鉄を含むヘモグロビンと貧血の関係
鉄が不足すると、貧血がおこる。ヘモグロビンには鉄が含まれているということはみなさんご存知かと思います。しかし、なぜ鉄が不足し、ヘモグロビンの量が低下すると貧血をひきおこすのでしょうか。ここでは、そのメカニズムについて説明いたします。まず、メカニズムを知る前に、鉄やヘモグロビンの働きについて説明いたします。最後には、鉄を多く含む食材や摂取する際の注意点について説明していますので、ぜひご参考にしてください。
鉄における体内での働き
鉄は必須微量ミネラルのひとつ。体内には1kgあたり約70mgの割合で鉄が含まれている。また、鉄は筋肉中にミオグロビンの形で、また肝臓や脾臓にフェリチンの形で蓄えられる。それ以外の約50%は血液中の赤血球成分ヘモグロビンに含まれている。赤血球の寿命は120日程度なので、減っていくヘモグロビンの濃度を保つために毎日一定量の補給が必要となる。 また、汗や尿によって1日1mg程度が排泄されるほか、女性においては月経によって1日0.5~1mg程度を消費するため一層不足(貧血)に陥りやすい傾向にある。
鉄は赤血球の形成に関与し赤血球が形を行う
1段階目は「分解過程」と言われ、赤血球の元造血幹細胞が分裂します。その分裂には葉酸とビタミンB12が重要となります。
2段階目は「成熟過程」と言われ、赤血球が赤血球として機能する最終形成がなされます。その最終形成には、鉄とビタミンB6が必要となります。
鉄は赤血球内のヘモグロビンとなり、酸素を全身に運ぶ
ヘモグロビンは、肺で酸素をキャッチし循環機能により全身に運ばれ、各組織に酸素を送り届ける役割をしています。
鉄はミオグロビンとして、酸素を必要な時まで筋肉に貯蔵
筋肉にあるミオグロビンが、循環機能により運ばれてきたヘモグロビンから酸素を受け取り筋肉内で酸素を貯蔵しています。尚、筋肉中のミオグロビンには3~5%の鉄が含まれています。なぜヘモグロビンに結合している酸素をミオグロビンが受け取ることができるのか。それは、酸素をひきつける力がミオグロビンのほうが強いからです。
鉄は、筋肉収縮エネルギー(ATP)の生産に必要な酵素の構成成分
筋肉はATPという物質を持っています。このATPが分解して、ADPに変わる時に発生するエネルギーを使って筋肉を動かします。
ヘモグロビンにおける体内での働き
ヘモグロビンの構造と寿命について
- ヘモグロビンはαサブユニットとβサブユニットと呼ばれる2種類のサブユニットそれぞれ2つから構成される四量体構造をしています。αサブユニットは141個のアミノ酸から、βサブユニットは146個のアミノ酸から成ります。
- ヘモグロビンは分化、成熟する赤血球の中でつくられます。
- 赤血球は直径7~8μm(1μmは1mmの1,000分の1)、厚さ2μmの円盤状の細胞で、中央部がくぼみ、核はありません。
- 血液1μL中に約450万個含まれています。ヘモグロビンは赤血球の乾燥重量当たり90%含まれています。
- 赤血球の寿命は平均して120日間(約4か月)といわれています。ヘモグロビンは赤血球のなかに含まれているので、ヘモグロビンの寿命も赤血球の寿命と深い関係があります。
- ・ヘモグロビンは、鉄を含むヘムという赤い色素と、グロビンというタンパク質から構成される複合タンパク質です。ヘムは鉄と結合している事で、酸素と結合し運搬する事ができるようになります。
- このヘムを含むタンパク質グロビンが4個集まってできたのが、血液中のヘモグロビンです。
ヘモグロビンの役割
ヘモグロビンの役割は、酸素を各組織に送り届けることです。その中でヘモグロビンと酸素のやり取りは以下のような形で行われています。
- 血中酸素分圧(酸素濃度)の高いところ(肺)で酸素と結合し、低いところ(末梢組織)で酸素を放出します。
- ヘモグロビンは4つのサブユニットの結合体ですが、そのうちの1つのヘムに酸素が結合するとその情報がサブユニット間で伝達され、タンパク質の四次立体構造が変化し、他のヘムの酸素結合性が増えより酸素と結合しやすくなります。この機能により、酸素運搬効率が上がります。
- pHが低く二酸化炭素が多い環境下では、酸素との親和性が下がります(ボーア効果といいます)。このとき、ヘムには2酸化炭素が結合し、炭酸の排出に関与しています。