FT3はFT4に遅れて正常化するとされ、病態増悪時には逆になるためこれらの測定は病状把握に有用とされています。

遊離トリヨードサイロニン(FT3)

 トリヨードサイロニンは、甲状腺から分泌されるホルモンの1つです。主として細胞内でサイロキシンからヨードがとれて、より機能の強いトリヨードサイロニンができます。甲状腺機能の変化に応じてその血中濃度が変化するので、甲状腺機能の異常を調べる目的で検査します。高いときは、バセドウ病、甲状腺機能亢進症、甲状腺炎などが疑われます。低いときは、橋本病、甲状腺機能低下症、低栄養、肝障害などが疑われます。血中のトリヨードサイロニン(トリヨードチロニン)には、タンパク質と結合しているものと、ごく微量の結合していない遊離状態のもの(遊離トリヨードサイロニン)とがあり、遊離トリヨードサイロニンがホルモンとしてのはたらきをします。結合しているタンパク質が異常なため血中総トリヨードサイロニン濃度は高値となりますが、甲状腺機能は正常な場合があります。最近では、遊離トリヨードサイロニンが測定されるようになりました。

遊離トリヨードサイロニン(FT3)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
遊離トリヨードサイロニン FT3 2.30~4.30 pg/mL

遊離トリヨードサイロニン(FT3)検査の目的

遊離トリヨードサイロニン(FT3) 検査は、甲状腺ホルモンの一種、T3の遊離型。血中T3の大半はほとんどが蛋白と結合し活性を持たないが、本検査は生物活性を持つ遊離型を定量。

遊離トリヨードサイロニン(FT3)検査は何を調べているのか

甲状腺ホルモン(T3、T4)は血中ではほとんどが結合蛋白(主にTBG)と結合している。トリヨードサイロニン(T3)において、遊離型(FT3)は総T3のほぼ0.2~0.3%であり、遊離型のみ生理活性をもつ。また甲状腺ホルモンの中でT3は最も強い活性があります。従来はFT3自体の測定が困難でしたが、近年では容易になり、自己抗体の影響を受けない測定法も開発されています。またFT3を測定することはTBGの影響を受けないため、TBG異常症患者の甲状腺機能の把握に有用です。FT3は日内変動も小さく、食事、運動の影響も受けないので特に採血上の制約はありません。甲状腺機能亢進症の治療による寛解例では、一般にFT3はFT4に遅れて正常化するといわれています。一方病態増悪時には逆になるためこれらの測定は病状把握に有用とされています。

遊離トリヨードサイロニン(FT3)の検査結果からわかる病気

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 [FT4高値の場合]
 甲状腺機能亢進症、甲状腺ホルモン不応症
[FT4正常の場合]
 T3-トキシコーシス、甲状腺機能亢進症再発初期
基準値より低値 甲状腺機能低下症
【備考】

甲状腺疾患の詳しい内容は「甲状腺の病気・行われる検査と症状」をご覧ください。

【関連項目】 
副腎皮質刺激ホルモンコルチゾールレニン活性アルドステロン甲状腺刺激ホルモン甲状腺ホルモンFT3甲状腺ホルモンFT4副甲状腺ホルモン黄体形成ホルモン卵包刺激ホルモンインスリン
 

その他のホルモン検査一覧

ホルモン血液検査項目 備  考
副腎皮質刺激ホルモン 高値:コルチゾールが高値を示す場合:下垂体性のクッシング症候群 コルチゾールが低値:アジソン病が疑われます。
低値:コルチゾールを示す場合:副腎腫瘍によるクッシング症候群。下垂体の機能低下や、副腎皮質ホルモン薬の大量服用においても低値をしめします。
コルチゾール ストレスに関与し、過度なストレスを受けると分泌量が増加します。その反応はとても敏感であるため、ストレスホルモンとも呼ばれています。
レニン活性 PRAは、その異常な亢進または抑制が二次性高血圧症の診断に有用です。高血圧以外の電解質代謝異常症の診断にも有用です。
アルドステロン 原発性アルドステロン症などの高血圧性疾患、、浮腫疾患などの鑑別診断における重要な検査です。
甲状腺刺激ホルモン 高値
甲状腺ホルモンが低値または正常の場合は、原発性甲状腺機能低下症を、甲状腺ホルモンが高値の場合はTSH産生腫瘍や甲状腺ホルモン不応症を疑う。
低値
甲状腺ホルモンが低値の場合は二次性・三次性甲状腺機能低下症、高値の場合はバセドウ病などの甲状腺機能亢進症を疑う。
甲状腺ホルモン
FT3
FT4
甲状腺機能亢進症の治療による寛解例では、一般にFT3はFT4に遅れて正常化するといわれている。一方病態増悪時には逆になるためこれらの測定は病状把握に有用とされています。
高値の場合は、甲状腺機能亢進症か亢進を伴わない甲状腺中毒症を鑑別するためにヨード摂取率を検査が必要となります。TBG異常もチェックする必要があり、T4、あるいはT3、TBGも測定するのが望ましいとされています。
副甲状腺ホルモン カルシウムおよびリン酸代謝に関与する各臓器の機能を検査する上で重要な指標です。
黄体形成ホルモン 高値
性腺機能低下・不全症(卵巣、または精巣機能低下症、[Turner症候群、Klinefelter症候群、睾丸女性化症候群など])
低値
下垂体機能低下・不全症(下垂体機能低下症、視床下部機能低下症、神経性食欲異常症、Sheehan症候群、Simmonds症候群)
卵包刺激ホルモン 高値
卵巣、または精巣機能低下症(Turner症候群、Klinefelter症候群、睾丸女性化症候群など)
低値
下垂体機能低下症、視床下部機能低下症、神経性食欲異常症、Sheehan症候群、Simmonds症候群
インスリン インスリンは、糖代謝ならびにアミノ酸、脂質代謝などに関与する膵由来のホルモン。糖尿病の診断・病態把握、膵機能の診断に有用です。