高血糖になると白血球の働きが弱くり、「感染症」を起こしやすくなります。

糖尿病性慢性感染症の病態・症状・治療

 私たちは、血液の中にある白血球の働きにより細菌やウイルスが殺されるため、細菌による感染を防ぐようになっています。 ただ、高血糖になると白血球の働きが弱くなってしまうので、細菌に感染して、「感染症」になりやすくなってしまいます。 また、糖尿病による血管障害により血流が悪くなると、体内の組織に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなるので細胞の働きが低下してしまいます。白血球も病変のあるところへ到達しにくくなるので、回復しずらくなってしまいます。 さらに、感染症になるとインスリンの働きをくい止めてしまうホルモンが分泌されるので、また高血糖が進んでしまい、糖尿病も感染症も悪化していってしまうという悪循環になってしまうのです。糖尿病性神経障害がある場合は、感染症による症状に気づきずらくなるので、治療が遅れてしまうこともあり、注意が必要です。

糖尿病性慢性感染症の種類

 糖尿病の人によく見られる感染症は、以下のような物がありますが、特に注意が必要な症状は①皮膚感染症、②口腔内感染症、③尿路感染症などです。

呼吸器系の感染症

かぜ、肺炎、気管支炎、結核、など

皮膚感染症

白癬症(はくせんしょう)、カンジダ症、など

尿路感染症

膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂炎(じんうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)、など

口腔内感染症

歯周病、虫歯、など

胆嚢炎

※胆石を持っている人に起こりやすくなります。
詳しくは 胆嚢炎をご覧ください。

①糖尿病性慢性感染症:皮膚感染症

 糖尿病の人によく見られる皮膚感染症は、「真菌症(しんきんしょう)」と「細菌感染症」の 2つに分けることができます

真菌症

カビの一種である真菌により発症するもので、「カンジダ症」や「白癬症(はくせんしょう)」があります。この2つは、糖尿病の人の 2~3割ぐらいの人に起こるとされています。

カンジダ症

カンジダと呼ばれるカビの一種によって起こります。カンジダは、口、膣(ちつ)の中、消化管に常に存在する細菌ですが、体の抵抗力が弱くなると増えてしまい、わきの下、爪の周り、女性の外陰部などに激しいかゆみを起こします。

白癬症

水虫、たむし、などがあり、足や手の指、足のうら、おしり、などに発症しやすいです。特に水虫は、治療しないでおくと二次感染を起こして、腐ってしまう「壊疽(えそ)」にまで進んでしまうことがあります。

②糖尿病性慢性感染症:口腔内感染症

口腔内感染症(こうくうない かんせんしょう)とは、歯の表面の細菌が、歯や歯茎(はぐき)に炎症を起こすものです。糖尿病の人は口腔内の血管障害、コラーゲン代謝の低下などのために、虫歯、歯肉炎、歯周病になりやすくなります。

症状は、歯の痛み、歯茎のはれ・出血、口臭、などです。


③糖尿病性慢性感染症:尿路感染症

 尿路感染症(にょうろ かんせんしょう)とは、尿のが作られ排泄されるまでの道筋、つまり腎臓から尿管をへて、膀胱、尿道までの「尿路」に細菌が感染することで起こるものです。膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂炎(じんうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)、などがあります。

膀胱炎

膀胱の炎症で、排尿の回数が増える、排尿の時に痛みを感じる、などの症状があらわれます。膀胱炎を放置すると、腎盂炎、腎盂腎炎になってしまいます。

腎盂炎

腎臓から尿管に入る手前の場所で起こる病気です。また、腎盂腎炎は、尿を集める尿細管や尿をつくる糸球体(しきゅうたい)で起こる病気です。

尿路感染症の治療は、尿の検査による早期発見が重要です。

 膀胱炎の検査は、尿の中の白血球の数を調べる検査である「尿沈渣(にょうちんさ)」を行います。白血球の数が多い場合は、膀胱炎の可能性があります。腎盂炎や腎盂腎炎の検査は、尿の細菌検査を行います。検査により病気であると診断されたら、抗生物質により治療を行っていきます。

糖尿病性慢性感染症の治療・予防

 糖尿病の人が感染症にならないようにするためには、血糖コントロールをしっかりとおこなっていくことが大切です。
 血糖コントロールを行っていくことで、体の免疫システムがちゃんと働くようにして、抵抗力を貯めるくことができます。
 また、睡眠をしっかりとる、ストレスを解消する、などの生活習慣にも注意が必要です。
 感染症になってしまったら、すぐに病院で治療を受けます。基本は、体の抵抗力を高めて、血糖値を下げていきます。必要に応じて、検査や薬での治療も行っていきます。