルスや細菌に侵されると、好中球は感染した炎症部位に遊走して集まり、細菌類を貪食殺菌しはじめます。 好中球は細菌類に接触すると表面のレセプターを介して異物と認識し接着結合しはじめます。そして、結合した異物を好中球形質膜がこれを包むようにして好中球内に取り込みます。

殺菌方法は活性酸素、次亜塩素酸や加水分解酵素で消毒

好中球内に取り込まれた細菌類は、2つの手段で殺菌されます。一つは、酸素系の働きで活性酸素や過酸化水素、次亜塩素酸を発生させて殺菌します。もう一つは、顆粒から放出される加水分解酵素などで殺菌をします(種類は以下に挙げます)。好中球は特に化膿菌(ブドウ球菌、連鎖球菌、緑膿菌、大腸菌など大多数の細菌である)の殺菌に効果を発揮をし、結核菌チフス菌赤痢菌などの細胞内寄生性細菌への対処能力は限定的であります。細菌を飲み込んだ好中球はやがて死亡し、死体は膿になって体外に放出されるか、組織内のマクロファージなどにより処理されます。

好中球の顆粒と種類

アズール顆粒

アズール顆粒は、ミエロペルオキシダーゼ、カテプシンG、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、デフェンシンなどがあります。ギムザ染色などの普通染色を行った場合に塩基性色素の一種であるアズールにより染まる青紫色の顆粒をアズール顆粒と言います。正常血球の中でアズール顆粒をもっているのは、 1.顆粒球系細胞のうちとくに好中性前骨髄球、 2.単球系のうちの前単球と単球、 3.リンパ球のうちの大顆粒リンパ球、4.巨核球,血小板系です。このうち1と3では顆粒が粗大であり 、2と4では微細です。

特殊顆粒

特殊顆粒は、ラクトフェリン、リゾチーム、コラゲナーゼ、チトクリームb558、カテリジンなど中好性の小型の顆粒で、顆粒の80%を占めます。May-Giemsa染色(メチレンブルー、エオジン、アズール B の混合液)での色調によって顆粒球が分類されます。

ゼラチナーゼ顆粒

ゼラチナーゼ顆粒は、ゼラチナーゼ、リゾチーム、ロイコリジンなどがあります。 生物がゼラチンをポリペプチド、ペプチド、アミノ酸等の成分に加水分解することを可能とする酵素です。細胞膜を通り抜けることがでます。ペプシンとは異なります。ヒトでは、ゼラチナーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼMMP2及びMMP9です。

分泌顆粒(小胞)

分泌顆粒(小胞)には、補体レセプター、CD14、CD16、ホルモンペプチドレセプターなどがあります。 小胞は、細胞内にある膜に包まれた袋状の構造で、細胞中に物質を貯蔵したり、細胞内外に物質を輸送するために用いられます。代表的なものでは、液胞やリソソームがあります。小胞は、脂質膜の化学的な特性上、自然に形成される構造です。ほとんどの小胞は何かしらの特化した機能を持っており、その機能は小胞内に含まれる物質によって異なります。ただし見た目には同じ形状をしている場合もあり、小胞の内容を分析することなく見分けることが困難である場合も多いです。

好中球の基準値は40~70% 1マイクロリットル当たり2000~7500個

好中球は、普段は血液内を浮遊していたり、血管壁に張り付いていたり、脾臓や肝臓にプールされております。血液検査をしている好中球よりもプールされている好中球ははるかに多いです。体内を循環している血液1マイクロリットル当たり2000~7500個程度の好中球が含まれております。標準的な成人になると80億から300億個の好中球が常にプールされている事になります。これだけの量をプールしているのは、怪我や病気等でウイルスや細菌類に感染した時に免疫システムである好中球をすぐ動員できるようにスタンバイしています。好中球は数時間から数日と非常に寿命が短く常に造血細胞は好中球を作り出し、寿命を迎えた細胞は処分・分解されております。

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
好中球(neutrophil) neut 40~70%
(白血球百分率)

異常値からわかる病気

 好中球の検査基準値と高値、低値で見られる疾患
範囲 白血球百分率
 上昇が認められる範囲 細菌感染症、急性心筋梗塞、急性虫垂炎、自己免疫疾患(リウマチ熱、血管炎症候群)、悪性腫瘍,慢性骨髄性白血病、ストレス等
 基準値(正常の範囲)  40 ~ 70%
 低下が認められる範囲 重症感染症(敗血症、栗状結核)、腸チフス、再生不良性貧血、悪性貧血、SLE

好中球の増加と病気

血液内の好中球が増加する原因としては、感染症、炎症、急性出血、溶血、慢性骨髄性白血病、真性多血症、中毒、悪性腫瘍、尿毒、痛風、副腎皮質ステロイド投与などの理由があります。また、病気や投薬以外でも一時的な運動、食事、ストレス、喫煙などでも好中球は増加をします。これは、感染症や炎症などにより骨髄における産出の反応的な亢進であったり、副腎皮質ステロイドの投薬などにより組織への移動量が減少したり、食事や運動など血流の変化に伴う一時的な原因など理由は様々あります。

好中球が減少と病気

血液内の好中球が減少する原因としては、ウィルス感染、リケッチア感染、再生不良性貧血悪性貧血ビタミンB12欠乏葉酸欠乏急性白血病骨髄線維症、脾腫、好中球に対する自己免疫疾患、薬剤の使用などで好中球は減少することがあります。また、抗がん剤投与では顕著に減少する他、極めて多数の薬剤が好中球の減少に関係する事がわかっております。

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