糖尿病合併脂質異常症の3つの特徴
①TG richリポ蛋白の増加
- 血清トリグリセライドは、小腸由来のカイロミクロン及びそのレムナントと肝臓由来のVLDL及びそのレムナントであるIDLなどリポ蛋白の主成分です。
糖尿病では、トリグリセライドの原料である遊離脂肪酸の供給過剰、そして、トリグリセライドを加水分解するLPL活性が糖尿病によるインスリン作用不全により低下、さらに肝臓にあるレムナント受容体結合を阻害するアポC Ⅰ・Ⅲが増加していることなどにより、これらTG richリポ蛋白のいずれもが高濃度で存在することとなります。一般的に臨床の場ではこの状態を高TG血症と言います。
この高TG血症は、高LDLコレステロール血症とは別の動脈硬化危険因子で、高LDLコレステロール血症と同等或いはそれ以上の冠動脈疾患リスク因子となり得ます。動脈硬化危険因子としてだけではなく、過剰なTGは、脂肪組織以外の肝臓、心臓、腎臓などの異所性沈着し、それが臓器機能障害を誘発することも分かってきています。
②small dense LDLの増加
- small dense LDL(sdLDL)とは、LDLの中でも粒子サイズが特に小さな亜分画をいいます。sdLDLは通常のLDLに比較し小さいため、容易に血管壁へ侵入できること、そして、通常のLDL受容体に対し親和性が低いため、長時間滞留するため、大きな動脈硬化因子と言えます。
LDLの粒子サイズを規定する因子は、TG濃度で、LDL小型化の50%をTG値で説明することができます。また、糖尿病ではLDLコレステロールが高くなくても、dLDL高値である場合が多くあります。
③HDL-コレステロールの低下
- VLDLとHDLとの間ではコレステロールエステル転送蛋白の働きを介してTGの交換が行われていることや、HDLの生成に必要なLPLの活性がインスリン作用不全のために低下することなどから、TGとHDL-Cはしばしば逆相関します。そのため高TG血症では低HDL-C血症を伴いやすい傾向があります。
糖尿病合併脂質異常症の薬物治療
糖尿病合併脂質異常症の治療には、糖尿病治療を積極的に行うことが重要となります。しかし、高血糖を改善した後にも、脂質異常の改善が不十分であったり、インスリン作用不全とは関係なく、脂質異常症を併発することも少なくありません。このような時、脂質低下薬のしようが求められます。そこで、臨床で用いられる、スタチン系、フィブラート系について説明いたします。
①スタチン系
- 一般的な脂質異常症の治療においては、LDLコレステロール低下療法がおこなわれます。高LDLコレステロール血症は糖尿病合併脂質異常症の特異的なものではありませんが、併発している場合はこのスタチンを用います。スタチンには、sdLDLを集中的に低下させる作用はありませんが、LDLコレステロール全体をコントロールすることにより、sdLDLの低下がみこめます。
②フィブラート系
- 糖尿病合併脂質異常症の特徴である、TG richリポ蛋白↑、sdLDL↑、HDL-C↓という三つのターゲットすべての改善に、このフィブラートが適しています。高TG血症の改善は、LDL粒子サイズを大きくすることによるsdLDLの減少やHDL-Cの上昇につながる。つまりフィブラートは糖尿病に合併する脂質異常症に極めて良い適応と言えます
糖尿病合併脂質異常症のライフスタイル改善による治療
脂質異常症、糖尿病において、ライフスタイルの改善は治療の基本となります。食事療法による肥満の改善と定期的な運動が重要となります。特に運動には、糖代謝の改善を介して脂質異常症を改善する効果があります。
糖尿病合併脂質異常症の食事療法
高LDLコレステロール血症では、糖尿病の血糖コントロールのための摂取エネルギー制限に加え、コレステロール他、脂質摂取量の制限が必要となります。
- コレステロール摂取を300mg/日以下とする事が必要となります。更に改善が認められず持続する際は、コレステロール摂取を200mg/日以下とします。
- 脂質摂取量は摂取エネルギーの25%以下とします。高カイロミクロン血症では、15%以下
- 動物性脂肪の摂取制限、一過不飽和脂肪酸の適切な摂取、n-3系多価不飽和脂肪酸の適切な摂取も有用です。
- 食物繊維は25g/日以上
- アルコールは摂取制限、できれば禁酒
- 炭水化物摂取制限 摂取エネルギーの50%以下 特に単糖類の制限が必要です。