糖尿病の薬物療法の手段として、内服薬と注射薬があります。

糖尿病の薬物療法について

糖尿病(Ⅱ型糖尿病)の治療において、食事療法、運動療法を2~3か月継続しても血糖コントロールがうまくいかない場合に、薬物療法を開始します。使用する薬については、食事療法、運動療法の効果、肥満の程度やインスリンの分泌量などから決定します。薬物療法の注意点として、薬を決められた通りに服用することが重要であり、しっかりと管理しないと、血糖コントロールがうまくいかないどころか。血糖値が下がりすぎて低血糖を引き起こす恐れがあります。必ず、医師の処方に従って服用するようにしましょう。

糖尿病の薬物療法の種類

糖尿病の薬物療法の手段として、内服薬と注射薬があります。

糖尿病の内服薬の種類

糖尿病の内服薬は、働きにより4種類に大別する事が出来ます。その中で1種類或いは作用の異なる薬と組み合わせて服用することになります。

  • インスリンの分泌を増やす

    • スルホニル尿素薬(SU薬)

      膵臓のβ細胞(B細胞)を刺激し、インスリンの分泌を増やします。さらに、インスリンの働きを良くし、肝臓から放出されるブドウ糖の量を抑えます。
      ただし、スルホニル尿素薬はインスリンの分泌を増やすのが主な作用ですので、膵臓にインスリンを分泌する力が無いと効果を期待できません。

    • 速効型インスリン分泌促進薬

      スルホニル尿素薬(スルフォニル尿素薬)と同じインスリン(インシュリン)の分泌を促進(そくしん)する薬です。
      低血糖を起こしにくく、スルホニル尿素薬よりも作用時間が短いのが特徴です。
      服用は 1日 3回、食事をとる直前になります。食後に服用すると本来の効果が望めません。

  • インスリンの働きを良くする

    • ビグアナイド薬

      小腸からのブドウ糖などの栄養素の吸収を妨げ、肝臓から血液中にブドウ糖がでていくのを抑えて、血糖値の上昇を抑えます。
      食欲を抑える作用もあるので、肥満体型で、いつも食べ過ぎてしまう方に適しています。
      服用は食後が原則です。スルホニル尿素薬(スルフォニル尿素薬)と比べると血糖を下げる作用は弱いです。
      服用により、低血糖を起こすことはあまりありません。

    • チアゾリジン薬

      血液中のブドウ糖が、筋肉や脂肪でエネルギーとして使われることを促す。肝臓からブドウ糖が新たに作られる糖新生を防ぐ。肝臓や筋肉での脂肪燃焼を助ける。

  • 食後のインスリンの分泌を増やす

    • DPP-4阻害薬

      DPP-4阻害薬はインスリン分泌に関わるインクレチンの働きを強めることで高血糖状態を改善します。

  • 腸管からの糖の吸収を遅くする

    • αグルコシターゼ阻害薬

      小腸での糖質の分解と吸収を遅らせる作用により、食後の血糖の上昇を緩やかにする働きがあります。
      スルホニル尿素薬にくらべると低血糖を起こしにくいという特徴があります。
      食事前の血糖値はそれほど高くないが、食後にあがりやすいなど、比較的に症状が軽い方に適しています。
      服用は、食事の直前に飲みます。薬の飲むタイミングを守らないと効果がありません。

服用する際に注意すること

医師より処方された薬は、必ずきめられた時間に服用するようにしてください。また、食事を摂らなかったり、食事の量が極端に少なかったりすると低血糖を引き起こす事があります。食事がしっかりとれなかった時や、飲み忘れた場合等の対処法については、主治医にあらかじめ確認しておきましょう。

また、妊娠している場合或いは可能性がある場合は、内服薬を使用することはできませんので、インスリンを使用します。該当する方は、早めに主治医に相談するようにしましょう。


糖尿病の注射薬の種類

注射薬は、インスリン注射とGLP-1受容体作動薬の2種類に分類されます。病院で注射するのではなく、患者さんが自分で注射をします。

①インスリン注射

インスリン注射は、Ⅰ型糖尿病患者さんでは必要不可欠なものです。Ⅱ型糖尿病の患者さんでも、以下の場合はインスリン注射が必要となります。

  • 服用薬を使用しても血糖コントロールが不良な時
  • ケトアシドーシスを発症しているとき
  • 腎機能や肝機能が悪い時
  • 妊娠しているとき

患者さんの病状に合わせて、作用が発現する時間や持続する時間が異なる注射を組みあわせて治療します。

②GLP-1受容体作動薬

食後のインスリンの分泌を促進するお薬です。