トリプシン(trypsin)の基準値
生化学血液検査項目 | 基準値(参考値) | |||
生化学血液検査名称 | 略称 | 数値 | 単位 | |
トリプシン | trypsin | 100~500 | ng/ml |
トリプシン検査目的
血中トリプシンの血液検査は膵臓の炎症と腫瘍、膵管の閉塞、膵臓外分泌機能の残存量などの指標となり、膵臓疾患の診断、経過観察などに利用される。膵臓には,カチオニックトリプシンと,アニオニックトリプシンおよびごく少量のメゾトリプシンが含まれている。血中トリプシンの主たるものはトリプシノーゲン(Tgn)であり,活性化されたトリプシンは,α2-マクログロブリン(α2-M)とトリプシン(T)の複合体(α2M-T)およびα1-アンチトリプシン(α1-A)との複合体(α1A-T)を形成し,トリプシン単独では血中には存在しない。又,血中にはほかに活性阻害物質(PSTI)や類似活性酵素も共存する為,酵素活性は特異的に測定できず,免疫活性で測定している。
トリプシン検査結果からわかる病気
検査結果 | 考えられる原因と疾患の名称 |
基準値より高値 | 肝炎、 腎不全、 胆道・乳頭部癌、 肝硬変、 急性膵炎、 胆石症、 慢性膵炎、 膵癌 急性膵炎,慢性膵炎増悪期,膵癌,胆石症,胆道・乳頭部癌,肝硬変,肝炎,腎不全 |
基準値より低値 | 糖尿病、 慢性膵炎、 膵癌、 膵のう胞線維症 慢性膵炎非代償期,膵癌(膵実質の広範な破壊),膵のう胞線維症,糖尿病 |
【備考】 近年では免疫クロマトグラフィー法を応用した尿迅速定性試験紙が開発され、この試験紙は、検査に要する時間がわずか5 分程度であり、急性膵炎診断での感度・特異度は血中・尿中アミラーゼより高いとされています。欧州やアジアの一部では急性膵炎のスクリーニング試薬として臨床応用されています。 【関連項目】 血清アミラーゼ゙、リパーゼ、トリプシン、膵ホスホリパーゼA2、膵分泌性トリプシンインヒビター |
検査結果が異常だった時は
腹痛発作を伴い血中トリプシンが高値の症例では、膵臓疾患の可能性が高いので他の膵酵素測定と腹部US,CT,MRCPなどの画像検査を行います。さらに,慢性膵炎増悪期や膵癌の可能性も考え,腫瘍マーカー測定やERCPを考慮しなければいけない。逆にトリプシンが異常低値を認めた場合には、慢性膵炎(膵外分泌機能不全)の可能性があるので、US、CT、膵管造影(ERP),膵外分泌機能検査(BT-PABA),耐糖能検査などを行います。