脳梗塞とは、脳の血管が狭窄、塞栓することにより、脳の組織が死んでしまう病気です。

脳梗塞の前兆とその症状について

脳梗塞とは、脳の血管が狭窄(狭くなる)、あるいは塞栓(詰まる)することにより、脳の対象血管部位へ栄養や酸素が流れなくなり、結果として脳の組織が死んでしまう病気です。
症状は部位によってその起こり方はさまざまで、意識を失ったり、麻痺をしたり、脳の障害をうけた部分によってことなります。また、脳梗塞は障害が残る病気として知られていますが、処置が遅れれば、最悪死に繋がる病気です。逆を返せば、処置が早ければ脳梗塞でも後遺症も少なく、命が助かるケースもあります。

脳梗塞は命にかかわる病気です

家族・知人が脳梗塞でなくなったという方もいると思いますが、脳梗塞の症状を感じた場合には早めに病院へいき相談してみるようにしましょう。検査を受けることによって症状がわかる場合もありますので適切な処置を受けることによって、脳梗塞での危険をしのぐことが可能となっています。脳塞栓のきっかけとなる血栓はほぼ心臓でできることがほとんどといわれています。その心臓でできた血栓が動脈を通って脳に流れ込み、脳塞栓を引き起こすことを心原性脳梗塞といわれているのです。

脳梗塞の原因

脳の血管は、抹消に向かうにつれて2分枝、3文枝というふうに細くなっています。脳血栓のなかでも、これ以上枝分かれしない細い動脈が詰まる脳血栓をラクナ脳梗塞といいます。また、太い動脈が詰まる脳血栓をアテローム血栓症脳梗塞といいます。
 脳塞栓は、心臓など脳以外の場所にできた血栓がはがれ、血流にのって脳の血管を詰まることが原因で起こります。脳塞栓は、血栓が突然血流をとめるため、症状の起こり方は、脳血栓よりも急激であり、重症になるケースも少なくありません。また、脳塞栓のきっかけとなる血栓はほぼ心臓でできることが分かっています。これを、心原生脳梗塞と言います。その血栓ができる原因として不整脈などが原因といわれています。

塞栓と血栓の違い
 血管内の血液が何らかの原因で塊を形成することで、主に血管壁が傷害されることにより起こります。血栓の役割は止血です。止血が完了し障害された部位が修復されると血栓は消えます。これを線溶作用と言いいますが、その線溶作用が働かずに血栓が肥厚し血管を塞ぐことにより、血栓が出来た下位の部位で虚血や梗塞が引き起こされます。それを血栓症といいます。 また、その血栓がはがれて別の場所の血管をふさぐことを血栓塞栓症といいます。

脳梗塞の前兆

以下の症状は前兆として現れる代表的なものです。すべての症状が現れるというものではありませんし、全くそのような事もなく、突然現れることもあります。例えば、何もないところで一瞬足がもつれて倒れたり,食事中に箸を落としたりということも重要な症状の一つではありますが、あまり気にせず本人も周囲も忘れてしまったり,何かの理由付けをしてしまったりすることが多くあります。

そのほかの前兆症状

・脱力:左右の半身の力が抜けます。これによって,箸やペン等を落とすことがあります。
・しびれ:手足が突然しびれたようになります。
・視野異常:片側の視力がなくなったり,視野の一部が消えたりします。
・言語障害:急にろれつが回らなくなったり,言葉が出てこなくなったりします。
・めまい:フラフラしたり,グルグルしたりといっためまいが起こります。

脳梗塞の診断

頸動脈の検査

 頸動脈の状態は、超音波(エコー)を頸動脈に当てて調べる超音波検査(エコー検査)により行います。 
 頸動脈に動脈硬化(粥状動脈硬化)が起こると、そこに血栓ができて脳の血管へ流れて詰まってしまい、アテローム血栓性脳梗塞になる可能性があります。そのため、脳梗塞の発作が起こった場合は頸動脈を調べる検査も行います。頸動脈は枝分かれして脳へとつながっているため、頸動脈を調べることで脳の血管の状態も予測することができます。

脳の血管を調べる検査

 MRIなどの検査により脳梗塞であることは確定できますが、脳の血管のどの部分に梗塞が起きているのかまではわかりません。そのため、脳の血管をくわしく調べることができる「MRA検査」や「脳血管造影(のう けっかん ぞうえい)」、「ヘリカルCT」、「脳血流シンチグラフィー」などを行います。

①MRA検査
 撮影した画像をコンピューター処理することで、脳の血管の位置や状態を立体画像ではっきりと写し出すことができる検査です。「磁気共鳴血管撮影(じききょうめい けっかん さつえい)」とも呼ばれています。

②脳血管造影
 カテーテルを、太ももの付け根にある動脈から脳血管まで挿入し、そこから造影剤を注入しながらX線写真を撮る方法です。この検査により、血管の状態や血液の流れを調べることができます。「カテーテール造影」とも呼ばれます。

③ヘリカルCT(シングルスライスCT)
 X線によりらせん状に連続回転しながら撮影し、そのデータを画像化するCTの撮影方法です。連続した画像を撮影することができるので、画像を何十枚と重ねることで 3Dで血管構造を画像化することができます。

④脳血流シンチグラフィー
 脳の血流が不足しているところなどの血流の状態を画像としてとらえて調べることができる検査です。CT検査やMRI検査などの画像検査で見ることができない、脳梗塞が起こっているところの手前の血流不足の部分を見ることができます。「スペクト(SPECT)」とも呼ばれています。

脳梗塞の後遺症と治療について

 脳梗塞により、脳へ血液が5分間途絶えると脳細胞は壊死してしまうため、その脳細胞が担っていた機能も失われてしまいます。脳梗塞は、障害をうけた脳の部位によって、症状がことなります。たとえば、左脳に脳梗塞がおこると、右側の顔、手足などに運動障害や感覚麻痺をひきおこします。また、側頭葉に障害がでると、失語症がでやすくなります。このように、あらわれる症状は、障害を受けた部分によって異なります。病院に運ばれてきた脳梗塞患者には、まず気道を確保して、呼吸を管理するようになっています。口のなかや気道内の分泌物を吸引する、酸素吸入、期間内に管を挿入して酸素を送り込む気道内挿管などが行われます。その後、脳梗塞の発作が起こったときの状況や病歴を調べ、検査を行います。

 脳梗塞は、発症からの経過時間によって治療の効果が異なります。発症から2週間以内を急性期、1か月以降を慢性期としてとらえます。できる限り、2週間以内の急性期の間にしっかりと治療することが、発症後のQOLを高めるうえで重要となります。脳梗塞は、たとえ2週間以内であっても、5分以内に治療しなければ、脳梗塞(脳細胞の壊死)は起こります。治すという概念ではなく、脳の機能を維持して行くことが大切なこととなります。現在では、たとえ、脳梗塞により機能を失ったとしても、他の脳組織でその失われた機能を補う働きもあります。リハビリはその失われた脳の機能を他の脳組織で補おうとする働きを促す意味もあります。