成人T細胞白血病の原因ウイルスに対する抗体を検出。感染のスクリーニングと確認のための検査。

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)-病院で行う血液検査

このウイルスは、古くから人類と共存してきたもので、主にヒトの白血球(リンパ球)に感染するウイルスの一つです。Human T-Lymphotropic Virus type I:ヒトTリンパ球向性ウイルス-Ⅰ型の略称です。日本では九州を中心とする西日本に多いことがわかっています。エイズウイルス(HIV)とは全く関係ありません。HTLV‐Ⅰ感染によって作られる抗体を検査することでウイルスの存在を知ることができます。検査法にはいくつかの種類があり、それぞれの長所と短所があるため、陽性の判定は2~3種類の方法を組み合わせる必要があります。日本赤十字社では献血された血液についてPA法(ゼラチン粒子凝集法)でスクリーニングを行い、陽性になった場合に、検査結果通知のためにEIA法(酵素免疫測定法)とIF法(間接蛍光抗体法)で確認検査を行っています。HTLV‐Ⅰ抗体陽性となった場合は、HTLV‐Ⅰに感染し、ウイルスを保有している可能性があると思われ、そのような人をキャリアといいます。日本ではおよそ120万人の方がウイルスを保有していると推計されています。HTLV‐Ⅰの感染力は極めて弱く、大量の生きたウイルス感染細胞(リンパ球)の移入がないと感染しません。しかもこのウイルス感染細胞は乾燥・熱・洗剤で簡単に死滅するため、水・衣類・食器・寝具・器具などを通して感染することはなく、蚊、銭湯でも感染しません。インフルエンザのようなくしゃみ、咳などによる飛沫感染もありません。したがって、授乳・性交渉を除く普通の生活での家族内感染や職場での感染、さらに歯の治療・はり治療・理髪などによる感染もありません。特別の配慮は必要ありません。

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
human T-cell lymphotropic virus, typeⅠantibody, screen ATLA抗体 (-)陰性

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)検査の目的

成人T細胞白血病の原因ウイルスに対する抗体を検出。感染のスクリーニングと確認のための検査。

 

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)検査で何を調べているのか

HTLV-Ⅰは、成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia; ATL)の原因ウイルスである。ヒトリンパ球DNA中にプロウイルスDNAとして組み込まれ、持続感染し、そのごく一部の患者が白血病を発症する(すべての感染者ではない)。その感染経路には、輸血等による血液の注入、母子感染(主に母乳)、性行為による感染などがあり、感染リンパ球が移行することにより感染が成立する。検査の進め方としては、検体(血清または血漿)をCLEIA法やPA法で検査し、その結果が陽性の場合は再検査により確認する。再び陽性の結果が出た場合は、その検体についてさらに蛍光抗体法またはウェスタンブロット法などで確認試験を行う。この確認検査が陽性と出たものをHTLV-Ⅰ抗体陽性と判定している。ATLの診断は、臨床像→血液像→血清学的ウイルス診断→DNA診断と進められる。献血に際しては、感染防止を目的に抗HTLV-Ⅰ抗体のスクリーニング検査が実施されている。また、母子感染の予防対策として妊婦の抗体スクリーニング検査が実施される場合もある。

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)の検査結果からわかる病気

HTLV-Ⅰ抗体(ATLA抗体)検査結果が適正範囲より大きく乖離している場合には疾患の可能性がありますので、値が乖離した原因を診療機関で医師の診察を受けるようにしてください。

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、肝硬変、慢性肝炎、急性肝炎
基準値より低値
【備考】

40才以上のHTLV-Ⅰ感染者の場合、1年間に発病する危険率は男女平均して約1,300人に1人で、HAM*の有病率は感染者の約2,000~3,000人に1人と推測されている。

【関連項目】 
RAPA(RAHA)、リウマチ因子定量、IgG型リウマチ因子、抗ガラクトース欠損IgG抗体(CA・RF)、抗DNA抗体 《PHA》、抗DNA抗体 《RIA》、抗ds DNA抗体IgG、抗ds DNA抗体IgM、免疫複合体(イムノコンプレックス)、血清補体価(CH50)、CRP 《定量》
 

その他の血球検査項目

血清血液検査項目 備  考
梅毒(脂質抗原使用) 性行為感染症(STD)として広く知られる梅毒の検査。生物学的偽陽性や治癒後の陽性持続が存在する。
梅毒(トレポネーマ抗原使用) 性行為感染症(STD)として広く知られる梅毒の検査。生物学的偽陽性や治癒後の陽性持続が存在する。
B型肝炎ウイルス表面蛋白抗原 陽性を示す事は、今この現在ウイルスに感染している事を示しています。
C型肝炎ウイルス核酸定量 HCVに感染しているか否かを調べる検査として重要な役割を持っています。
ヒト免疫不全ウイルス 抗体および抗原を同時に検出するHIV感染のスクリーニング検査
成人T細胞白血病ウイルス 成人T細胞白血病の原因ウイルスに対する抗体を検出。感染のスクリーニングと確認のための検査。
リウマチ因子 ラテックス凝集反応により、リウマチ因子を検出するスクリーニング検査。陽性でもリウマチの確定診断とはならない。
抗サイログロブリン価 橋本病、バセドウ病の診断に有用な自己抗体。TPO抗体と同時に測定すると陽性率がアップ。
抗マイクロゾーム価 甲状腺疾患の経過と予後の判定に有用。
寒冷凝集素価 マイコプラズマ肺炎でも多クローン性のIgM増加を反映し上昇する。
抗核抗体 核内に含まれる抗原物質に対する抗体群を検出する検査。抗核抗体群のいずれかの存在を知るスクリーニングとして用いられる。
免疫グロブリンE アトピー性アレルギー患者において有意に高値を示すので、気管支喘息、皮膚炎、鼻炎などの場合、アトピー要素の有無を調べるのに有用とされています。
ハブトグロビン 炎症性疾患を検査します
β-Dグルカゴン グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)、糖尿病、急性および慢性膵炎、肝硬変、腎不全、飢餓などを調べる検査になります。
カンジダ抗原 カンジダ抗原検査は、深在性真菌感染症の代表的起炎菌であるカンジダの抗原を検出する検査。