運動療法は、糖尿病治療における、食事療法と合わせて重要な治療法の一つです。

糖尿病の運動療法について

運動療法は、糖尿病治療における、食事療法と合わせて重要な治療法の一つです。食後の運動による食後の高血糖を抑制し、血糖コントロールする事、そして最も重要な目的として、運動を継続することによりインスリンの働きを改善することです。また、Ⅱ型糖尿病における重大な合併症である脳卒中の発症率、死亡リスクが運動療法を行うことにより半減できる事が分かっています。

糖尿病の運動療法の進め方

糖尿病の運動療法における、運動の種類は散歩や自転車、ジョギング、水泳と言った有酸素運動を中心に取り入れていき、筋肉とレーニングにおいても適宜行っていきます。
 運動はその強さにより、筋肉のエネルギー源が変わり、強さが中程度までであれば、ブドウ糖と脂肪が利用されます。また、それ以上の強さになりますとブドウ糖の利用率が高くなります。
基本的に糖尿病の運動療法で活用される強さは「中程度」の運動となり、「中程度」の運動とは、運動をしていて少し息がはずむ程度をさし、心拍数では100~120回/分程度をいいます。ただし、50歳以上の方は心拍数を100回/分以内に抑えるようにします。

糖尿病の運動療法における運動の頻度

糖尿病の運動療法における運動の時間と頻度は、
ウォーキングでは一回15~30分、1日2回で1日あたり1万歩を目指して行います。
頻度は、理想は毎日行うことですが、最低でも週に3回程度以上は行う事が基本です。
運動の時間を作ることが難しい場合は、特別な運動をするのではなく、日常生活における身体を動かす時間を増やす事が大切となります。例えば、1駅手前で降りて歩く事や、エスカレーターやエレベーターを極力使わずに階段を使う事です。


糖尿病の運動療法におけるエネルギー消費量の目安

運動療法において、消費エネルギーの目安は、1日当たり約160~240kcal程度が理想とされます。日常生活における運動では、散歩で30分、サイクリングでは20分など、それぞれ一日2~3回行うと消費できる計算となります。
運動をして消費したから、食事の量を増やしてよいわけではありませんのでご注意ください。

運動強度 80kcal(1単位)
消費時間(分)
運動内容
非常に軽い 30 散歩、乗物(電車、バス立位)、炊事、家事(洗濯、掃除)、軽い体操
軽い 20 ウォーキング(70m/分)、入浴、階段をおりる、ラジオ体操、自転車(平地)、ゴルフ
中程度 10 軽いジョギング、階段をのぼる、自転車(坂道)登山、テニス(練習)
強い 5 マラソン、縄とび、水泳(平泳ぎ)、剣道

糖尿病の運動療法の注意点

運動療法は、張り切って急にきつい運動をしては、身体にも負担がかかりますし、長く続きません。そのため、最初は軽い運動から始めて、徐々に時間と運動の強さを強くしていきます。体調が思わしくない時や、極端に暑い時、寒い時は無理しないようにしましょう。また、血糖コントロールが不安定な時も、軽い運動で時間も短めに行い、血糖の推移を観察するようにしましょう。
運動療法は、無理なく続ける事が大切です。

以下の場合は運動を控えるようにしましょう

血糖コントロールに不安があるとき

空腹時血糖値250mg/dL以上、尿ケトン体陽性と判定された

合併症が進行しているとき

増殖網膜症による眼底出血がある
腎不全の状態(血清クレアチニン 男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)
起立性低血圧などの自律神経障害が進行している
足の末梢神経障害、閉塞性動脈硬化症がある

その他の合併症があるとき

心臓や肺の病気、高血圧
関節などの疾患
感染症や壊疽を発症している

運動時の低血糖にご注意!

運動を行う時間は、食後1時間程度が良いとされています。必ずではありませんが、空腹時に行う事は低血糖を引き起こす要因となりますので避けるようにしましょう。
また、インスリンや内服薬での治療を行っている方は、運動中だけではなく、運動後しばらくしてからの低血糖にも注意してください。