リパーゼ(LIPA)の基準値
生化学血液検査項目 | 基準値(参考値) | |||
生化学血液検査名称 | 略称 | 数値 | 単位 | |
血清アミラーゼ | LIPA | 7~60 | IU/l |
リパーゼ(LIPA)検査の目的
激しい腹痛など膵炎を疑う症状があった場合には、採決を行い血中リパーゼを測定します。リパーゼは、肝臓病でも若干の上昇がみられ、腎不全においても排泄が低下することにより持続的な高値を示します。リパーゼの血液検査結果が急激且つ4~5倍に上昇は急性膵炎、2~3倍に上昇且つ持続は慢性膵炎、膵臓がん、膵膿胞などの疑いがあります。激しい腹痛とともに、リパーゼを測定し異常値を示している場合に急性膵炎,慢性膵炎などの疾患を疑います。リパーゼの値が比較的高いときにはアルコール性急性膵炎を考えます。また、膵炎が回復する場合、アミラーゼが正常値に戻った後、リパーゼが正常値に戻るのが1~2週間遅れますので回復の指標になります。
リパーゼ(LIPA)の検査結果からわかる病気
検査結果 | 考えられる原因と疾患の名称 |
基準値より高値 | 腎不全、 肝硬変、 急性膵炎、 糖尿病性ケトーシス、 慢性膵炎、 膵癌、 マクロリパーゼ血症、 慢性非症候性アルコール症、 膵のう胞 急性膵炎,慢性膵炎増悪期,膵のう胞,膵癌(初期),腎不全,肝硬変,糖尿病性ケトーシス,慢性非症候性アルコール症,マクロリパーゼ血症 |
基準値より低値 | 糖尿病、 慢性膵炎非代償期、 膵癌、 急性肝壊死、 膵のう胞線維症 慢性膵炎非代償期,膵癌(膵実質の広範な破壊),膵のう胞線維症,糖尿病,急性肝壊死 |
【備考】 ヒト膵リパーゼは、膵腺房細胞で合成され膵液中に分泌される分子量約4万8千の糖蛋白質です。 血中リパーゼは膵由来で尿中には検出されません。 生理的には,トリグリセライドのα位脂肪酸エステルの加水分解を行う消化酵素として働き,膵管の狭窄・閉塞による膵液のうっ滞または膵の組織破壊が存在すれば,血中へのリパーゼの逸脱が増加する。 腹痛などの臨床症状がなく,血中膵リパーゼ値が高値の場合は他の膵酵素を測定する必要があります。 高度の高中性脂肪血症で乳び血清の場合には,アミラーゼと膵リパーゼは見かけ上低値となる場合がある。 高脂血症による急性膵炎の場合には,血中膵リパーゼが低値となることがあるので,注意を要する。 【関連項目】 血清アミラーゼ゙、リパーゼ、トリプシン、膵ホスホリパーゼA2、膵分泌性トリプシンインヒビター |
膵炎と血中リパーゼ
血中リパーゼが上昇する主な疾患として急性膵炎と慢性膵炎があります。急性膵炎とは、膵液に含まれる消化酵素が膵臓自体を消化し組織が壊死する病気です。原因には、胆石、アルコール、薬剤、高脂血症、膵癌などがあります。また、慢性膵炎は、長年にわたって炎症を繰り返しているうちに徐々に膵臓細胞が破壊され、線維化して機能が低下していく病気です。多くの場合、膵炎の診断には血清アミラーゼが測定されます。しかし、血清アミラーゼはアルコール性、特に慢性膵炎の急性増悪では上昇しにくく、また発症後の異常値持続期間が最も短く、1~2日程度で急速に低下します。さらに膵疾患以外でも異常高値となることがあり、特異度が低いという欠点があります。急性膵炎の初期診断では血清アミラーゼとともに膵特異性の高い血清リパーゼを測定します。ただし、高脂血症の場合には血清アミラーゼ、血清リパーゼが正常~低値となることがあるので注意します。
急性膵炎の発症2日以降の晩期診断には半減期の長いエラスターゼ1やトリプシンが適します。特にエラスターゼ1は発症1週間後でも異常高値を示します。膵癌ではエラスターゼ1の異常値出現率が最も高く、CA19-9やSpan-1抗原との同時測定が適しています。慢性膵炎の急性増悪時には急性膵炎と同様の膵酵素の上昇が認められますが、膵障害が進行した場合には血清トリプシンとPLA2が異常低値を示し、膵外分泌機能低下をよく反映するといわれています。一方、急性膵炎では死亡率の高い重症例を早期に識別し対応する必要があり、PLA2やトリプシンインヒビター(PSTI)は膵炎の重症度の判定に用いられます。