溶血性貧血は、生まれつきのものと後天的なものの二つのタイプに分けられます。

溶血性貧血の症状、原因、治療

溶血性貧血とは、赤血球の異常によって起きる貧血です。血球細胞の1つでもある赤血球の寿命は、120日であるが、寿命まで保てないで崩壊するために貧血の症状が起きます。溶血性貧血の原因は、先天的に球状赤血球や楕円赤血球をつくるもの、また先天的に赤血球酵素の欠乏した場合があります。後天的に赤血球抗体ができた場合、血液毒が作用した場合、心臓とか血管に異常のある場合、異常血色素症、やけどなどがあります。溶血性貧血で、もっとも多いのは遺伝的球状赤血球症と、後天的自己免疫性溶血性貧血であります。溶血性貧血とともに溶血性黄疸を併発し、先天性のものは小・中学生時代から症状が現れ、脾腫を伴い、胆石の合併が多いのが特徴性です。

先天性溶血性貧血の種類について

溶血性貧血は、生まれつきのものと後天的なものの二つのタイプに分けられます。先天性のものは、発症原因によって、赤血球の形態の障害、ヘモグロビンの異常、酵素の異常の三つに分けられます。後天性のものは、免疫系のトラブル、自己免疫性溶血貧血、赤血球破壊症候群、発作性夜間血色素尿症に分けられます。溶血性貧血には、様々な病気が隠れています。赤血球が関係しているものの他に溶血に影響を与えるものがあれば、まずは、その処置が必要になります。

先天性溶血性貧血

・鎌状赤血球症 : 血色素異常によって溶血する
・遺伝性球状赤血球症 : 膜蛋白の異常によって溶血する
・サラセミア : 血色素異常によって溶血する

後天性溶血性貧血

・自己免疫性溶血性貧血 : 自己抗体によって溶血する
・発作性夜間血色素尿症 : 造血幹細胞の異状によって溶血する
・バンチ症候群 : 脾機能の亢進によって溶血する

溶血性貧血の症状

溶血性貧血は、赤血球の異常な破壊から起こる貧血、不足してた赤血球の数が補えない状態になります。血液細胞の入れ替わりは、臓器によりその日数が異なりますが、赤血球の場合は、通常120日で入れ替わります。赤血球の破壊がひどくなることで、その入れ代わりのスピードが短くなると、不足した分を補おうとして、骨髄の造血組織が活発になります。不足分の許容範囲は、4倍から6倍とされていて、その範囲を超えて、赤血球が壊れていくと、赤血球が不足した状態になります。溶血性貧血になると黄疸症状が出てきますが、これは、赤血球のヘモグロビンは、肝臓のビリルビンという黄色の色素をした成分に変換されて、処理をされますが、赤血球が壊れるとヘモグロビンの処理数が増えてくることから、黄色の色素も増えることに、結果として増えた黄色の色素の影響で、黄疸症状が出てくることになります。

溶血性貧血による主な合併症

溶血性貧血の主な合併症は、ビリルビンの上昇により、胆石症の合併症が起こりやすくなります(ビリルビン結石)。同じ要因により、大脳核にビリルビ

溶血性貧血の診断

溶血性貧血の検査は、血液検査が最も重要です。これによって、貧血とともに、間接ビリルビンや乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇が示されれば、溶血が強く疑われます。 軽度の溶血を検出する最も鋭敏な検査所見は、血清ハプトグロビンの低下と網赤血球の増加です。赤血球に対する自己抗体を検出する検査がクームス試験です。これが陽性であれば自己免疫性溶血性貧血と診断できます。前述した赤血球破砕症候群が疑われる場合に最も重要な検査は、赤血球の形態の観察です。遺伝性溶血性貧血を診断するためには、遺伝子や蛋白の異常を生化学的に証明する必要があります。

発作性夜間血色素尿症(PHN)について

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、PIG-A遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大した結果、補体による血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患である。再生不良性貧血を代表とする造血不全疾患としばしば合併・相互移行する。血栓症は本邦例では稀ではあるが、PNHに特徴的な合併症である。

PNH赤血球では、glycosyl phosphatidylinositol(GPI)を介して膜上に結合する数種の蛋白が欠損している。補体制御蛋白もそのような蛋白の1つでありPNH赤血球で欠如しており、感染などにより補体が活性化されると、補体の攻撃を受けて溶血がおこるいる。この異常は、GPIの生合成を支配する遺伝子であるPIG-A遺伝子の変異の結果もたらされることが明らかにされた。すなわち、PNHは造血幹細胞の遣伝子に後天性に生じた変異に起因するクローン性疾患である。

PNHの症状は多彩で、ヘモグロビン尿、血栓症等PNH特有の症状と、再生不良性貧血(AA)に代表される造血不全症状の二面性を持ち合わせており、その程度とバランスは症例ごとにまちまちである。PNHに特徴的な肉眼的ヘモグロビン尿は必ずしも全症例で常に認められるわけではなく、日米比較調査によると、診断時にヘモグロビン尿を呈する症例は全体の1/3であった。PNHは汎血球減少を呈することが多く、骨髄も低形成の傾向を示しやすく、また再生不良性貧血がその経過中にPNHへの移行を示すことがある。出血傾向のほかに深部静脈血栓症や易感染性による症状にも注意が必要である。嚥下障害、男性機能不全、原因不明の腹痛等もPNHに特徴的な症状であり、これらの症状が溶血に起因している機序が明らかとなってきた。

発作性夜間血色素尿症(PHN)の血液検査と診断

発作性夜間血色素尿症(PHN)の検査

末梢血 ・汎血球減少症
・網赤血球・・・増加(進行すれば減少)
末梢血好中球アルカリホスファターゼ
(NAP)スコア
低値
血清LDH 上昇(特に1型・2型)
血清ハプトグロビン 減少
間接ビリルビン 正常値<
0.1 ~  0.8
ショ糖溶血試験 陽性
表面抗原解析 白血球にCD59、DAF欠損
Ham試験 陽性
 

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)について

自己免疫性溶血性貧血は、自身の赤血球に結合する自己抗体(蛋白)ができて、赤血球が異常に早く破壊されておこる貧血です。自己免疫性溶血性貧血には、いろいろな病型があり、原因もさまざまです。体温付近(37度)で抗体の結合が強いものを温式、4度で結合が強いものを冷式と呼びます。自己免疫性溶血性貧血は、赤血球に自己抗体が結合し,補体(蛋白)と共同して血管内で赤血球を破壊するものと、自己抗体や補体を介して主に脾臓で破壊されるものがあります。自己免疫性溶血性貧血の好発年齢は、子供から高齢者まで、幅広いです。温式自己免疫性溶血性貧血は小児期に1つの小さなピークがありますが、10~30歳の若年層(女性が優位) と50歳以後に増加し70歳代がピークの老年層(性差はない)に多く見られます。自己免疫性溶血性貧血の主な症状は、貧血の症状(だるさ、動悸、息切れ、めまい、頭痛)などです。軽い黄疸(白眼の部分や肌が黄色く見える)がみられることもあり、脾臓が腫れることもあります。慢性に経過すると胆石症を合併することも知られています。急激に赤血球が壊されると腰痛やヘモグロビン尿(濃い色の尿)がみられます。

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の血液検査と診断

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の検査

直接Coombs試験(必須の検査) 陽性
末梢血検査 ・正球性正色素性貧血
・白血球・・・正常
・血小板・・・・正常
網赤血球
男3.6-20.6
女3.6-22.0
正常値<
間接ビリルビン
0.1 ~  0.8
正常値<
0.1 ~  0.8
血清LDH
120~240 IU/l/37℃
上昇
ハプトグロブリン 低下
骨髄 赤芽球過形成
 

溶血性尿毒症症候群(HUS)について

 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)は、腎臓を主とする、血管内皮障害(血管内皮細胞障害)で起きます。HUSは、血小板減少症、溶血性貧血、急性腎不全を、3主徴とする。 腸管出血性大腸菌(EHEC)から産生されるベロ毒素は、腎臓を始めとする毛細血管内皮細胞を障害し、HUSを合併する。 HUSは、小児期では、腸管出血性大腸菌(EHEC)である、O157感染症に引き続き、発症することが多い。一般的に、O157感染症に伴うHUSは、下痢などの初発症状が発現してから、数日から2週間以内(多くは5~7日後)に、発症することが多い。典型的HUSの約90%は、下痢に引き続いて発症し、その約90%は、ベロ毒素(注1)を産生する、O157のような腸管出血性大腸菌(enterohaemorrhagic E.coli:EHEC)や志賀赤痢菌が原因で起こる。 腸管出血性大腸菌(EHEC)による腸炎(EHEC腸炎)では、産生されるベロ毒素により、大腸の腸管粘膜上皮細胞が破壊され、下痢が起こる。また、また、ベロ毒素は、腸管血管内皮細胞を障害し、腸管粘膜のびらんと腸管出血を起こし、出血性大腸炎を発症する。さらに、腎臓の糸球体血管内皮細胞が傷害され、微小血栓形成が起き、血栓性微小血管症のため、溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全を3主徴とする、HUSが起こる。 EHEC腸炎がHUSを合併する頻度は、1~10%とされている。HUSの2~5%が急性期に死亡して、HUSの5~10%が慢性腎不全に移行する。

溶血性尿毒症症候群(HUS)の血液診断と診断

溶血性尿毒症症候群(HUS)

生化学検査
・腎不全に伴う高窒素血症
・血清クレアチニン値・・・・上昇
・高K血症
・溶血性貧血に伴う血清ビリルビン高値
・血清LDH・・・・高値
・血清ハプトグロビン値・・・・低下
血液像 ・白血球数・・・・増加
・網赤血球数・・・・増加
・血小板数・・・・減少
・溶血性貧血
・赤血球破砕像
・Coombs試験・・・・陰性
凝固・線溶機能検査 FDP・・・増加
細菌学的検査 20%以下
尿検査 ・血尿
・タンパク尿
・円柱尿
・ヘモグロビン尿
 

溶血性貧血の治療

溶血性貧血は、通常よりも赤血球が壊れることから起こる貧血です。血液細胞の赤血球は通常、120日経過すると自然と壊れていきますが、何らかの原因により、その日数よりも早い段階で壊れてしまうこと。そして、壊れた赤血球の数を補う為に必要な量が骨髄の赤血球の製造過程で間に合わなくなることから起こります。溶血性貧血になると症状として、黄疸や脾臓の腫れを起こします。黄疸はそれほどひどい状態ではありません。溶血性貧血のタイプには先天的のものと後天的なものがあります。先天的なものでは、赤血球自体の構造や働きが悪くなっているもので、これは、次の世代に遺伝をします。その為、薬剤などを使用しても治癒することはないですが、脾臓を摘出した場合に、症状が軽くなる人もいます。後天的なものでは、自己の赤血球に抗体が出来る為、免疫の働きにより、壊されることからおこるものです。自己免疫性溶血性貧血と呼ばれています。この場合の治療では、ステロイドの使用や脾臓の摘出などが行われます。

溶血性貧血の治療期間と予後

慢性的な貧血が続く傾向がありますが、ほとんどの場合、生命予後には問題ありません。

溶血性貧血の予防

溶血性貧血は、血液検査により簡単に計測する事ができます。大きく「ビリルビン」「乳酸脱水素酵素(LDH)」が上昇しており、かつ貧血の症状があれば、溶血性貧血が疑われます。

溶血性貧血によい漢方薬

初期から中期にかけて使用します
十全大補湯
(じゅうぜんたいほとう)
体力が衰え、だるく疲れやすく、顔色(血色)も悪い場合に。重い貧血に用いる。
四君子湯
(しくんしとう)
比較的体力が弱く、疲れやすく、食欲不振があり、食後に眠くなるタイプに。
六君子湯
(りっくんしとう)
胃アトニータイプ(胃壁の筋肉の緊張が低下している状態)で、食欲がなく、顔色も悪い場合に。
加味帰脾湯
(かみきひとう)
体力がなく、倦怠感が強くて眠れず、気分が沈みがちで食欲がないときの貧血に。
当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん) 
女性の貧血で、ふだんから月経量が多い人や妊娠時に使う。
人参養栄湯
(にんじんようえいとう)
全身の倦怠感、貧血、食欲不振、精神不安、寝汗、便秘に効果を現します。

溶血性貧血によいサプリメント

ある研究により、EPAがリバピリンによる発症を防ぐと結果が出ています。