HDLコレステロールは動脈硬化などを抑制する善玉コレステロールです。

HDLコレステロール(HDL)

HDLコレステロールとLDLコレステロールは同じコレステロールで非常に似た名前ですが、その働きは全く逆のものでHDLコレステロールを善玉コレステロール、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれています。コレステロールは脂質ですから、そのままでは血液中で水と脂のように分離してしまうことになります。そこで、血液中を流れるときには、タンパク質と結合してリポタンパク質という形で血液中のコレステロールは運搬されます。このリポタンパク質は比重によっていくつかの種類にわかれます。低比重のものをlow density lipoprotein(LDL、低比重リポタンパク)といい、高い比重のものをhigh density lipoprotein(HDL、高比重リポタンパク)といい他にもvery low density lipoprotein(VLDL、超低比重リポタンパク)、cylomicron(カイロミクロン、乳び脂球)があり4種類のリポタンパク質があります。

 

悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロール

上記で説明したとおりHDLコレステロールを善玉コレステロール、LDLコレステロールを悪玉コレステロールといいます。HDLコレステロール、LDLコレステロールこの2つのリポタンパクはまったく逆の働きをしております。HDLコレステロールは、抹消組織にある余分なコレステロールを回収して肝臓にもどすはたらきがあり血管壁へのコレステロールの沈着をおさえる働きがあるため善玉コレステロールとも呼ばれています。一般的に、HDLコレステロール値の高い人は、心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化がもたらす病気が起こりにくい傾向があります。HDLコレステロールが低下する原因としては、肥満、運動不足、糖尿病、喫煙などがあげられます。運動、食事、減量、禁煙など生活習慣を改善することが大切です。

 

HDLコレステロール(HDL)の基準値

生化学血液検査項目 基準値(参考値)
生化学血液検査名称 略称 数値 単位
HDLコレステロール HDL M 40~86
F 40~96
mg/dL
 

HDLコレステロール(HDL)検査の目的

HDLコレステロール血液検査は、健康診断や成人病検診など一般的な血液検査です。HDLコレステロールは善玉、LDLコレステロールは悪玉と言われています。その所以はHDLコレステロールは血中から肝臓へコレステロールを送る役割、それに対し、LDLコレステロールは肝臓からコレステロールを血中へ送り出す働きを持っています。そのため、LDLコレステロールは動脈硬化の要因となり、HDLコレステロールはそれらを低減させるとされています。そのため、HDLコレステロールは低下するとリスクが高まり、LDLコレステロールは上昇するとリスクが高まります。

 

HDLコレステロール(HDL)検査は何を調べているのか

HDLコレステロールは、末梢血管内から肝臓へコレステロールを送り返す重要な役割を持っています。この働きは、HDLコレステロールが抗動脈硬化作用を有していることを示しており、冠動脈疾患(CHD)の予防目的として重要であります。

その働き故に、低HDLコレステロール血症は冠動脈疾患(CHD)の主要なリスク因子の一つとなっております。HDLコレステロールは主に肝臓、腸管で合成され蛋白質、脂質ともに50%から構成されます。さらに脂質はリン脂質23%、コレステロール20%、トリグリセライド(TG)5%などから構成されています。主要なアポタンパクはアポA-Ⅰ、A-Ⅱであります。HDLコレステロールの測定はこのHDL分画中のコレステロールを測定し、HDLコレステロールの総量および組成について知るための検査です。そのため動脈硬化性疾患における危険因子の検査や脂質代謝異常が想定されるときに有用とされています。

 

HDLコレステロール(HDL)の検査結果からわかる病気

検査結果 考えられる原因と疾患の名称
基準値より高値 上昇する疾患-① 一次性 : CETP欠損症、家族性高αリポ蛋白血症(長寿症候群)
上昇する疾患-② 二次性 : アルコール多飲、原発性胆汁性肝硬変、薬物投与(インスリン・高脂血症)、閉塞性肺疾患
基準値より低値 減少する疾患-① 一次性 : Tangier病、魚眼病(fish-eye disease )、LPL欠損症、LCAT 欠損症、アポA -1 異常症
減少する疾患-② 二次性 : 肝硬変、薬物投与(サイアザイド)、ネフローゼ症候群、慢性血液透析、肥満、糖尿病、甲状腺機能異常、高リポ蛋白血症(I,II,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ型)、冠動脈硬化症、慢性腎不全
【備考】

2007年に日本動脈硬化学会から5年ぶりの改訂版が発表され、「高脂血症の診断基準」から「脂質異常症の診断基準」と名称が変更されました。 脂質異常症の診断基準では、動脈硬化性疾患リスクの高い集団をスクリーニングするために、診断基準としてLDL-コレステロールを140mg/dlとして採用し、総コレステロールについては診断基準から除去されました。

【関連項目】 
総コレステロールHDLコレステロールLDLコレステロール中性脂肪
 

HDLコレステロール値が異常であった人は生活改善が必要です

総コレステロールなど血中脂質が高い人の事を脂質異常症と呼びます。この脂質異常症は以前まで高脂血症と呼ばれていたもので血液中の脂質が高い状態の事をいいます。脂質異常症みたいに血液中の脂質が高い事は、血管内の動脈が硬くなる動脈硬化のリスクが非常に高くなると言われています。気づいたときには手遅れにならないよう日ごろから無理なく体質改善をしませんか?そんな方の為に高脂血症の専門ページを作りました。ぜひ参考にして体質改善に役立ててください。

脂質異常症(高脂血症)専用ページ

 

動脈硬化性疾患診療ガイドライン2007年

脂質異常症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血) 治療方針の原則は以下の通り

  • 高LDL-コレステロール血症:LDL-コレステロール≧140mg/dl
  • 低HDL-コレステロール血症:HDL-コレステロール<40mg/dl
  • 高トリグリセリド血症:トリグリセリド≧150mg/dl
  • 高コレステロール血症:総コレステロール≧220mg/dl
 

治療方針の原則は以下の通り

 一次予防 LDL-C以外の危険因子  LDL-C  HDL-C  TG
まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の 適応を考慮する    Ⅰ(低リスク群) 0  <160  ≧40  <150
 Ⅱ(中リスク群) 1~2 <140  ≧40  <150
 Ⅲ(高リスク群) 3以上  <120  ≧40  <150
 二次予防 LDL-C以外の危険因子  LDL-C  HDL-C  TG
 生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する  冠動脈疾患の既往  <100 ≧40   <150
【備考】
脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要がある。LDL-C値以外のリスクは、加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(<40mg/dl)
 ・糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併はカテゴリーⅢとする。
 ・家族性高コレステロール血症については別に考慮する。
 

HDLコレステロール値が低い方の生活改善紹介

HDLコレステロールを増やす方法として、習慣的な運動を行うことが進められています。また、食事においては、これ!と言った増やすための食事療法はありませんので、普段から中性脂肪を摂りすぎない、脂肪を摂りすぎないということが重要です。

 

運動でHDLコレステロールを増やす

食事で増やすことが難しいHDLコレステロールは運動が有効です。特に有酸素運動が有効であるといわれています。有酸素運動は、必ず走らなくてはならないとお思いの方多いと思いますが、必ずしもそうではなく、毎日とにかく歩くことが大切で、歩く歩数が多ければ多いほど、HDLコレステロールが増える傾向にあるといわれています。

 

食事でHDLコレステロールを増やす

現在、HDLコレステロールを増加させる食品は見つかっていません。そのため、悪玉コレステロールのLDLコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)を減らすことが重要であるといわれています。LDLコレステロールの数値が低下することで、HDLコレステロールとの比率が維持されるためです。このことにより脂質異常症の改善、そして動脈硬化の改善につながると考えられています。

そのほかにも、食物繊維をたくさん摂ることで、コレステロールの低下につながることが知られていますので、食物繊維が豊富な食品を摂ることが大切です。また、油脂の選択として植物油(特にシソ油)にはコレステロールを抑制する働きがあります。そして、DHA、EPAを多く含んだ青味の魚を摂ることもお忘れなく

 

総コレステロール値が高い方にも運動がおすすめ

適度な運動は血液中の総コレステロールや中性脂肪を減らすと同時にHDL(善玉)コレステロールを増やす効果があります。運動療法はウォーキングが最も向 いています。体への負担が少なく手軽にできる理想的な有酸素運動です。約10000歩のウォー キングで300kcalの消費を期待できます。日本人の平均的な一日の歩行数は約7000歩です。エレベーターを使わず歩くなど、歩行数を増やす心がけを!!