マクロファージの形状と働き
マクロファージは、健康のヒトの血液中にある白血球の約5%の割合を占める血液細胞です。このマクロファージは単球が分化したもので、造血幹細胞から分化した単球は、骨髄で成熟し血流に入ると炎症の化学仲介に関わります。さらに単球は、約2日間血中に滞在した後、血管壁を通り抜けて組織内に入りマクロファージになります。組織に入ると、マクロファージは細胞内にリソソームを初めとした顆粒を増やし、消化酵素を蓄積する。マクロファージは分裂によっても増殖することができ寿命は数ヶ月であると言われています。マクロファージは進化上ではかなり早い段階から存在し、脊椎動物・無脊椎動物を問わずほぼ全ての動物に存在している。B細胞等他の白血球はマクロファージから進化しており、血管や心臓を構成する細胞とも起源は全く同じである。
NK細胞の働き
がん細胞や外部からの異物(ウイルス、細菌)を貪食し消化する細胞である。つまりNK細胞の働きをします。マクロファージは、血液中の白血球の5 %を占める単球(単核白血球)から分化し、免疫細胞の中心を担うアメーバ状の細胞です。生体内に侵入した細菌やウイルス、がん細胞をも貪食し消化する働きがあります。マクロファージには2種類の分化があり、免疫を活性化するM1マクロファージと免疫を抑制するM2マクロファージと区別されてきました。しかしながら最近では、古典的活性化マクロファージ、創傷治癒マクロファージ、抑制制マクロファージあるいはその中間的な活性化状態が存在すると考えられており、マクロファージの活性化の多様性は明らかでないです。
樹状細胞の働き
マクロファージは、樹状細胞の働きをします。貪食したがん細胞、ウイルス、細菌の抗原提示をヘルパーT細胞、Bリンパ球に行う働きがあります。マクロファージは、抗原を摂取すると、各種のサイトカインを放出し、特定のT細胞を活性化させる働きがあります。マクロファージは、食作用によって取り込み、分解した異物をいくつかの断片にし、もともと細胞内に持っていたクラスII MHC (MHC-II) と結合させ、細胞表面に表出させる。これをマクロファージによる抗原提示と呼ぶ。
食作用
マクロファージが細菌、ウイルス、死んだ細胞等の異物を取り込むことを食作用といいます。これが主要な機能であり細胞のごみ処理屋さんとでも言えばイメージがつきやすいかもしれません。この食作用の主な役割は病原体への対処と、細胞死の残骸の処理です。炎症の初期は好中球がになうが、後期になるとマクロファージが集まり死んだ細胞や細菌を食作用により処理する。マクロファージが貪食した異物は小胞(食胞、Phagosome)の形で取り込まれる。細胞内で小胞はリソソームと融合し、リソソーム中に存在する様々な加水分解酵素の作用により分解されます。
食作用の経過
a. 貪食された異物が食胞(ファゴソーム)に取り込まれる
b. 食胞はリソソームと融合しファゴリソソームを形成、異物は酵素により破壊される
c. 残渣は細胞外に排出される(あるいは消化される)
マクロファージの抗原提示
抗原提示とは、一度ウイルスや細菌などにかかり治癒すると数年経過したのち、改めて同じウイルスや細菌に感染した場合、以前より免疫力が高まっている状態をいいます。この働きを利用したものが、インフルエンザワクチン等の予防接種があります。マクロファージは抗原を取り入れると、各種のサイトカインを放出し特定のT細胞を活性化させます。マクロファージは、食作用により取り込み分解します。その分解により断片化した異物は、細胞内に存在する、クラスII MHC (MHC-II)と結合することにより細胞表面に表出させます。これをマクロファージによる抗原掲示と言います。
抗原提示のシグナルの働き
マクロファージによる抗原提示のシグナルは、T細胞のなかでもヘルパーT細胞と呼ばれるリンパ球に伝達されます。そしてヘルパーT細胞の表面には、CD4というヘルパーT細胞特有の表面タンパク質と、T細胞受容体(TCR, T-cell receptor)と呼ばれる受容体タンパク質が存在しており、それぞれがマクロファージのMHC-IIと、マクロファージによって提示された抗原と結合することによって、ヘルパーT細胞が活性化されます。T細胞受容体の構造は、そのヘルパーT細胞ごとに異なっており、マクロファージによって提示された抗原断片とぴったり合う受容体を持つヘルパーT細胞だけが活性化されます。活性化したヘルパーT細胞は、インターロイキンやリンフォカイン等のホルモン様物質(サイトカイン)を生産することでマクロファージを活性化するとともに、自分が認識するものと同じ抗原を認識するB細胞を活性化させる。活性化したB細胞は抗体産生細胞に分化して増殖し、抗原に対応する抗体を作成し、放出する。抗体は抗原に特異的に結合し抗体-抗原複合体を作ります。マクロファージはこの抗体-抗原複合体に引きつけられ、そしてこの複合体を貪食する。抗体の結合した細菌やウイルスはマクロファージにとって非常に能率よく食すことができるものとなり、この際T細胞はリンフォカインを放出するなどしてマクロファージを活性化したり、B細胞の増殖、分化を助けます。
マクロファージの活性化
マクロファージはT細胞の生産するサイトカインを受け取ることにより活性化をします。サイトカインとは抗原と接触したT細胞及び一部の他の白血球が生産する物質のことで、主な標的はマクロファージです。サイトカインは様々なタンパク質より成り、大食細胞起動要素(maf)、大食細胞遊走阻止因子 (mmif)、免疫複合物、c3b、様々なペプチド、多糖類、免疫補助等が存在します。ある種のサイトカインは単球の成熟を促進し、マクロファージを増殖させ貪食作用を活性化する、またあるものはマクロファージを集め抗原を攻撃させる。これらの働きにより炎症反応が強くあります。
罹患時における役割
マクロファージは、動物が病原体による感染から身を守る感染防御の機構において、その初期段階での殺菌を行うとともに、抗原提示によって抗体の産生を行うための最初のシグナルとして働くなど、重要な恒常性維持機構の一角を担っています。その一方で、過剰な活性化などのマクロファージ機能の異常は、免疫システムの多くの病気に関わっており、例えば、炎症壊死を起こした組織を覆い、肉芽腫を形成したり、アテローム性動脈硬化が進行する上でも重要でもあります。マクロファージの役割の1つとして、血管壁にたまった変性コレステロールの処理があるが、変性コレステロールが処理しきれないほど多く存在する場合、血管壁の下に潜りこんだまま泡沫化しその場に沈着します。これがアテローム性動脈硬化の原因といわれています。また一部の病原細菌やウイルスには、マクロファージによって貪食されても、その食作用を回避する機能を獲得しているものがあります。細菌としては、リステリア、赤痢菌、チフス菌、レジオネラ、結核菌などがその代表であります。またウイルスでは、エイズの病原体であるヒト免疫不全ウイルス (HIV) が、ヘルパーT細胞とマクロファージに感染します。マクロファージによる殺菌を免れた病原体は、その細胞内部に感染(細胞内感染)する。マクロファージ自体は強い殺菌作用を持っているが、その内部には抗体やその他の免疫による攻撃が到達しないため、病原体が感染したマクロファージは却って病原体を保存したり、全身に運んだりすることで、その病原性の発揮に関与します。例えば、チフス菌は腸管に侵入した後、腸間膜リンパ節のマクロファージに感染して血流に入り込んで、全身性の感染(菌血症)を起こす。また結核菌やHIVでは、マクロファージ内に感染した病原体は長期に亘って潜伏感染し、感染後、長時間が経過してから重篤な病状が現れます。
活性化させて病気と勝う
マクロファージによる抗原提示のシグナルは、T細胞の中でもヘルパーT細胞と呼ばれるリンパ球に伝達される。ヘルパーT細胞の表面には、CD4というヘルパーT細胞特有の表面タンパク質と、T細胞受容体(TCR, T-cell receptor)と呼ばれる受容体タンパク質が存在しており、それぞれがマクロファージのMHC-IIと、マクロファージによって提示された抗原と結合することによって、ヘルパーT細胞が活性化される。T細胞受容体の構造はそのヘルパーT細胞ごとに異なっており、マクロファージによって提示された抗原断片とぴったり合う受容体を持つヘルパーT細胞だけが活性化される。活性化したヘルパーT細胞は、インターロイキンやリンフォカイン等のホルモン様物質(サイトカイン)を生産することでマクロファージを活性化するとともに、自分が認識するものと同じ抗原を認識するB細胞を活性化させる。活性化したB細胞は抗体産生細胞に分化して増殖し、抗原に対応する抗体を作成し、放出する。抗体は抗原に特異的に結合し抗体-抗原複合体を作る。マクロファージはこの抗体-抗原複合体に引きつけられ、そしてこの複合体を貪食する。抗体の結合した細菌やウイルスはマクロファージにとって非常に能率よく食すことができるものとなる。この際T細胞はリンフォカインを放出するなどしてマクロファージを活性化したり、B細胞の増殖、分化を助ける。したがって、マクロファージ活性化療法とは、本来人間に備わった免疫システムを最大限に活性化する療法である。しかも、NK細胞療法+樹状細胞療法、両方の働きを兼ね備える治療法といえる。
マクロファージの基準値
生化学血液検査項目 | 基準値(参考値) | |||
生化学血液検査名称 | 略称 | 数値 | 単位 | |
マクロファージ | (白血球百分率) |
検査結果の判定
検査基準値と高値、低値で見られる疾患 | |
範囲 | 白血球百分率 |
上昇が認められる範囲 | |
基準値(正常の範囲) | |
低下が認められる範囲 |