NASH(非アルコール性脂肪肝炎)を患うとがんのリスクが高くなると言われております。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の症状、検査、治療、予後

 NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、原因にアルコールが含まれないアルコール性肝障害に類似した病態を示す肝疾患を言います。いまだ、発生に至る機序はわかっていませんが、基礎疾患として脂肪肝に加え、肝臓に何らかのストレスがかかることによって発症するのではないかといわれています。ストレス要因は活性酸素による酸化ストレス、過酸化脂質、鉄、インスリン抵抗性、サイトカインの放出などがあります。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とアルコール性肝炎の違い

アルコール性脂肪肝は、アルコールによって肝臓の働きが落ち、肝臓に運び込まれてきた脂肪酸を燃やしにくくなり、そのため中性脂肪が多くなります。単に肝臓に脂肪がたまっているだけでなく、肝臓内に炎症を伴っている点も肝炎の特徴であります。アルコールを多量に飲むと、肝臓内にアセトアルデヒドという物質が作られます。 これが有害な物質で、肝細胞を傷害し、炎症を起こすことになります。そのため、放置すると短期間で肝硬変にまで進行します。NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は、食事からとるエネルギーが多く、従って、肝臓に運ばれる脂肪酸の量が多いことが、発症の原因になっています。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の症状

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も他の肝臓の病気と同じで、初期の段階ではまったく症状があらわれません。 症状が現れないことで、そのまま放置していると数年のうちに肝臓の細胞が壊死していき、肝臓の繊維化、そして肝硬変や肝臓癌に進行していきます。多分、この時点では色々な症状が身体に出てくると思います。脂肪感やアルコール性脂肪肝炎同様に、ある程度疾患が進行していない限りは自覚症状はありません。発見の経緯は、健康診断・人間ドックにおける血液検査や腹部超音波検査で肝機能障害を指摘され、その後の病院受診がきっかけで見つかることがほとんどです。肝機能が低下すると以下の症状が現れると言われています。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)等による肝機能低下による症状

  • 食欲不振:肝硬変による胃腸分泌と吸収機能に乱れによる、食欲不振、吐き気、嘔吐など
  • 体重減少:胃腸食道の消化と吸収機能に障害がおきることで、体重が激減します。
  • 倦怠感、疲労感:最初は軽い疲れを感じる態度ですが、段々ひどくなり、脱力感を感じるようになります。
  • 顔色が浅黒い:肝臓に損害があるため、肝機能は劣れて、メラニンが増殖したために顔面・手足など日光にさらされる部分が、黄疸がなくても、浅黒くなります。
  • 下痢、お腹の張り、腹痛:胃腸食道の消化と吸収機能に障害がおきることで日常的に下痢や腹痛にみまわれます。
  • 肝臓の辺りの痛み:肝硬変の症状の中では、もっとも多く現れる症状です。疲労や倦怠を感じるようになってから、肝臓の辺りの痛みがあらわれる場合が多いです。
  • 出血:肝機能は劣れたことにより歯茎や鼻などから出血しやすくなります。
  • 内分泌線の機能異常:男性の女性化乳房や女性の生理止ってしまったりして、クモ状血管腫や手掌紅斑が生じます。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の検査

 NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の検査は血液検査から行います。血液検査ではγ-GTP 値やAST (GOT)、ALT (GPT)値が高くなりますが、そうでないこともしばしばあります。脂肪肝は腹部超音波検査で肝全体が腎臓に比べて白く見え、腹部CT 検査では肝全体が黒く描出されます。腹部MRI 検査ではよりはっきりと診断できます。 最終的な診断には肝臓の組織を採取して顕微鏡で見る検査(肝生検)が必須です。病気の進行の確認や治療方針を決定するために、医師から検査を勧められる場合があります。 肝臓がんへのリスクもありますので、定期的な超音波・CT スキャンなど画像検査や、静脈瘤を診る上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要となります。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の治療

 食事療法や運動療法等の生活習慣に対する治療が行われます。また、基礎疾患ともいえる高脂血症や糖尿病に対する治療を主体として行われます。食事量が適正でも、食事内容が適正ではない場合や食事が少なくても間食の量が多かったりすると、肝臓は脂肪化を起こします。 肝障害要因に対して、ウルソデオキシコール酸やビタミンC・E、ポリエンホスファジルコリン(EPL)の投与、鉄制限食などの治療も必要に応じて行われます。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の予後

 アルコール性脂肪肝とは違い、アルコールを控えたからといって肝臓への炎症的負荷は継続するため、NASHは肝炎そして肝硬変(全体の5~30%が移行)、最終的には肝がんへの移行リスクが高いといえます。診断をされた方も、されていない方も、定期的な健康診断を受け早期発見早期治療を心がけましょう。

NASHの情報

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)は1980年代にアメリカで命名

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)という病気は、1980年にアメリカの Mayoクリニックの病理学者 Ludwig が命名しました。まったくアルコールを飲んでいない人に、アルコール性肝炎と同じ組織像(脂肪沈着、マロリー体、 pericellular fibrosis )を呈する人がいるということで、non alcoholic steatohepatitis : NASH という名前をつけました。即ち、脂肪肝にもう一つの原因が加わり、炎症を起こしたものです。脂肪がたまっているだけなら放置しても肝臓に悪影響はありません。 しかし、脂肪肝にもう一つの刺激が加わり、脂肪性肝炎という状態になると、これはさらに肝硬変や肝癌に進むことがあり、現在治療の対象になっています。

NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の最新情報

マイなびニュースより引用:http://news.mynavi.jp/news/2012/07/06/112/index.html
 横浜市立大学は7月4日、大阪大学歯学部、順天堂大学医学部との共同研究により、肥満による肝臓の病気である「脂肪肝」から「脂肪肝炎(非アルコール性脂肪肝炎)」の発症原因として、通常健常人では肝炎を起こさないごく微量の腸内細菌毒素に過敏に反応して慢性肝炎を発症することを発見し、その原因が肥満により脂肪組織から多量に分泌されるホルモンである「レプチン」によるものという、これまでに知られていなかった新しい病気のメカニズムを解明したと発表した。 健康な肝臓では、腸内から侵入してくるごくわずかの細菌毒素に関しては、無反応で炎症を起こすことはない。しかし、肥満状態では脂肪組織からホルモンの1種であるレプチンが多量に分泌され、転写因子の1種である「STAT3」の活性化を介して、肝臓のマクロファージである「クッパー細胞」上に細菌内毒素の共受容体「CD14」の発現を亢進させる。
 この結果、肥満状態では通常は炎症を起こさないごくわずかな細菌毒素に対してもCD14により過剰反応をきたし、Kupffer細胞は活性化して「炎症性サイトカイン」を産生し肝炎を発症することが確認されたというわけだ。