リンパ球

リンパ球(Lymphocyte)の働きと基準値

リンパ球は、白血球の一種になり免疫能を担当する血液細胞です。リンパ球は、好中球よりやや小形の円い細胞で大きさは非常に小さく6~15μmです。さらに、リンパ球は大きさで分ける事ができ、6~9μmのものを小リンパ球、9~15μmのものを大リンパ球に分類する事ができます。リンパ球は、顆粒球のようにペルオキシダーゼは含みません。また、原形質は薄青色で、細胞質は少なく、核周辺は明るく、色素に核は濃く染まり、細く鋭い切れ込みがあるものが多いのが特徴です。リンパ球は、末梢血液中の白血球の中20~40%含み、血液1立方ミリメートル中に1500~2500個存在します。 リンパ球は、白血球の中で最も運動能力は低く、異物を見つけて貪食する能力はありません。同じリンパ球でも役割・機能が異なりNK細胞(ナチュラルキラー細胞)、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)と3種類あります。リンパ球は、骨髄で作られ、未熟な状態のまま産出され胸腺(T細胞)や骨髄(B細胞)などで成熟しされます。、さらにリンパ節を通り熟成・増殖をしていきます。リンパ球は、免疫機能があり自身が出す抗体(免疫グロブリン)などを使ってあらゆる異物に対して攻撃をします。特にウイルスなどの小さな異物や腫瘍細胞に対しては、顆粒球ではなくリンパ球が中心となって対応しています。 T細胞(Tリンパ球)は、体液性免疫や抗体産生に携わっています。そのT細胞をサポートするのがヘルパーT細胞です。キラーT細胞やNK細胞は、腫瘍細胞やウイルス感染細胞の破壊など細胞性免疫に携わる細胞になります。


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リンパ球の概要

 

リンパ球は、血液中を循環し組織を移動している。 骨髄や胸腺などの一次リンパ器官でリンパ球は作られ、血液循環をへてリンパ節・扁桃・粘膜関連リンパ組織などの二次リンパ器官に向かいます。血中のリンパ球は、高内皮細静脈の壁を通り抜けて組織内に入り、抗原との接触を待ち、抗原と接触しなかったリンパ球(ナイーブリンパ球)は、輸出リンパ管からリンパ系をへて再び血中に戻り、抗原との接触を待つために血液とリンパ組織間を巡り続けます。また、抗原と接触したリンパ球は、リンパ器官に補足されて、エフェクター細胞やメモリー細胞に分化した後、体循環に戻り、炎症組織へと出動します。

B細胞(Bリンパ球)

B細胞

B細胞(Bリンパ球)には、抗体(免疫グロブリン)を放出する働きを持っています。この抗体(免疫グロブリン)には、特定の分子にとりつく機能があります。①病原体を失活させる。②病原体を直接攻撃する目印となります。B細胞(Bリンパ球)は、抗体を産生するため、免疫系の中では間接攻撃の役割を担っています。また、細胞ごとに産生する抗体の種類が決まっているため、自分の抗体タイプに見合った病原体が出現した場合にのみ活性化して抗体産生を開始することになります。病原体が体内から消えた後も、適合したB細胞(Bリンパ球)の一部は記憶細胞として長く残り次回の侵入の際に素早く抗体産生が開始できるようになります。この働きは所謂「免疫が付く」(免疫記憶)という現象が起きています。この働きを利用したものが予防接種です。

B細胞(Bリンパ球)の分化過程

B細胞を始めとした全ての血球細胞は、骨髄中の造血幹細胞が分化したものであります。
B細胞/Bリンパ球の分化過程図

造血幹細胞  リンパ系幹細胞 プロB細胞 H鎖の遺伝子再構成

H鎖の遺伝子再構成完成後、

H鎖 pre-BCRシグナル↓
pre-BCRを形成 大型プレB細胞 L鎖の遺伝子再構成
SL鎖(V-preB・lambda5)          
         
        完成したL鎖はH鎖↓     
B細胞は骨髄から末梢へ IgM、IgDが発現 IgMを形成 小型プレB細胞へ分化
 ↓            
           
脾臓において成熟B細胞           

リンパ球の種類

全白血球総数の20~35%がリンパ球と言われています。リンパ球は、大きさから大リンパ球、中リンパ球、小リンパ球に分類する事ができます。主にリンパ球は、生体の免疫応答に直接関与し、非自己あるいは形質転換した細胞(腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞)に対する特異的防御に関与しています。リンパ球には、色素に濃染する核があり、小リンパ球と中リンパ球とで核や細胞質比が異なります。リンパ球は、骨髄で生まれ胸腺で成長し成熟した中からTリンパ球になるB細胞とT細胞に大別される。未熟T細胞は、骨髄から血液を介して胸腺に移動し成熟する。数百日~数年の寿命を持ち、再循環を何度も繰り返す。成熟したB細胞は骨髄から出て、血液とリンパを循環するB細胞は抗体というタンパク質を産生する。血中の抗体は非自己物質に特異的に結合する。形質細胞となってから数日で死滅する。B細胞は、抗原の存在下で抗体を産生するべく、形質細胞(プラズマ細胞、plasma cell)へと最終的に分化します。

Tリンパ球

Tリンパ球とは、骨髄で産生された前駆細胞が胸腺での選択を経て分化成熟したものです。T細胞(Tリンパ球)の「T」は胸腺 (thymus) に由来しています。T細胞(Tリンパ球)は、細胞の表面にT細胞に特徴的なT細胞受容体(T cell receptor;TCR)を発現し末梢血中のリンパ球の70〜80%を占めています。

ヘルパーT細胞

ヘルパーT細胞は、Th1という細胞はキラーT細胞やマクロファージに作用してそれを活性化して、細胞の活性を増強させる物である。 Th2は、いわゆるヘルパーT細胞と呼ばれるもので、B細胞や抗原提示細胞と協力して抗体生産を行ないます。

キラーT細胞

キラーT細胞は、細胞傷害性T細胞ともいい、ウイルスに感染した細胞や癌細胞を認識しその細胞を殺します。キラーT細胞ともいいます。以前、サプレッサーT細胞(免疫反応を抑制 (suppress)し終了に導くの意)が、一世を風靡しましたが、現在では存在自体に疑問符がつけられている。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、腫瘍細胞・ウイルス感染細胞を傷害する細胞です。自然免疫の主要因子として働く細胞傷害性リンパ球の1種で、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要な役割を示します。 T細胞との大きな違いは、事前に感作させておく必要がないということです。形態的特徴から大形顆粒リンパ球と呼ばれることもあります。 NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、T細胞受容体(TCR)、T細胞普遍的マーカーであるCD3、膜免疫グロブリンであるB細胞受容体を発現していない大型の顆粒性リンパ球であり、 通常ヒトではCD16(FcγRIII)とCD56、マウスではNK1.1/NK1.2という表面マーカーを発現しています。 NK細胞は定常状態でも活性化した細胞傷害性リンパ球に特徴的な形態(大きなサイズ、小胞体に富む細胞質、顆粒など)をしており、新たなタンパク質合成や再構成をほとんどせずに、そのままで細胞傷害性を示す。したがって迅速に応答できます。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、強い細胞傷害能があります。そのため、自己を攻撃する可能性があり、その活動は以下に上げる様々な活性シグナルにより、厳密に制御されています。

  • サイトカイン:FNα/βが活性化に必須です。これらはウイルス感染細胞から放出されるため、NK細胞にとってはウイルス性の病原体の存在を示すシグナルとなります。遍在的な活性化因子であるIL-2やIFNγもNK細胞を活性化することができます。

  • Fc受容体:NK細胞はマクロファージやその他の細胞種と同様、Fc受容体(抗体のFc部位が結合する活性化受容体)を発現しています。これにより、NK細胞は、液性免疫により感作された細胞を標的にした抗体依存性細胞傷害(ADCC)を行います。

  • 活性化受容体・抑制性受容体:NK細胞はFc受容体以外にも、細胞傷害活性を活性化したり抑制したりする様々な受容体を発現している。これらは標的細胞上の様々なリガンドに結合し、NK細胞の応答を制御するのに重要である。NK細胞がサイトカインに応答することで、感染を排除できる抗原特異的な細胞傷害性T細胞が獲得免疫応答により生じるまでの間、ウイルス感染をコントロールするのに役立つ。NK細胞を欠く患者はヘルペスウイルス感染の初期に高感受性を示す。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の受容体は、MHCクラスI分子を認識しており、これによりなぜNK細胞がMHCクラスI分子の発現が低い細胞を殺すのか説明できる。NK細胞受容体のタイプは構造的に分化している。

  • CD94:NKG2(ヘテロ二量体):齧歯類と霊長類で保存されているCタイプレクチンファミリー受容体で、HLA-Eのような非典型的(かつ非多型的)なMHC I分子を認識する。HLA-Eの細胞表面での発現は典型的(多型的)なMHCクラスI分子のリーダーペプチドの存在に依存しているため、間接的にではあるが、これは典型的HLA分子の発現量を検出する手段になっている。

  • Ly49(ホモ二量体):比較的由来の古いCタイプレクチンファミリー受容体で、マウスでは複数遺伝子があるがヒトは偽遺伝子が1つあるだけである。典型的(多型的)なMHCクラスI分子の受容体。

  • KIR(Killer cell Immunoglobulin-like Receptors):最近進化したIg様細胞外ドメインを持つ受容体の多遺伝子族に属する。霊長類では、典型的なMHCクラスI分子(HLA-A, -B, -C)と非典型的なHLA-Gの両方に対する主要な受容体である。特定のHLAサブタイプに特異的なKIRもある。

  • ILTまたはLIR(leucocyte inhibitory receptors)

    最近発見されたIg受容体ファミリーのメンバー。

NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の細胞傷害機構についてまとめてみました。NK細胞の細胞質の顆粒には、パーフォリンやグランザイムなどのタンパク質が含まれており、これが細胞傷害活性の中心的な役割を担う。パーフォリンは傷害する細胞のごく近くで放出され、細胞膜に孔を開けてグランザイムや関連分子が中に入れるようにする。グランザイムはセリンプロテアーゼであり、標的細胞の細胞質でアポトーシスを誘導する。免疫学においてアポトーシスと細胞溶解の区別は重要である。ウイルスに感染した細胞を溶解するとウイルス粒子が放出されてしまうが、アポトーシスならば内部のウイルスを破壊することができるからである。

リンパ球の血液検査結果

軽度のリンパ球減少症では特に症状が出ませんのでナカナカ気づかない事が多いです。健康診断や献血では、リンパ球の検査結果までは出ない事が多く、定期的な検査では分かりづらいです。その為、、偶然ほかの検査の時に発見されたり、重症化してから医療機関へ受診される方が多いです。リンパ球が急激に減少した場合は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染を起こしやすくなります。リンパ球が急激に減少した場合は、骨髄組織を採取して顕微鏡で観察します(骨髄生検)。Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞などリンパ球の種類別に数を調べることもできます。特定の種類のリンパ球が減少している場合は、エイズや先天性免疫不全症などの病気を診断する手がかりになります。

リンパ球の正常値 20~50%

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
リンパ球(Lymphocyte) 20-50%
(白血球百分率)

リンパ球の検査結果の判定

 リンパ球の検査基準値と高値、低値で見られる疾患
範囲 白血球百分率
 上昇が認められる範囲 ウイルス感染症、流行性耳下腺炎、慢性リンパ性白血病、百日咳など
 基準値(正常の範囲)  20~50%(白血球百分率)
 低下が認められる範囲 AIDS、SLE、うっ血性心不全、末期癌

基準値比較 リンパ球数(/μL) リンパ球に関連する疾患
基準値より多い 4,000以上 ウイルス感染症、リンパ性白血病、百日咳 他
基準値 1,500~4,000 正常
基準値より少ない 1,500未満 エイズ、全身性エリテマトーデス、うっ血性心不全など
800/μl未満で高度栄養障害

リンパ球が減少する原因と病気

血液中のリンパ球数が少ない状態をリンパ減少症といいます。リンパ球は血液中にある白血球の20〜40%を占めています。そして、健康な成人のリンパ球数の正常値は1マイクロリットルあたり1500以上、小児で3000以上です。リンパ球数が減少しても、白血球の総数が大きく変動することは普通はありませんのが特徴です。リンパ球には大きく分けて、Bリンパ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞の3種類があり、すべて免疫系で重要な働きを担っています。Bリンパ球が少なすぎると、形質細胞が減少し、抗体の産生が低下します。Tリンパ球またはナチュラルキラー細胞が少なすぎると、ウイルス、真菌、寄生虫などの感染を制御しにくくなります。重度のリンパ球減少症があると感染を制御できなくなり、命にかかわることがあります。もし血液検査でリンパ球の値が低い場合には病院に行き原因を調べてもらい早めの治療をされる事をお勧めします。

  • エイズ
  • 癌(白血病、リンパ腫、ホジキン病)
  • 慢性感染症(粟粒結核など)
  • 遺伝性疾患(ある種の無ガン、マグロブリン血症、ディ・ジョージ奇形、ヴィスコット‐オールドリッチ症候群、重症複合免疫不全症候群)、毛細血管拡張性運動失調)
  • 関節リウマチ
  • 一部のウイルス性感染症
  • 全身性エリテマトーデス

リンパ球が減少する治療方法は、原因(疾患)を特定してからになります。もし、リンパ球の増大が投薬によるものであれば、中止する事で症状は改善されるかと思います。また、原因がエイズが原因の場合は、複数種類の抗ウイルス薬を組み合わせて使用することにより、Tリンパ球が増加して生存率が向上する可能性が高くなります。リンパ球減少症はBリンパ球がほとんどないため抗体が産生されない場合には、感染予防用に抗体を多く含むガンマグロブリンを投与します。先天性免疫不全症では、骨髄(幹細胞)移植で効果が得られることがあります。感染が生じた場合は、その感染源に適した抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬を投与します。

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