貧血の症状には、めまい、動悸、息切れなどがあります。

貧血(鉄欠乏性貧血)と生理や妊娠の関係

貧血の予防について説明したいと思います。貧血には様々な種類がありますが、日本人に多い貧血は鉄欠乏性貧血になります。貧血とは、生命活動に必要な酸素を十分に細胞に送り届けられない状態をいいます。その為、貧血の症状は、酸素が多く必要とする組織に現れやすいのも特徴です。なぜ、必要とする酸素が十分に送り届ける事ができないかを説明しますと、赤血球が減少したり異常があると赤血球の酸素を輸送する能力は低下をします。また、赤血球の中に含まれる血球色素(ヘモグロビン)の異常によって起きる貧血があります。日本人に多い貧血は、鉄欠乏性貧血であり、これはヘモグロビンに含まれる鉄分が不足する事で酸素輸送能力が低下して起きる貧血です。鉄欠乏性貧血は、女性に多いのも特徴です。これは、生理による失血により毎月女性は鉄分を失いますが、食事からの鉄分の補給が十分でない事から起きます。特に思春期の女性は、無理なダイエットや偏食により貧血になりやすい傾向があります。また、妊娠期においても赤ちゃんの発育に伴う鉄分の需要が多くなります。この様な時にも貧血の症状が現れやすくなり、食事による鉄分補給が不十分の場合には、鉄剤などを使用する事もあります。ここでは、貧血により症状と予防について説明をします。

鉄欠乏性貧血の予防の為に原因を知ろう

 貧血予防する為には、貧血になぜなるかを知る事が重要です。日本人の貧血患者さんの約7割は鉄欠乏性貧血といわれております。また、日本人の鉄欠乏性貧血は女性が大部分を占めているのも特徴です。私たちの体内にある鉄分は、その多くが排泄されず体内リサイクルできる仕組みがあります。しかし、消化器の疾患や大量の失血などにより鉄分を補えない、鉄分が排出され事が継続的に起きると貧血の症状が現れます。その為、貧血の症状を改善、予防をする為には、その原因を知る事が非常に有効策だと思います。

鉄分の多くは体内でリサイクル、不足分を補う事が貧血予防

私たちの血液中に鉄は多く含まれております。これは、ヘモグロビンといいまして赤血球のタンパク質に鉄が結合をする事で酸素を輸送する能力を持っています。赤血球は血液細胞であり寿命があります。寿命がきた赤血球は、体内で破壊されますが、鉄分はリサイクルされる仕組みがあります。その為、体内にある多くの鉄分は、、尿や便には含まれずリサイクルされます。私たち日本人がなる鉄欠乏性貧血は、継続的な失血が一番の原因だと考えられます。鉄分が効率よく吸収ができなくなる胃腸系の疾患(胃潰瘍や十二指腸潰瘍)も考えられます。胃腸に障害があり、食事から摂取した鉄分を効率よく吸収できなくなりますので注意が必要です。鉄欠乏性貧血の多くは女性であり、その原因は生理による失血があげられます。毎月、生理による鉄分喪失はおおきいです。その失った鉄分を食事から補給しなければ、貧血の症状を予防(緩和)する事が可能です。

思春期は鉄需要増大による鉄欠乏性貧血に注意

思春期(9~18歳ころ)は成長期にあたりますので、身長も高くなり筋肉量も増えるため当然血液量も増え、そのため鉄の重要が高くなります。その量は成人男性が1日に必要とする鉄量に対し2~3倍にもなります。しかし、思春期の女性は、痩せへの願望も強く無理なダイエットをしがちな時期です。偏った食生活により十分な鉄分補給が出来ず貧血になりやすいので、バランスがとれた食事をしっかり食べる事が貧血予防の重要なポイントになります。

生理の失血による虚血性の鉄欠乏性貧血

生理は、女性にとって一ヶ月のライフサイクルの中で切り離す事ができないものでありますが、生理による失血が貧血の原因である事を意識する事は貧血予防の観点から非常に重要であります。多くの女性は、生理だから貧血は仕方がないと思われがちですが、貧血を改善する為にもバランスのとれた食生活を心がける事で貧血の症状を予防(改善)する事ができます。女性生理による失血は、月平均で45mL程度あるといわれております。1日平均で考えますと1.5mLの血液が失われている事になり、鉄量に換算すると0.75mgになります。通常1日に摂る食事に含まれている鉄の量は約10mgであり、実際に吸収されるのはそのうち10%の1mgであると言われております。生理における貧血については生理における貧血予防についてをご覧ください。

妊娠による鉄需要増大による鉄欠乏性貧血と予防策

妊婦の方は、特に赤ちゃんの体を育てるうえでも、鉄だけではなく様々な栄養が必要となり貧血に対する注意が特に必要です。なかなか、つわりなどで食事もとりにくい方も多くいらっしゃいますが、プルーンやサプリメントなどをうまく活用すると比較的予防することが可能となります。妊娠中における貧血については妊娠期における貧血予防についてをご覧ください。

普段の生活における鉄分の喪失 

生活の中で体の鉄分は汗や尿、腸管から排泄されており、その量は1日で約1mgなので鉄の摂取量1mgとバランスがとれています。しかし女性の場合は生理の出血による0.75mgの鉄が余計に失われているので、通常の食生活では鉄が不足する事になり貧血を招いてしまいます。この不足している分を食生活の工夫や鉄剤で補う事で、鉄欠乏性貧血は予防(改善)する事ができます。
また、無理なダイエットや、野菜ばかりの偏った食事、これらは一人暮らしをしている人に貧血が多く見られます。これは朝食を抜いたり、自分好みの偏った食事ばかりすることで、血液に必要な鉄やタンパク質、ビタミン類などの栄養素が不足するためです。バランスの良い食生活を心がけ貧血予防をしましょう。

主婦の食生活も貧血に注意! 

 

主婦の方は家族の食事に気をつけていても、自分一人の昼食は菓子パンや麺類で済ませてしまうことが多く、これが一時的であれば問題はありませんが、長年続けることで鉄やビタミン類が不足してしまいます。また健康診断を受ける機会が少ないために、気がつかないうちに貧血が進行してしまうことも多々あります。鉄欠乏性貧血は、一気に症状が現れない事が多いです。その為、重度な貧血にならないように定期的に血液検査の結果をチェックして貧血予防に心がけましょう。

鉄欠乏性貧血予防と改善

鉄欠乏性貧血は文字通り体内の鉄が不足して起こる貧血であり、その原因としては、鉄の排泄増加、鉄の需要増加、鉄の摂取不足の3つがあります。これらの原因が単独であったり、重なり合ったりして鉄欠乏性貧血が引き起こされます。いずれの原因であっても、まず行わなければならないのは鉄を積極的に摂る事が貧血予防の重要なポイントです。貧血予防の基本となるのは普段の食事であり、鉄を多く含む食物を摂る必要があります。食事で十分な効果が得られない時には、鉄剤を服用して貧血予防を補助する効果があります。食事による貧血予防のポイントは、鉄分だけを偏って摂るのではなく、血液の材料となるタンパク質や鉄分の吸収をよくするビタミンCなど、栄養のバランスがとれた食事を心掛けることが重要です。

ゆっくり、しっかり食べる事は貧血予防に効果あり

 貧血を予防する為には、食事のとりかたも重要です。貧血予防には、鉄分以外にもタンパク質やビタミンなど様々な栄養素が必要です。ですので、これらの栄養をきちんと消化し効率よく吸収する事が貧血予防の重要なポイントになります。ですので、急いで食事をしたりせずによく噛んで食べる事が大切です。そうすることで胃酸が十分に分泌され、鉄をはじめとする栄養が効率よく吸収されるのです。また鉄分を多く摂ると腸の働きが弱まり便秘がちになるので、便秘の予防のためにも水分や食物繊維なども摂るように心掛けて下さい。

飲酒やストレスの改善で胃腸機能の改善が貧血予防に効果あり

 バランスのよい食生活と同じくらい大切なのが、胃腸の健康管理です。アルコールの飲み過ぎや過食、ストレスなどによって胃腸に負担をかける生活を続けていると、胃腸の働きが低下し、鉄などの栄養素の吸収もうまくいきません。胃腸の健康を維持するためには、暴飲暴食を避けるようにしましょう。 また食事以外の留意点としては、生活が不規則にならないようにし、負担にならない程度の軽い運動や睡眠時間を十分にとることです。鉄欠乏性貧血は、鉄を含むバランスのとれた食事と規則正しい生活習慣を守る事でかなり貧血を予防(改善)する事が期待できます。

鉄欠乏性貧血の予防が期待できる栄養素

鉄は赤血球の原料の一部であり、人間が生きていく上でなくてはならない物質です。私たちの体内に存在する鉄量は成人男性で体重1kg当たり50mg、女性では35mgあり、体重70kgの男性に換算すると3.5gの鉄を体内に持っている事になります。鉄の70%はヘモグロビンとして存在しており、残り30%は肝臓や脾臓、骨髄などに蓄えられた貯蔵鉄として存在しています。鉄量の多くを占める赤血球は寿命がくると脾臓で破壊されますが、その時ヘモグロビンに含まれている鉄のほとんどはリサイクルされます。また体外に汗や尿などで排泄される鉄量は1日わずか1mgにすぎません。このように鉄は体内で大切なミネラルであるので、通常の状態では体内の鉄量を減らさないような仕組みになっています。よって私たちが1日に必要とする鉄量は、体外への排泄分1mgにすぎないのです。ただし実際には摂取した鉄の10%しか吸収されないので、1日に必要な鉄量は10mgとなります。ただし、成長に伴う鉄需要の増加や、女性の生理や出血による鉄の損失増加といった状態では、鉄の収支バランスがくずれて鉄が不足し、その不足分を貯蔵鉄で補う事になります。この状態が続くと貯蔵鉄が枯渇し、鉄欠乏性貧血が起こるのです。以上の事から1日に摂取する鉄量の目安は、成人男性で10mg、成人女性では12mgと決められています。女性が男性より2mg多いのは生理による鉄の損失を考慮に入れてのことです。同様に思春期女子は10~12mg、妊娠前期は15mg、妊娠後期は20mgとなっています。

ビタミンCで鉄の吸収効率をアップして貧血予防

 ビタミンCは鉄が腸管から吸収される際に、その還元力により鉄を吸収されやすい形に変えることができます。特に大豆やほうれん草、のりなどの吸収されにくい非ヘム鉄をヘム鉄に変えることで腸壁からの吸収を高めるからです。食物から摂取した鉄の吸収率は10%しかなく、ビタミンCの働きがなければ吸収率はさらに下がってしまいます。 また赤血球が造られる過程で重要な働きをしている葉酸の働きをビタミンCが高める事もわかっています。つまりビタミンCは貧血予防と改善になくてはならないビタミンなのです。ただし、ビタミンCは体内で合成することができず水に溶けやすいため、一時的に大量にビタミンCを摂取しても過剰分は排泄されてしまいます。よって貧血を予防するには、ビタミンCを多く含む食品を毎日積極的に摂る事が貧血予防に大切です。

ビタミンB12・葉酸も貧血予防に効果、ビタミンで貧血を予防

ビタミンB12と葉酸はともに赤血球のみならず血球すべてを造る際に欠かせない栄養素で貧血予防には重要な成分です。これらの栄養素が不足すると血球が正しく造られず、悪性貧血を引き起こしてしまいます。 ビタミンB12はレバーや肉、卵、牛乳に含まれており、これらの食品を普通に食べていれば特に足りなくなる事はありません。ただし手術で胃を切除した場合はビタミンB12の吸収が困難になるため、注射による摂取が必要になります。葉酸もビタミンB群のひとつで、レバーや貝類、ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、パセリなどに多く含まれています。葉酸も体内でつくる事ができず、食物から摂取しなければなりません。葉酸は緑黄色野菜に多く含まれており、日本の食生活で欠乏する事はまれです。ただし食事を満足に摂らないアルコール中毒の人にはまれにみられます。また妊娠中は葉酸の需要が増大し、毎年のように出産を繰り返していると葉酸欠乏になりやすいといわれています。葉酸は水に溶けやすい物質なので、尿などで排泄されやすく体の中に蓄えておく事ができません。毎日できるだけ新鮮な状態の食品を欠かさず食べる事が貧血予防には大切な事です。

タンパク質と結合した鉄は吸収効率が高く貧血予防効果に期待

動物性タンパク質には、動物性食品に含まれるヘム鉄が有効に利用されるのを助け、植物性食品に含まれる非ヘム鉄が消化管内で溶解するのを助ける働きがあります。これをミートファクターといい、牛肉や鶏肉に含まれています。また母乳にもこの働きがあります。この様に鉄を含む食材でも動物系食品に含まれる鉄分の方が吸収効率がよいのが特徴です。その為、貧血予防の為にも動物系で鉄分を多く含む食品を摂取する事をおすすめします。しかし、鉄分を多く含む食品には、レバー、血合いなどがあり生臭いのも特徴です。その為、多くの女性が鉄分を多く含む動物性食品を嫌う傾向があります。独特の臭さを消す為に牛乳で煮込んだり、比較的生臭くないカツオなど食品をや調理方法を選んで多く摂取する事も貧血予防に効果があります。尚、卵や牛乳のタンパク質、チーズ、大豆など植物性食品のタンパク質にはミートファクターが含まれておらず、むしろ鉄の吸収を妨げる作用があります。