アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は①生体内での凝固系の働き②生産状態③血栓症の病因を知ることにあります。

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)-病院で行う血液検査

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は、肝で合成されます。生理的には抗凝固剤作用を有しています。アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の血中濃度は生産性と消費のバランスにより左右されるため、意義として①生体内での凝固系の働き②生産状態③血栓症の病因を知ることが重要です。またATⅢ遺伝子は,染色体1g22-25上に存在し、先天性の場合はこの遺伝子レベルの異常により、生産が不十分な場合はATⅢ欠乏症となり、異常なATⅢを生産する場合はATⅢ異常症となる。なおATⅢの生体内半減期は健常人で65時間であるが、DICでは短縮する。生体内では血中、血管内皮、血管外にそれぞれ4:1:5の比率で分布している。

 

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
アンチトロンビンⅢ ATⅢ 79~121 %

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)検査の目的

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の血中濃度は生産性と消費のバランスにより左右されるため、意義として①生体内での凝固系の働き②生産状態③血栓症の病因を知ることにあります。

 

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)検査は何を調べているのか

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は、プロテインCやプロテインSとともに、体内の重要な凝固阻止因子です。循環血中にも存在しますが、血管内皮上のヘパリン様物質にも結合しています。アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)は肝臓で産生されるために、肝予備能が低下した場合にも血中アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)濃度は低下します。

 

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の検査結果からわかる病気

アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)血液検査査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 急性炎症、腎移植後、急性肝炎
基準値より低値

減少する疾患-〔先天性〕

アンチトロンビンⅢ欠乏症・異常症

減少する疾患-〔後天性〕

ネフローゼ症候群、手術,外傷、肝障害、播種性血管内凝固(DIC)、線溶亢進状態

【備考】

全身性血栓性素因の精査として行う血液検査

アンチトロンビン、プロテインC、プロテインS、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体抗体、 ループスアンチコアグラント、 Lp(a)、ホモシステイン

【関連項目】 
トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)
 

その他の血球検査項目

一般血液検査項目 備  考
白血球数 白血球は病原微生物などから体を防御するための免疫機構の主役となる血球です.炎症や感染症などの時に増加します
赤血球数
赤血球(RBC)血液検査は、貧血や多血症などを診断するために行われます。
ヘモグロビン濃度
(血色素濃度)
ヘモグロビン(血色素)は赤血球中の主成分で酸素の運搬を担うタンパク質の量.これらが基準範囲より少ない場合は貧血,多ければ多血症と診断します.
ヘマトクリット値
ヘマトクリットは血液中に占める赤血球の全容積の割合です.これらが基準範囲より少ない場合は貧血,多ければ多血症と診断します.
平均赤血球容積
赤平均赤血球容積(MCV)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
平均赤血球ヘモグロビン量 平均赤血球血色素量(MCH)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
平均赤血球ヘモグロビン濃度 平均赤血球血色素濃度(MCHC)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
血小板数 血小板は出血を止めるための重要な働きを持ち、この値が極端に減少する出血を起こしやすくなります。
網状赤血球 網状赤血球数は、赤血球全体に占める、網状赤血球の割合を示します。
抹消血液像 末梢血液像は、白血球の種類や赤血球の形、血小板の形などを染色した血液標本を顕微鏡で調べる検査です。
赤血球沈殿速度 貧血や,血漿蛋白(免疫グロブリンやフィブリノゲンなど)が増えるとき上昇します.炎症の重症度などがわかります.
出血時間 手術の際に、止血までの出血時間の検査が行なわれます。
Dダイマー 体の中のどこかに血栓ができていれば線溶現象が亢進し高い値を示します。
フィブリノゲン/フィブリン分解産物 血栓症ならびに血栓溶解治療などの病態解明や効果判定の指標として行われます。
フィブリノーゲン フィブリノーゲンの血液検査は、急性の炎症が起こったり、体のどこかの組織が破壊されていると血液中のフィブリノゲンは増減しますので、これらの異常を診断するために検査を行ないます。
アンチトロビンⅢ アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)の血中濃度は生産性と消費のバランスにより左右されるため、意義として①生体内での凝固系の働き②生産状態③血栓症の病因を知ることにあります。
活性化部分トロンボプラスチン時間 プロトロンビン(PT)と同様に先天性出血性素因が疑われる場合、後天的な凝固因子の異常が疑われる場合、術前検査などとして行われます。
プロトロビン時間 プロトロンビン時間(PT)とは、組織トロンボプラスチンによる第VII因子の活性化に始まる外因系の凝固能をみる検査です。  
プロトロビン時間
プロトロビン時間