腎性貧血とは、腎臓に障害が起きる事によって発生する貧血です。

腎性貧血の症状、原因、治療

腎性貧血がおこるメカニズム

   腎性貧血とは、腎臓に障害が起きる事によって発生する貧血です。腎臓は、血液に関わる重要な働きをしている臓器であり、赤血球を産生を促進させ、成熟させる働きのあるホルモンとしてエリスロポエチンが分泌されます。しかし、腎機能が低下する事により、腎臓のからのエリスロポエチンが産生されなくなり、造血機能が低下します。その為、血液中の赤血球が減少をし、酸素の輸送能力が低下する事で貧血の症状が現れます。これを腎性貧血といいます。

また、腎臓の機能低下により、低酸素を感知する感受性の低下、尿毒症による低栄養、溶血の亢進、出血傾向の出現 、透析による血液の損失などの要素が加わります。さらに腎機の機能が低下すると貧血が進行します。そのために慢性腎不全になると、ほぼ例外なく貧血になります。クレアチニンクリアランスが40ml/分以下、あるいは血清クレアチニン1.6mg/dl以上になると貧血が出てくるといわれております。

腎機能が低下
腎臓でのエリスロポエチン産生能低下
*エリスロポエチンは骨髄での赤血球産生を促す
働きがあります。
骨髄での赤血球産生低下
赤血球の不足=腎性貧血

腎性貧血の症状

 腎性貧血の症状は、通常の貧血と同様に疲れやすい、動悸・息切れ、めまいなどの症状が現れます。そして、通常の貧血同様、貧血による症状に慣れてしまうことが、発見を遅らせる原因となります。その為、自覚症状に気づくのが遅れ腎性貧血を悪化させてしまう事がありますので注意が必要です。 
 腎性貧血は、他の貧血同様に酸素の輸送能力が低下して起きる症状です。その為、全身へ供給する酸素量が減る事により、心臓は活発に動き負担も大きくなります。腎臓の機能が低下している腎性腎臓病(CKD)の方は、定期検査で行われる血液検査のヘモグロビン値で貧血かどうか分かりますので、貧血の症状が悪化する前に適切な治療をすることが大切です。 貧血には、体の鉄が不足してヘモグロビンの産生が不十分になることでおこる「鉄欠乏性貧血」がありますが、「腎性貧血」とは原因が異なり治療方法もことなります。よく貧血は鉄を補給すればよいといわれますが、腎性貧血は腎臓の機能が低下して起きる疾患である為、鉄分の不足だけで起こるものではなく、腎疾患を改善する事が重要になります。

腎性貧血の診断

 腎性貧血の診断は以下のように行われます。

①Hbの値
 一般的な貧血の診断基準値、成人男性:13.5 g/dL、成人女性:11.5 g/dLです。

②EPO(エリスロポエチン)の産生低下
 腎性貧血の原因は腎障害によるEPOの産生低下によるものです。そのため、腎性貧血の確定するために、腎性貧血以外の貧血(特に鉄欠乏性貧血など)が認められない事を確認します。通常の貧血では血中EPOの数値は上昇している事が普通です。もし、この数値が低下或いは正常範囲以内であった場合は、EPOの産生が障害されていることが高くなります。

腎性貧血で行う血液検査

検査名 正常値(基準値) 内容説明
ヘマトクリット値 男 39.8~51.8(%)
女 33.4~44.9(%)
血液中の赤血球の容積の割合(%)を表し、低い場合は貧血の疑いがあります。
血色素量 28.0~34.0 pg MCV・MCH・MCHCは貧血の種類を特定するために赤血球の形状をみる指数です。赤血球数・血色素(ヘモグロビン)量・ヘマトクリット値を使って計算します。MCV・MCH・MCHCの基準値があります。
赤血球数 男 427~570(×10^4/μL)
女 376~500(×10^4/μL)
赤血球(RBC)血液検査は、貧血を診断するために行われます。貧血では、なんらかの原因によって、血中の赤血球数やヘモグロビン量が減少しています。このため、貧血の診断にはこ、赤血球を測定する血液検査が必須となります。
男54-181
女43-172
血液中に含まれる鉄です.鉄欠乏性貧血や出血,感染症などで減少し,頻回な輸血などで鉄過剰となります.
フェリチン(貯蔵鉄) 男 18.6~261 ng/ml
女 4.0~64.2 ng/ml
フェリチンは水溶性の鉄貯蔵蛋白で、組織中の鉄濃度により変化するため、鉄欠乏性貧血などの鉄代謝異常の指標とされます。
出血凝固時間 1.0-5.0分 出血した血液が自然に固まるまでの時間を調べることによって、血液凝固に関わる血小板の機能(粘着能力と凝集能力)と毛細血管の状態がわかります。
MCV(平均赤血球容積) 85~102 fl 赤平均赤血球容積(MCV)検査は、貧血、多血症の診断に用いられる基本的な検査です。
*エリスロポエチンを投与しても貧血が改善しない時は、ビタミンB12・葉酸の検査も行います。    

腎性貧血の治療

腎性貧血の治療①:赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与。

これは、腎臓の機能低下に伴うエリスロポエチン産生低下を補うために行われます。

腎性貧血の治療②:食事療法

 これは、通常のCKD等の食事療法と同様のものが行われます。一般的にたんぱく質制限が行われますが、この食事そのものが腎性貧血発症の抑制に働きます。

腎性貧血の治療③:鉄剤投与

 鉄剤の投与は、赤血球産生促進を目的としておこなれます。

腎性貧血の治療目標

ヘモグロビン値:11g/dL~13g/dL
*13を超える場合は、心疾患等のリスクを上昇する報告があるため、休薬することもあります。
*心臓や血管などに重篤な疾患がある場合は、ヘモグロビン値12g/dL以下とし、治療薬を減薬や休薬をします。

腎性貧血の治療期間と予後

適切な治療を行えば貧血は回復します。しかしながら神経症状は貧血と比べ回復が遅く、非可逆的となることがあるため早期発見・治療が重要です。

腎性貧血の予防

 正しい食事療法のみで腎性貧血を改善することは難しいですが、適度にたんぱく質の摂取や適度な鉄分が含まれた食事をすることで少なからず予防することは可能です。エリスロポエチンの働きを効果的にするためにも、『正しい食生活』はとても大切です。カリウム、リンの摂取量に注意しながら、日頃から栄養素も摂るように気を付けましょう。