赤血球沈降速度(ERS)は、炎症や組織の崩壊などの病変のあるとき早く進むため、スクリーニングとしてよく用いられます。

赤血球沈降速度(ERS)-病院で行う血液検査

赤血球は酸素を体中の細胞に運ぶという大切な役目をしています。赤血球は骨髄の中でつくられて、約120日の役目を終えると肝臓や脾臓で壊され、様々な経路から体外に排泄されます。血液の中には赤血球や白血球、血小板といった血球成分だけでなく、水分やタンパク質など、様々な成分が入っています。 血液を一定の筒状の管に入れて立てておくと、重たい血球成分が沈殿してきます。赤血球が沈殿するスピードを赤血球沈降速度(ERS)といい、貧血や結核などの感染症、心筋梗塞、リウマチ・膠原病などの慢性炎症疾患、白血病などで沈殿するスピードが早くなり、播種性(汎発性)血管内凝固症候群(DIC)などでは遅くなります。


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赤血球沈降速度(ERS)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
赤血球沈降速度 ERS 男1- 7
女3-11
mm

赤血球沈降速度(ERS)検査の目的

赤血球沈降速度(ERS)は、炎症や組織の崩壊などの病変のあるとき早く進むため、病変の存在を知るスクリーニングとしてよく用いられます。

赤血球沈降速度(ERS)検査は何を調べているのか

赤血球沈降速度(ERS)検査は、少量の凝固防止剤を混ぜた血液を細いガラスの管に吸い上げて、これを垂直に立て時間が経つにつれて血球が沈降するためにできる上澄みの高さを測る検査法のこと。赤沈(せきちん)とも言います。炎症や組織の崩壊などの病変のあるとき早く進むため、病変の存在を知るスクリーニングとしてよく用いられます。たとえば、結核や肺炎などの感染症、心筋梗塞、白血病、紫斑病、ネフローゼ、膠原病、その他アレルギー性疾患やDICのような異常病態まで、この検査によって疑われる病気は数多くあります。

 

赤血球沈降速度(ERS)の検査結果からわかる病気

赤血球沈降速度(ERS)血液検査査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 ウイルス感染症、肺炎、敗血症、亜急性心内膜炎、結核、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス
再生不良性貧血、急性白血病、悪性リンパ腫、心筋梗塞、悪性腫瘍、ネフローゼ症候群、肝疾患他
基準値より低値 播種性血管内凝固症候群、多血症、異常ヘモグロビン症、低フィブリノゲン血症(DICなど)、遺伝性球状赤血球症(HS)、鬱血性心不全、抗炎症性薬剤の使用
【備考】

赤血球沈降速度(ERS)は、疾患の活動状況・重症度を判定するうえで重要な検査です。組織の崩壊や炎症が改善されると正常化します。

【関連項目】 
赤血球(RBC)ヘモグロビン(Hb)ヘマトクリット(Ht)MCVMCHMCHC
 

その他の血球検査項目

一般血液検査項目
備  考
白血球数 白血球は病原微生物などから体を防御するための免疫機構の主役となる血球です.炎症や感染症などの時に増加します
赤血球数
赤血球(RBC)血液検査は、貧血や多血症などを診断するために行われます。
ヘモグロビン濃度
(血色素濃度)
ヘモグロビン(血色素)は赤血球中の主成分で酸素の運搬を担うタンパク質の量.これらが基準範囲より少ない場合は貧血,多ければ多血症と診断します.
ヘマトクリット値
ヘマトクリットは血液中に占める赤血球の全容積の割合です.これらが基準範囲より少ない場合は貧血,多ければ多血症と診断します.
平均赤血球容積
赤平均赤血球容積(MCV)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
平均赤血球ヘモグロビン量 平均赤血球血色素量(MCH)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
平均赤血球ヘモグロビン濃度 平均赤血球血色素濃度(MCHC)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
血小板数 血小板は出血を止めるための重要な働きを持ち、この値が極端に減少する出血を起こしやすくなります。
網状赤血球 網状赤血球数は、赤血球全体に占める、網状赤血球の割合を示します。
抹消血液像 末梢血液像は、白血球の種類や赤血球の形、血小板の形などを染色した血液標本を顕微鏡で調べる検査です。
赤血球沈殿速度 貧血や,血漿蛋白(免疫グロブリンやフィブリノゲンなど)が増えるとき上昇します.炎症の重症度などがわかります.
出血時間 手術の際に、止血までの出血時間の検査が行なわれます。
Dダイマー 体の中のどこかに血栓ができていれば線溶現象が亢進し高い値を示します。
フィブリノゲン/フィブリン分解産物 血栓症ならびに血栓溶解治療などの病態解明や効果判定の指標として行われます。
フィブリノーゲン フィブリノーゲンの血液検査は、急性の炎症が起こったり、体のどこかの組織が破壊されていると血液中のフィブリノゲンは増減しますので、これらの異常を診断するために検査を行ないます。
アンチトロビンⅢ アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の血中濃度は生産性と消費のバランスにより左右されるため、意義として①生体内での凝固系の働き②生産状態③血栓症の病因を知ることにあります。
活性化部分トロンボプラスチン時間 プロトロンビン(PT)と同様に先天性出血性素因が疑われる場合、後天的な凝固因子の異常が疑われる場合、術前検査などとして行われます。
プロトロビン時間 プロトロンビン時間(PT)とは、組織トロンボプラスチンによる第VII因子の活性化に始まる外因系の凝固能をみる検査です。  
プロトロビン時間
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