糖尿病の慢性合併症
糖尿病の慢性合併症とは、糖尿病に罹患してから数年を経て発症する合併症をいいます。糖尿病で血糖をコントロールする目的は殆どはこれらの予防にあります。慢性合併症には様々なものがありますが、、糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の細小血管障害によって生じるものを、糖尿病の「三大合併症」といわれています。慢性合併症には、大きく分けて3大合併症を含む細小血管障害と脳梗塞、心筋梗塞を等を含む大血管障害があります。
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細小血管障害(糖尿病三大合併症)
1)糖尿病性網膜症
- 糖尿病網膜症は、糖尿病腎症・神経症とともに糖尿病の3大合併症のひとつで、我が国では成人の失明原因の第一位となっています。
2)糖尿病性腎症
- 糖尿病性腎症とは、腎臓が糖尿病による高血糖に長年さらされることにより、腎臓の濾過機能を担う糸球体が損なわれる病気です。腎症の病期は、主な臨床症状の有無により第1期から第5期に分類されています。
3)糖尿病性神経障害
- 高血糖が持続すると、まず長い神経の末梢の感覚神経から障害が現れてきます。すなわち、手や足の先から、そして左右対称に出現してくるのが特徴です。例えば、手や足の指先がじんじんしたり、しびれや痛みを感じたり、虫が這っているような知覚異常としてみられます。さらに進行すると運動神経にも障害が現れ、筋肉に力が入りにくくなったり、顔面神経麻痺や外眼筋(目を動かす神経の動眼神経や滑車神経)麻痺を生じて物が二重に見えたりするようになります。
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大血管障害
1)糖尿病性脳血管障害
- 糖尿病の合併症の中でも、大変危険なものの一つが、この脳梗塞(のうこうそく)です。多くの場合、突然何の前ぶれもなく起き、重大な後遺症を起こすからです。最悪の場合、そのまま死に至ることも珍しくありません。
2)糖尿病性虚血性心疾患
- 心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などの血管障害の原因となる動脈硬化を起こす要因を危険因子(リスクファクター)と呼びますが、危険因子には、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、喫煙、ストレス、性差(男性)、加齢などがあげられます。このうち、糖尿病、高血圧、高脂血症はインスリンの効きづらい状態、すなわちインスリン抵抗性を介して、相互に絡み合い動脈硬化を加速進行させます。
3)糖尿病性壊疽
- 重度の合併症として知られているのが「糖尿病壊疽」。糖尿病が原因で身体の末端の血行や神経に障害が生じ、小さな傷が治らずに潰瘍化してしまうことが原因です。壊疽は悪化した潰瘍の末期症状。壊疽に至ってしまうと、生命を救うためにその手前で切断手術を行うしかありません。日本では下肢の切断に至る患者さんが年間1万人を越えています。
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その他の障害
1)糖尿病合併脂質異常症
- 高脂血症と糖尿病が重なると、健康な方に比べて、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症するリスクは高くなります。
それは、血糖値が高い状態が長く続くと、LDL(悪玉)コレステロールが酸化されたり、小さくなったり、より血管壁に入り込みやすい状態になって、動脈硬化が一層進行するからです。
とくに、糖尿病では、中性脂肪値が高く(150 mg/dL以上)、HDL(善玉)コレステロール値が低い(40 mg/dL未満)タイプの高脂血症を合併しやすいと言われています
2)糖尿病性慢性感染症
- 糖尿病患者は、軽度の免疫不全状態となり、皮膚感染症(蜂窩織炎など)、尿路感染症(膀胱炎など)、カンジダ性食道炎、アスペルギルス症などをおこしやすく、また健康な人には感染しないような弱い菌やかび(真菌)による感染症にかかりやすい(AIDS、後天性免疫不全症候群ほどではない)。高血糖状態では白血球(具体的には好中球)の機能が低下することが原因と考えられています。
- 高脂血症と糖尿病が重なると、健康な方に比べて、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症するリスクは高くなります。
糖尿病の急性合併症
急性合併症の代表例としては、糖尿病性昏睡と急性感染症があげられますが、これらは治療の進歩(特にインスリン療法)により、発症とその予後(経過)は著しく改善されています。しかし、未だに克服されたとは言えず、意識障害を来たし、多くの臓器障害まで併発する可能性を含んでおり、生命予後に関わってくる重篤な病態と考えるべきです。
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糖尿病性昏睡
1)糖尿病性ケトン性昏睡
- ケトン性昏睡は、 以下の要因により発症します。
- 1型糖尿病を発病していることに気付かずに治療・対処もないまま生活
- インスリン注射を自分の判断でやめてしまう、またはインスリン注射の量が適切でない。
- 2型糖尿病の方が高血糖状態で重い感染症(虫垂炎・肺炎・腎盂炎)で高熱を出したとき
- ストレスや疲労、暴飲暴食による血糖値の上昇などが、あります。
2)糖尿病性非ケトン性高浸透圧性昏睡
- 非ケトン性高浸透圧性昏睡とは、糖尿病においてみられる神経症状のひとつです。2型糖尿病を基礎疾患に有する高齢者が、感染症などを契機に急性発症することが多いとされています。近年では高浸透高血糖症候群と呼ばれることが多い。
3)糖尿病性乳酸アシドーシス
- 乳酸アシドーシスは、糖尿病以外にもショック状態など組織の酸素欠乏やある種の薬剤、遺伝性代謝疾患などで見られる。
糖尿病でも、アルコール多飲や心筋梗塞等の心血管疾患などが誘因となって発症してきます。予後が極めて悪い。
4)糖尿病性低血糖性昏睡
- インスリン治療中の糖尿病患者などが、低血糖に何回かさらされると、血糖低下に対する自律神経の反応が低下し、警告症状の出現がないまま、意識消失などの重大な低血糖症状に至ることがある。
- ケトン性昏睡は、 以下の要因により発症します。
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糖尿病性急性感染症
- ①細菌やウイルスなどに対する抵抗力が低下している。(白血球の殺菌作用が、血糖値250mg/dl以上になると急速に低下)
②高齢者、血糖コントロール不良、重篤な合併症がある例ほど感染症に罹患しやすく、重症化しやすい。
③発熱を伴う時はインスリン抵抗性が増大し、高血糖が増悪しやすい。
- ①細菌やウイルスなどに対する抵抗力が低下している。(白血球の殺菌作用が、血糖値250mg/dl以上になると急速に低下)