抗サイログロブリン抗体の血液検査は、橋本病、バセドウ病の診断に有用な自己抗体です。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab) -病院で行う血液検査

抗サイログロブリンは、甲状腺ホルモンの一種類です。アミノ酸のチロシンが2つ縮合し、側鎖の芳香環上に3~4個のヨード(ヨウ素)が付加したものであるが、チロシンのヨード化は、細胞内の遊離チロシンでは起こらない。濾胞上皮細胞ではサイログロブリン (チログロブリン、thyroglobulin)と呼ばれる巨大な糖蛋白質が合成され、濾胞の内腔にコロイドとして蓄積する。一方、この細胞では血中からヨードを取り込み、これも濾胞内に送り込む。濾胞内ではサイログロブリンを構成するチロシン残基ごとにヨードが1~2個付加され、ヨード化チロシン残基どうしが2つずつ縮合(エーテル重合)する。サイログロブリンは、濾胞の内腔から再び濾胞上皮細胞に取り込まれ、リソソームで消化を受け、サイログロブリン本体からヨード化されたチロシン残基が切り離される。このうち、ヨードの付加された数が3個か4個のものが甲状腺ホルモンとして血中に放出され、1個または2個のものは、分解され再利用される。甲状腺ホルモンのうち、ヨード付加が3個のものがT3、4個のものがT4である。生理活性はT4よりもT3のほうが数倍高い
 

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab) の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
antithyroglobulin antibody RF (-)陰性

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab) 検査の目的

抗サイログロブリン抗体の血液検査は、橋本病、バセドウ病の診断に有用な自己抗体。TPO抗体と同時に測定すると陽性率がアップ。

 

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab) 検査で何を調べているのか

抗サイログロブリン抗体の血液検査は、古くから間接凝集法による抗サイログロブリン抗体(TGHA)が測定されてきたが(サイロイドテスト)、最近ではより高感度のRIA法による定量測定が主流になってきている。自己免疫性甲状腺疾患が疑われる場合はTPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)を同時に測定するのが望ましい。橋本病での陽性率は75~80%、バセドウ病では50~60%くらいといわれる。びまん性の甲状腺腫を触診し硬度が固い場合は橋本病を疑い、その場合甲状腺機能亢進があればバセドウ病も考慮にいれる。

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab) の検査結果からわかる病気

抗サイログロブリン抗体(Tg-Ab)検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 バセドウ病、橋本病
基準値より低値
【備考】

関節リウマチ患者血清中に存在するリウマチ因子に特異的でありその診断や治療効果に有用である。

【関連項目】 
甲状腺刺激ホルモン(TSH)、総サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)、遊離サイロキシン(FT4)遊離トリヨードサイロニン(FT3)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-Ab)、TSH刺激性レセプター抗体(TSAb)(甲状腺刺激抗体)、TSHレセプター抗体定量(TRAb定量)、サイロイドテスト(抗サイログロブリン抗体)、マイクロゾームテスト(抗マイクロゾーム抗体)
 

その他の血球検査項目

血清血液検査項目 備  考
梅毒(脂質抗原使用) 性行為感染症(STD)として広く知られる梅毒の検査。生物学的偽陽性や治癒後の陽性持続が存在する。
梅毒(トレポネーマ抗原使用) 性行為感染症(STD)として広く知られる梅毒の検査。生物学的偽陽性や治癒後の陽性持続が存在する。
B型肝炎ウイルス表面蛋白抗原 陽性を示す事は、今この現在ウイルスに感染している事を示しています。
C型肝炎ウイルス核酸定量 HCVに感染しているか否かを調べる検査として重要な役割を持っています。
ヒト免疫不全ウイルス 抗体および抗原を同時に検出するHIV感染のスクリーニング検査
成人T細胞白血病ウイルス 成人T細胞白血病の原因ウイルスに対する抗体を検出。感染のスクリーニングと確認のための検査。
リウマチ因子 ラテックス凝集反応により、リウマチ因子を検出するスクリーニング検査。陽性でもリウマチの確定診断とはならない。
抗サイログロブリン価 橋本病、バセドウ病の診断に有用な自己抗体。TPO抗体と同時に測定すると陽性率がアップ。
抗マイクロゾーム価 甲状腺疾患の経過と予後の判定に有用。
寒冷凝集素価 マイコプラズマ肺炎でも多クローン性のIgM増加を反映し上昇する。
抗核抗体 核内に含まれる抗原物質に対する抗体群を検出する検査。抗核抗体群のいずれかの存在を知るスクリーニングとして用いられる。
免疫グロブリンE アトピー性アレルギー患者において有意に高値を示すので、気管支喘息、皮膚炎、鼻炎などの場合、アトピー要素の有無を調べるのに有用とされています。
ハブトグロビン 炎症性疾患を検査します
β-Dグルカゴン グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)、糖尿病、急性および慢性膵炎、肝硬変、腎不全、飢餓などを調べる検査になります。
カンジダ抗原 カンジダ抗原検査は、深在性真菌感染症の代表的起炎菌であるカンジダの抗原を検出する検査。