マグネシウム(Mg)

マグネシウム(Mg)

マグネシウムMg)は、細胞中に多く含有するミネラル成分で、体内では半分以上がカルシウムと共に骨や歯に存在しており、残りは筋肉や神経細胞などに存在しています。マグネシウム(Mg)は成人の体内に約20~28g あり、そのうちの60~65%がリン酸マグネシウムとしてカルシウムとともに骨や歯などに、27%が筋肉内に、残りは肝臓腎臓などの組織に含まれています。血液に含まれる量は1%以下です。300以上の酵素がその活性化にマグネシウム(Mg)を必要とし、心筋や筋肉の収縮、神経の情報伝達にもかかわる必要不可欠なミネラルです。細胞の内側にマグネシウム(Mg)、外側にカルシウムが多く存在しており、カルシウムが細胞の中に出入りすることによって発生した電流でシグナルが伝えられ、筋肉の収縮に関係します。このためマグネシウムとカルシウムのバランスが崩れると筋肉が正常に動かなくなり、しびれやけいれんが起きたり高血圧心臓病の原因となったりします。また神経の興奮が抑えられなくなって、いらいら、抑うつ状態などの症状を引き起こします。マグネシウムはインスリンの分泌にも係わっているため、不足するとインスリンの感受性が低下し、高脂血症、高血圧、糖尿病などを引き起こしやすくなります。また、マグネシウム不足は活性酸素が増加するので、コレステロールが酸化され動脈硬化を促進したり、血栓ができやすくなったりもします。マグネシウムが不足するとビタミンB1が体の中で働かなくなり、疲労が蓄積します。マグネシウムが不足しても、カルシウムが不足しても一緒に骨から溶け出し、血液中の濃度を高めます。このとき、副甲状腺ホルモン(PTH)は上昇します。


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マグネシウム(Mg)検査目的

マグネシウム(Mg)の生理作用は様々なものがあります。特にマグネシウム(Mg)は、酵素やエネルギーを生成するうえで必要不可欠な成分です。従来、マグネシウム(Mg)の血液検査における高値・低値等については、特有の症状などが存在しないためあまり注目される事はありませんでした。マグネシウム(Mg)は、種々の酵素の補助因子として作用し、生体代謝調節に重要な役割を担う金属です。特に虚血性心疾患、不整脈、高血圧、脳血管障害とマグネシウム(Mg)欠乏との関係を示唆する報告が多くあります。一方、高マグネシウム(Mg)血症は腎機能障害に生じ、カルシウムをはじめとする電解質代謝に異常をきたし、腎性骨異栄養症に関与します。血清マグネシウム(Mg)は、男性が女性よりわずかに高値を示し、加齢による上昇のほか、日内・日差・季節変動も認められますが、いずれも基準範囲内に留まります。尿中マグネシウム(Mg)は、生体全体の代謝状態をよく反映しますが、人種、食習慣、飲料水などで異なります。睡眠時に減少し、午前中後半に最大となります。生体内マグネシウム(Mg)の99%は細胞内で占められます。このため、採取容易な赤血球が多く用いられます。しかし赤血球は無核のため、赤血球生産時のマグネシウム(Mg)代謝を示し検査時の状態を反映しない可能性があります。なお、マグネシウム欠乏状態ではマンガンも欠乏しやすく、このため両者を視野に入れた検索が推奨されます。

基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
マグネシウム Mg 1.8~2.4 mg/dl
 

検査で何を調べているのか

マグネシウム(Mg)は、筋肉の収縮や、神経の調整、インスリンの分泌や様々なホルモン機能などに関連を持っています。筋肉においては、不足することにより、筋肉が正常に働かなくなりしびれや痙攣等をひきおこします。また、それによる高血圧や心臓機能などにも影響が出てきます。神経への影響は、いらいらや抑うつ状態の引き金となります。インスリンは、分泌そのものに関与しているため糖尿病、脂質異常症(高脂血症)それに伴う高血圧の要因となります。そのほか、原因不明の疲労などにも関連します。これらは、マグネシウム(Mg)の低下、上昇等の影響を受けたものであるかを調べ、その要因を調べるうえで大切な検査です。

マグネシウム(Mg)の検査結果からわかる病気

マグネシウム(Mg) 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 慢性腎不全、アジソン病、ビタミンD投与、急性肝炎、急性腎不全乏尿期、甲状腺機能低下症、ミルク・アルカリ症候群、高Mg透析液使用、Mg剤過剰投与、白血病など
基準値より低値 尿細管性アシドーシス、SIADH、慢性アルコール中毒、糖尿病、高Ca血症、原発性アルドステロン症、急性膵炎、吸収不良症候群、家族性腎性Mg喪失症、利尿剤投与、慢性腎不全利尿期
【備考】

マグネシウム(Mg)は、300種類以上の酵素の働きに関連しています。そのため、特に低下することにより様々な症状が出てきます。しかし、マグネシウム(Mg)特有の症状がないため特定が難しいケースがあります。

【関連項目】 
ナトリウムカリウムクロールカルシウムマグネシウム

低マグネシウム血症 高マグネシウム血症

マグネシウム(Mg)濃度異常による症状は大きく神経・筋症状と循環器系症状に分けられます低マグネシウム(Mg)血症では心室性不整脈、高Mg血症では筋緊張の低下や呼吸抑制が起き、重篤な場合は呼吸停止・心停止に至ることがあります。低マグネシウム(Mg)血症は心不全や糖尿病肝硬変、重症下痢症状の患者にみられます。また過度な飲酒や利尿剤、ビタミンCなどの服用でも起こります。免疫抑制剤シクロスポリン内服患者では投与後10日で出現するため注意が必要です。 高マグネシウム(Mg)血症は腎機能の低下した患者がマグネシウム(Mg)含有量の多い食物を摂取した場合、あるいは制酸薬や緩下剤などマグネシウム(Mg)製剤を投与された場合に起こります。特に、酸化マグネシウム(Mg)は日常診療で最も多く処方される薬剤のひとつです。厚労省では酸化マグネシウム(Mg)製剤を長期にわたり投与する場合や意識障害などの症状があり、マグネシウム(Mg)含有薬剤の服用歴がある場合は、高Mg血症を疑って血清マグネシウム検査を行うよう通知しています。高齢者では次第に腎機能障害が生じることが少なくないため、血清マグネシウム検査をNaClなどの電解質検査と同様にルーチン検査に加えられることをお勧めします。

血中マグネシウム(Mg)の低下

慢性下痢や嘔吐、アルコールの多飲などで低値に マグネシウムは、細胞内の酵素的反応や、アミノ酸の活性化・蛋白合成に関与し、リポゾームの保全、RNAやDNAの合成反応、神経・筋における情報伝達などの働きをする電解質です。 食物中のマグネシウムの約50%は腸で吸収され、血液中にあるマグネシウムはおもに腎臓を通って尿中へ排泄されています。嘔吐や下痢を繰り返したりして腎臓からのマグネシウムの排泄が増加すると低値になります。 また、アルコールをたくさん飲むと、下痢をおこしやすくなって便中へのマグネシウムの排泄が増加し、血液中のアルコール濃度が高くなると、尿中へのマグネシウムの排泄が多くなり、低値になります。 一方、腎不全や尿毒症では、腎臓からの排泄が低下してマグネシウム値は高くなります。 とくに低値に注意 マグネシウムは、低くても高くても異常ですが、とくに低値(欠乏症)が問題になります。疲れやすい、脱力感、しびれなどを感じ、さらに低くなると筋肉のつれや収縮、ふるえなどが、また頻(ひん)脈や不整脈、妄想、不安感などが出現したりします。 筋肉や心臓、神経症状などを認め、マグネシウムが低値ならマグネシウム入りの点滴をし、その原因を明らかにするため血液検査などを追加します。

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